TOPINTERVIEWトクヤマムネタカが「02展 #CJDSP」でトライする 複製できない「NFT写真データ」を販売する意味

#INTERVIEW トクヤマムネタカが「02展 #CJDSP」でトライする
複製できない「NFT写真データ」を販売する意味

2021年4月7日〜4月12日

トクヤマムネタカが「02展 #CJDSP」でトライする 複製できない「NFT写真データ」を販売する意味

広告や雑誌で活動中のフォトグラファー トクヤマムネタカ氏が、CYBERJAPAN DANCERSを撮影した展覧会「02展 #CJDSP」を開催する。

この展覧会、実は写真業界ではおそらく初めての試みがなされる。
オリジナルプリントの販売と同時に、ブロックチェーンの技術を使い、複製が限りなく不可能なNFT(Non-fungible token)のシステムを用いた「オリジナルの写真データを販売する」というもの。

Twitterの創業者、ジャック・ドーシーCEOが自身の最初の投稿を競売にかけたところ、日本円にして3億円余りで落札された事はニュースとして知っている人も多いだろう。ツィートしたデータがブロックチェーンで管理され、コピーや改ざんができないため、新たな「デジタル資産」の形として注目を集めている。

今回、トクヤマ氏が取り入れているのがまさにこのNFT。なぜこのような方法を取ったのか、実際にどのようにして購入(所有)できるのか、本人に緊急インタビューした。

編集部註:NFT/データに付随する発行点数や作成日、識別番号などのメタ情報を改ざん困難なブロックチェーン上で明示して、他のデジタルデータと識別可能な存在として扱うのがNFTの基本的な特徴。

Photographer:トクヤマムネタカ
Interview:坂田大作(SHOOTING編集長)
 
 
坂田:写真のオリジナルデータをNFTのシステムで販売するというのはまだ聞いたことがないです。具体的なことも含めて、教えてもらえますか。

トクヤマ:わけがわからないことをしようと思っているので(笑)、説明が長くなりますけど、お許しください。「村上隆氏が初のNFTアート作品を発表」というニュースが3/30に出ていましたけど、ほとんどの方はまだ「?」の状態だと思うんです。

伝え方は難しいのだけど、やらないよりはやった方がいいなと思って。NFTシステムを使うにあたって、ブロックチェーンの会社に協力を仰いだり、いま猛勉強しています。

坂田:話題にはなっているけれど、実際にどうやって取得(購入)するのか、提供側はどうやってそのデータを作るのか、疑問だらけです。

トクヤマ:NFTって“新しい価値の創出”だと思うんです。いまの時代、スマホゲームで課金をして楽しんでいる人が大勢います。レアなカード欲しいために課金してゲーム内のガチャを回す人がたくさんいるわけじゃないですか。

ゲーム内のカードを所有しているだけで、人は満足してそこに対して大量のお金が投下されている現実があります。ゲーム課金は、日常生活の中に当たり前として受け入れられているわけです。それとよく似ているかもしれない。

“写真展”という立て付けで“リアルなプリント作品を販売する”というのが表で、裏では“オフィシャルのデータを所有するという権利”も販売する、ということです。

坂田:写真の世界ではプリントにエディションを切って、希少性のあるものを売買するというのは昔から行われていたよね。

トクヤマ:そうです。デジタルアート作品に対して相性がいいのは、NFT技術によってエディションを設定できることで、そこに希少性が生まれる。人はそれに価値を認めて売買するという根本の商原理は共通しているところです。

ただデータに価値を決めるところは難しい部分もある。森山大道さんが撮られた野良犬の写真にはものすごい価値があるけれど、僕が撮った野良犬の写真には500円くらしか価値はないんです(笑)。“価値”って目に見えない曖昧なものだけど、そこにNFTがうまく作用すれば、希少性を説明する重要なファクターになり得ます。

写真の世界では、もともとネガ、ポジというフィルムがあって、これは現物として写真家が保存していたわけじゃないですか。実体としてのプリントやフィルムがデジタルデータに置き換わり、コピペできるようになったことでデータに価値がなくなっていたわけです。

でもそこにも必ず“オリジナルデータ”は存在します。誰が持っていたのか、誰が作ったのか…。それに対する証明ができるようになったら、僕たちのようにデジタル写真データを扱う職種の人間にとって、データの価値が大きく上がるチャンスがあります。

撮った時の最初のデータはそのフォトグラファーのものだと思うんです。それは昔のフィルムで撮るのと同じです。それをこのNFTの技術で成立させることができる。

坂田:「これがオリジナルである」ということが証明できれば、それがデジタルであっても作品の価値を担保できる、ということだね。

トクヤマ:そうです。フォトグラファーって、過去に撮った膨大な写真データを持っているじゃないですか。フィルムを保存しているのと同じです。そこに対して、この技術って相性がいいなと思うんです。

坂田:確かに。そもそもこの展覧会をしようと思ったきっかけは何ですか?

トクヤマ:昨年の自粛期間(緊急事態宣言)中、僕は何もしなかったんです(笑)。撮影も止まっていたのだけど、緊急事態宣言明けに久しぶりCYBERJAPAN DANCERSの彼女たちと作撮りしたらすごく楽しかった。CYBERJAPAN側にも「SNSにどんどん上げてください。そのための撮影ですから」って話をしていました。

そしたら沢山の“いいね!”とか、すごく喜んでくれているファンたちのコメントを見て、すごいなと思った。と同時に、普段の広告写真の仕事は世の中に掲出されて初めて自分の仕事を実感するわけじゃないですか。でもこのSNSの反響に対しても満足感を得られなかったんです。それは自分の中で「写真はプリントにしないと成仏しない」という思いがあって。だったら「プリントして成仏させよう」と思ったのが今回の展覧会をするきっかけでした。

ただそれだけでは僕の中でも意味が足りないなと思っていたし、一般的な写真展にするのも普通だし。CYBERJAPAN DANCERSの彼女たちがリアルのライブとバーチャルで活動しているのを見ていて、その彼女たちと相性のいい展示の方法を色々考えていた時に、Twitter社のニュースとブロックチェーンの方法論が僕の中でしっくりきたんです。

専門家の方たちを探して話を聞く中で、そもそもNFTって、ビットコインやデジタルデータの売買が主軸なので、今回のように「リアルな写真プリント」と「デジタルデータ」を同時に売買するのは今まで前例がないと言われています。

坂田:写真業界で「プリント+オリジナルデータの所有権」をセット販売するのは、今回の事例が初めてじゃないかな。

トクヤマ:普通なら「10枚限定で売ります」と言ったところで、それは制作した本人しかわからないことじゃないですか。それを、このNFTの技術を使うことで、1枚の写真データに、例えば12点発行(販売用10点、著作者1点、被写体1点)と設定したら、それ以上増やせないんです。

坂田:「こっそりエディションを増やす」ということが出来ないんだね(笑)。

トクヤマ:そう。誤魔化せないことで、購入した人には所有証明になるんです。リアルなプリントだって、スキャンすれば複製できるじゃないですか。

坂田:この議論を突き詰めていくと「卵が先かニワトリが先か」というところに行き着くよね。プリントは複製だけど、データは本物、ということもあり得る。

トクヤマ:火事になってプリントが焼けても、所有権はデータとして残るんです。そこの価値って何なの? とか。

CYBERJAPANが持っているNFTを売った(転売)としたら、僕が持っているデータを売るよりも倍の値段がつく可能性もある。それは「誰から買うか」というところにも付加価値が付く可能性があるわけです。僕からの出品なら半額でも売れないかもしれない(笑)。転売先のストーリーもブロックチェーンで追えるわけです。

NFT写真データとプリントを同時販売することでプリントが付録なのか? という議論も出てきます。モノって、劣化したり破損したりするじゃないですか。経年変化に価値が出るものもあれば、“プラチナプリントと銀塩プリント”の耐光性が比較されるように、写真が酸化して色が変わったり、カビが生えたりすることに対して、データは劣化しないし、なくならない。「卒業事実」と「卒業証書」の関係に似ていて、卒業証書を無くしても卒業した事実は変わらないじゃないですか。いわば「卒業証書がプリント、卒業事実がNFT」という構図です。

坂田:わかりやすい!

トクヤマ:僕たちは写真を生業にしているから「プリントの価値」を、今回で言うと「NFTで保証する」というか…。購入して下さった方々に対しての僕の約束として「この写真は12枚分の1枚である」という保証をつけるということです。

「NFT写真データ」の購入方法

坂田:具体的にどのように写真データは購入(所有)できるの?

トクヤマ:まだ検討中のこともありますが、現段階でのデータの受け渡しは、仮想通貨ウォレットを持つ必要があります。

*編集部註:大抵のNFTプラットフォームは、Ethereum(イーサリアム、ETH)と呼ばれる仮想通貨のウォレットを持っていないと利用できない。bitFlyerなどの仮想通貨取引所を通じてETHを購入し、それを、長い文字列と数字からなる自己管理ウォレット用アドレスに送信しないと、NFTプラットフォームを利用できない、とされている。

そこも考えながら、方法はいま練っています。この方法はリミテッドのある品物と相性がいいので、それは贋作とか贋作でないとかを証明できたり、どういう経緯を経て、自分のところに来たとか、足跡もわかります。

データ自体は、ゲームのアイテムと同じで「このデータは自分が持っています」という価値でしかないんです。例え世の中に偽物が出回っているとしても、本物、オフィシャルのデータを持つ価値はNFTで保証される。

そこは勉強するほど面白いと感じていて、1年後にそれが普通になっているかもしれないし、新たなテクノロジーが出てきて「あれは一体何だったんだ?」と言われるのもまた面白いし。

坂田:今後、著作物やあらゆるデジタル資産にNFT技術が導入されれば、世の中の常識がひっくり返るくらいのことになりそう。

ものづくりの世界では、コロナ禍でリアルな発表の場が失われたり、人の移動が制限される中で、デジタル化された作品のビジネスマーケットは急激に拡大するだろうね。デジタルデータだけでなく、“実体としてのモノを保証するためのシステム”と考えれば、写真マーケットとの相性はいいと思う。

株や債券などの金融市場とは別に「アートに投資をする」という選択肢が再注目されるんじゃないかな。壁面に描かれたバンクシーの絵ではなく、NFTで証明されたバンクシーの1点もののデータにすごい値段がつくとか。

トクヤマ:今回の展示は写真ファーストで、それを保証するオフィシャルデータを譲渡するということで、今まで誰もやっていないし、クリプトアートとかNFTアートという言葉があるんですけど、そこじゃなくて僕たちリアルなものを作っている人たちの方法論として、コピペされることで写真の価値が急落した業界にも、光明が差すかもしれない。

「プリントの価値」に「希少性の価値」が付加されることの価格相場が醸成されていくと思うし、そのデータが転売された場合、そこにオリジナル著作権者にマージンが入るシステムも作れます。

サッカーのユースから活動していた選手が成長して欧州のビッグクラブに行くじゃないですか。その時に欧州のビッグクラブから大きなお金がユースに入る。それは、ユースが子供たちを育成してきたことへのレスペクトでもあるわけです。それと似ていて、作品が譲渡されても著作者を追えるシステムだから、考えれば考えるほど面白いなと。

坂田:この方法にリスクはないの?

トクヤマ:危険もはらんでいます。例えばデジタルの写真データを買った人間が、それを使ってプリントTシャツやマグカップを作って、こっそり売り出すかもしれない。

坂田:アイドルのポラが原宿で売られていたり、キャンペーンガールやモデルの盗撮に近い写真がネットで販売されているようなこともあるしね。

トクヤマ:所有権と肖像権の問題はついてきます。今回の村上隆さんのNFTアート作品は、著作権や商標権は譲渡しないから、勝手に商用目的では使えなくしています。それならNFTアートの価値ってないじゃん! という疑問も出てきます。これに関しては新しい技術なので、法整備やル ール決めがまだない中で進まなきゃいけないので、バイヤーと僕とで個人間で合意を取ることも考えています。

坂田:NFTアート作品(の売買)に関してのルール作りはこれからですね。

トクヤマ:日本の写真業界のファーストペンギンとしてやってみるけれど、状況は見守りつつ、という感じです。ただ上手く使えば、写真売買に関してマーケットが大きく広がる可能性がありるので、チャレンジしていきます。

この取材をしてもらっているのが展覧会の1週間前ですが、NFTのことを関係者と詰めながら、学びながら、僕もいま面白くて仕方がないです(笑)。

坂田:展覧会が始まってからの反応や、実際にどのように手続きが進んだのか、NFTアート作品の売買については、こちらでも引き続き注目しているので、また「SHOOTING」でも情報をアップデートしていきますね。

「02展 #CJDSP」
ギャラリー:America-Bashi Gallery
開催期間:2021年4月7日(水)〜4月12日(月)
住所:東京都渋谷区恵比寿南1-22-3
開館時間:11:00〜19:00 (初日は14:00から最終日は17:00まで)*会期中無休
URL:https://americabashigallery.com/

Munetaka Tokuyama

1978年生まれ。大阪出身2001年よりNY 移住。
米、独、仏、日、中のエージェントと契約。
日米にて受賞歴多数。日本拠点にしながらワールドワイドに活動。
http://www.munetakatokuyama.com
https://www.instagram.com/munetakanyc/

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