プロフォトから発売された新製品「Profoto L600D・L600C」。ストロボで長く実績を積んだ同社のノウハウを活かした定常光LEDライトだ。
出力600Wの定常光ライトL600D(デイライト)とフルカラーのL600Cを使い、フォトグラファーの久富裕史氏に、スチルとムービーの撮り下ろしを依頼。写真と映像がボーダレス化する中で、久富氏が描くストーリーと、今回初めて使うL600D・L600Cが表現にどうリンクしていくのか、その使い勝手と印象を訊いた。
Photo:久富裕史(No.2) ST:SOHEI YOSHIDA(SIGNO) Hair:TETSU(SIGNO)
Make Up:ITSUKI(SIGNO) Model:Masha K.(WIZARD) Movie Edit:村田充輝
Produce・Interview:坂田大作(SHOOTING編集長)
BTS:林田瑞穂(Photo)・佐原孝兵(Movie)・青木俊(Movie Edit)
坂田 久富さんは、もともとはグラフフィックデザインを学ばれていたそうですが、そこから写真の道のほうに進まれています。何かきっかけがあったのですか?
久富 グラフィックデザインを学ぼうと思って高専に進学したのですが、3年生までは一般教養の他に印刷物を制作するための基礎知識を学ぶ授業があったんですよね。グラフィックデザインや色彩、写真のことなどを勉強していく中で、徐々に写真に対する興味・関心が強くなり、4年生のコース選択時に「写真」を選んだことがこの道に進む大きなきっかけとなりました。
写真の課題の中に写真展へ行き、それについてのレポーを提出することが多く、その時にヘルムート・ニュートンやサラムーンの写真に出会い、すごく刺激を受けたし、視野が広がりましたね。
当時はネットもない時代だったので、今のように簡単に多くの情報を手に入れることは難しかった。だから当時の僕は、ファッション・フォトグラファーといったらファッションショーのランウェイを撮っている人のことだと思っていたくらいでしたから(笑)。
その程度の知識しかない人間が初めてリチャード・アヴェドンやヘルムート・ニュートンのような作品を観た時の衝撃といったら…「こんなファッションフォトがあるんだ!」、「自分もこんなかっこいい写真を撮りたい!」って大興奮でしたね(笑)。

久富裕史さん。
ロンドンでデビューするまでの経緯
坂田 卒業後はすぐにササキ・スタジオに勤められたのですか?
久富 そうです、すぐに勤め始めました。ササキ・スタジオは大きい会社でしたから、人物写真でも物撮りでも細かくジャンル分けされていて、各ジャンルにスペシャリストがいました。実際の現場で写真の技術や知識、写真を見る目を養いながら、「どんなファッションフォトを撮りたいのか」、「どういうフォトグラファーのアシスタントにつきたいのか」ということをよく考えていました。
ササキ・スタジオを辞めた後は ケイ・オガタさんに師事しました。パリ在住の日本人フォトグラファーの特集を見て「この人のもとで働きたい!」と思って、スタジオを辞めてお金を貯めてからパリに行こうとしていたのですが、スタジオの先輩に「無謀すぎる」と止められ(笑)、その先輩の伝手でNYから帰国されていたオガタさんをご紹介いただいたんです。オガタさんの写真も大好きだったので、またとないチャンスだと思ってすぐに面接に伺いました。
当時の日本ではフォトグラファーとアシスタントの関係性って、上下がはっきりしていて気軽に話せる感じではないことが多かったのですが、オガタさんはフランクに話せる方だったので、パリに行こうとしていたことなどすべてを正直に話したんです。
ファッション・フォトグラファーを目指すのであれば一度は海外に出て経験を積むことはいいことだけど、その前に「日本のトップクリエイターたちの現場を見ておくのも勉強になるのではないか」とアドバイスしてくださって。1年半の間、オガタさんのもとで多くのことを学ばせていただきました。

look 1 / Tops,Bra,Body,Skirt:MARC JACOBS
問合せ:Marc Jacobs Customer Center
https://www.marcjacobs.jp/
坂田 オガタさんにつかれていかがでしたか。
久富 ササキ・スタジオで見てきた人物の撮り方と、オガタさんの撮り方がまったく違っていたんです。ササキで学んだことが僕のベースの中にあるのですが、オガタさんに師事したことで経験も視野も広がり、ものすごくためになりました。
NYのファッションシーンで活躍されていただけあって、モデルやスタッフとのコミュニケーションのとり方、撮影前の準備も綿密で勉強になりましたし、1年の1/3くらいをNYやパリに滞在して撮影されていたので、日本のトップの現場を経験しながら海外の現場の雰囲気も体感できたことは貴重な経験でした。
坂田 その後はニック・ナイト氏に師事されていますが経緯を教えてください。
久富 当時オガタさんが伊勢丹の広告を担当されていたんです。その頃は景気が良かったこともあって、伊勢丹はニック・ナイト、ピーター・リンドバーグ、スティーブン・マイゼルといった世界的に著名なフォトグラファーを起用した広告も制作していました。その伊勢丹の仕事で知り合ったコピーライターの眞木準さんとアートディレクターの戸田正寿さんがニック・ナイトと親しくされていたYohji Yamamotoのプレスの方をご紹介してくださって、そのご縁でアシスタントとしてつけることになりました。

『鏡の国のアリス』のような“こちら側”と“向こう側”が反転して存在する世界観がベース。
「光の世界にいる少女」を「陽」として表現。このシーンはL600Dを使用。
ニックのオフィスは自宅の中にあって、撮影だけでなく生活全般のサポートもさせてもらっていたので、写真のことだけでなくイギリスでの暮らしから文化、考え方などすべてを学ばせてもらいましたね。ニックは「この世で見たことがないもの、新しいものを撮りたい」ということを一番大切にしていて、「誰かがやったことを自分流に解釈して作り直す」ということは決してしませんでした。
“最新のもの”を撮るためのリサーチに時間をかけていたので、ひと月の撮影本数はそこまで多くなかったのですが、アシスタントたちは資料探しのために常に忙しく駆け回っていた感じです。彼のその貪欲な姿勢から学びとれるものは大きかったです。
坂田 ロンドンにはどれくらいの期間いらしたのですか。
久富 トータルで11年ほどいました。はじめの1年半は学生として、その後の2年間はニックのアシスタントとして活動し、帰国するまでの7〜8年は念願のファッション・フォトグラファーとして活動していました。活動し始めて3〜4年経った頃くらいから年に数回、資生堂から仕事を受けるようになっていたこともあり、「環境をガラッと変えて日本で挑戦してみるのもいいのでは」と考え、帰国しました。

Profoto L600D
坂田 プロフォト製品を使い始めたのはいつ頃からでしょうか。
久富 貸しスタジオで見かけて興味はあったのですが、実際に使い始めたのはオガタさんのアシスタントについてからです。オガタさんの撮影はレンタルスタジオが多かったので、いくつか用意されている照明機材の中で一番使い勝手がいいプロフォト製品ばかり使っていました。
坂田 今回「Profoto L600D・L600C」を使っての撮り下ろしを依頼した際、単純なファッションフォト、ビューティフォトではなく、テーマ性を感じられるような写真になるようにお願いしました。
久富 新しい製品の良さを伝えるためにテクニックをお見せするのは当然のことですが、それだけでは自分の中でも物足りないなと思っていました。坂田さんからいくつかいただいたキーワードの中に「光と闇」というワードがあったのですが、個人的に取り組んでいる作品のテーマと重なる部分があったんですよね。
今回の撮り下ろしと個人作品のアウトプットの仕方は全く違うのですが、現在の混沌とした世界情勢や人間の欲望、光と影が表裏一体である状態を寓話的に表現したら、個人作品とは違う見たことがないような作品に仕上がるのではないかと思い、「Forbidden Reflection – 禁じられた果実と鏡の向こう側」というテーマでコンセプトとストーリーを作り込みながら、ビジュアルの流れを考えていきました。
世界は今、「正義と悪」・「平和と暴力」・「愛と支配」・「美しさと危うさ」が明確に切り分けられない、非常に不安定で曖昧な状態にあるように感じていて…。
表では正しさを掲げながらもその裏では欲望や侵略性が動き、光の中にも闇があり闇の中にもまた微かな光(希望)が残っている。このような現代のねじれた構造を『鏡の国のアリス』のような“こちら側”と“向こう側”の世界観をベースにしながらビジュアル化することにしました。
“光と闇”の両方を知った存在の変容をストーリー仕立てに
坂田 ストーリーの「導入」では、光の世界の少女と鏡の中に映る闇の世界のもうひとりの自分が登場しますね。

「導入」:光の世界の少女と、鏡の中に映る闇の世界のもうひとつの自分。
二つの世界の対峙によって、物語がはじまる。
久富 はい、2つの世界の対峙によって「Forbidden Reflection – 禁じられた果実と鏡の向こう側」の物語の入り口をつくっています。
坂田 最初はL600Cでライティングを組まれていましたが、途中でL600Dに交換されていました。
久富 そうなんです。最初はL600Cで白色(デイライト)を出していたのですが、少し光量が足りなかったのでL600Dに変えたところ、白色の出方も明るさも申し分なくて、これには正直驚きました。
坂田 私も現場で体感するまでわからなかったのですが、フルカラーのL600CのほうはRGBのチップの出力を調整して白色にしている一方、L600Dのほうは全てデイライトのチップで構成されているから光量のロスがなく、とても明るかったですね。
久富 メインライト的に使うには、パワーの面から見てもL600Dは迷わずチョイスできるなという印象を持ちました。しかもバラストがない分、機動性が高くてセッティングしやすい。今回のようにデイライトを入れつつバランスをとりながらセッティングしたい撮影に向いているなと思いました。

L600D・L600Cはバラスト一体型のため、ライトの移動やセッティングがスムーズ。
それとスチルとムービーの両方を撮るような撮影ではカットも多いですし、スタッフも多くなるのでリズムを崩さないことが非常に重要です。セッティングに時間がかかって待ち時間が長くなるだけでもストレスにつながり、モデルにもスタッフにも負担がかかってしまう。そういう現場では良いものは撮れないですから、この機動性の高さは非常に優れた部分だと思いました。

Profoto L600C
L600Cは万能型と言いますか、工夫次第で幅広いシーンで柔軟に使えるLEDライトだと思います。ストロボ撮影の時はカラーフィルターを常に持参するのですけど、それがものすごく分厚くて重たいんですよね(笑)。
L600Cは無限に色をつくることができるのでカラーフィルターは必要ありません。しかもスマホに専用アプリを入れておけば手元で細かく調整できるので、すごく便利。ベースライトとしてのL600Dと、色表現が得意なL600Cを使い分けながらの撮影は、セッティングが早いため“色選び・色遊び”がスムーズで楽しかったですね。

左:Profoto Control アプリの画面。手元の操作で、300種類以上のカラーフィルターが内蔵されたL600Cの特長を最大限活用できる。
右:久富さんのカラーフィルターブック。
坂田 ストロボだとフィルターを何枚も掛け替えたり、思うような色が出なくて苦労しますよね。
久富 その調整が本当に大変なんですよ。でもL600Cだと微妙な色の再現が簡単にできてしまうので、かなり使い勝手がいいです。しかもアプリのライブラリーに書かれた番号とフィルター帳の番号を照らし合わせながら、色味を厳密に決められるのもすごく便利。特に広告写真の撮影時には威力を発揮してくれると思いました。
坂田 「導入」のシーンではアンブレラを使われていましたね。
久富 はい、銀のアンブレラをサイズ違いで試してみました。プロフォト製品を使う時にいつも思うことなのですが、グラフィックをメインに撮ってきたフォトグラファーにとってアタッチメントをすべて使えることってものすごく便利です。
今回のようにスチルとムービーを一緒に撮影することが増えているので、アタッチメントを交換せずにそのまま使えるのは利便性が非常に高い。プロフォト製品の強みだと思います。


左はProfotoアンブレラ シルバー M、右はProfotoアンブレラ ディープ シルバー Sを使用。Mの方が拡散範囲が広い。アンブレラの大きさや内面の反射などストロボのアクセサリーがそのまま活かせるのが強み。
坂田 撮影当日も、スチル用に組んだLEDのライティングのままカメラだけ交換してムービーを撮影されていました。今回はスチルとムービーの両方で5シーンを撮影してもらっているのですが、スチル用とムービー用とライティングを組み直していたら限られた時間内では厳しかったかもしれません。
久富 絶対に終わらなかったですね(笑)。普段はファッションフォトやビューティフォトなど人肌の色再現にシビアな撮影が多いのですが、初めて使った印象としてL600DもL600Cも違和感なく使えました。次は白ホリのスタジオでもっと緻密にライティングして、いろいろと試してみたいですね。
ムービーの現場だと照明技師がライティングを組んでくれるのですが、スチルのライティングに慣れている側からすると結構ざっくりだなって感じてしまう時があるんです。プロフォト製品だと自分が使い慣れたライトソースに近い形で組めるので、中小規模のムービー現場なら、自分でコントロールできるのはすごくいいなと思いました。

「誘惑」:鏡の中の果実に少女が手を伸ばす。 欲望と越境の瞬間を象徴的に見せる。
坂田 「誘惑」のシーンでは鏡の中にある“禁断の果実”に少女が手を伸ばしています。
久富 鏡は「もうひとつの自己」・「裏返しの世界」・「内面に潜む影」・「現実の歪み」を象徴する装置として、果実は「禁じられたもの」・「誘惑」・「欲望」・「越えてはいけない境界」の象徴として撮影しました。
果実のカットは特に色を入れずに、どこか抽象的で生っぽく撮りたいと考えていたのでL1600D(1600W)を使っています。

L1600Dにブラックグリッドを装着して光を絞ることで、主題となる果実以外の情報を排除。
今回の撮影で、ブラックとホワイトのグリッドを使ったのですが、エッジの部分の馴染みがソフトになってすごく良かったです。 今まではグリッドの上からトレーシングペーパーをかけて光の硬さを調整していたのですが、特にホワイトグリッドは新しい選択肢としてありだと思いました。
坂田 LEDとの相性も良いらしいですね。ストロボだと黒のグリッドがデフォルトなので、ホワイトグリッドの存在を知らない方がまだ多い気がします。
久富 それこそL600Dとズームとホワイトグリッドの組み合わせは、ビューティフォトにとって最高の組み合わせになるかもしれません。今後さらに試してみたいです。

「侵犯・取り込み」:禁じられた果実を口にしてしまう。
取り返しのつかない選択をしてしまったことを暗示する。
坂田 「侵犯・取り込み」のシーンではL600Dを使われていました。
久富 禁じられた果実を口にしてしまうシーンでは、“取り返しのつかない選択をしてしまった”ことを暗示させるためにシルエットっぽくしたいというイメージを持っていたので、外光だけでいこうと考えていました。
ただ撮影日は曇天で自然光だけだと白い衣装のドレープもほとんど出ないような感じだったんですよね。もう少し日差しの感じを入れたいと思い、はじめはより光量の大きなL1600Dを窓の外の高い位置から当ててみたのですが、被写界深度は浅く撮影したかったので、露出を見たら L600D でも充分足りていたのでこちらを使いました。

L600Dで自然光を補う形でセッティング。
坂田 衣装が蝶のように見えてきれいですね。作品だけでは自然光なのか光を当てているのかわからないです。
久富 わからないくらい自然ですよね。LEDを使った撮影は何度か経験していますが、僕はどちらかというと絞り気味にして、フォーカスをカチッと合わせるのが好きなタイプなのでパワーが物足りなく感じることが多かったんですよ。
でも今回のようなロケーションの雰囲気を活かした撮影の場合は、デイライトとのバランスを見ながら調整していくのと、表現として絞り込むシーンではなかったので光量も充分。最終的には衣装のドレープのディテールがぼんやりとわかるくらいの出力に調整しています。
坂田 L600D一灯で外光を作れてしまうというのは、使い勝手の面でかなり助かりますね。
久富 本当にそう思います。スペックだけ見たらL600Cのみでもいいのかなって思ってしまっていたのですが、実際に使ってみるとL600Dのコンパクトなのにパワフルなデイライトをベースに、フルカラー対応のL600Cで表現の幅を広げていくような使い方ができるので、両方あったほうが絶対にいいなって思いました。

スチルとムービーはカメラを変えるだけ。同じライティングで撮影できるため時間ロスが少ない。
坂田 フル点灯でも、音がすごく静かでした。「水冷」だそうです。
久富 驚きの静音性でした。スチルとムービーを同録する撮影の場合、カメラやマイクの近くからライトを打たなければいけないから音に対してすごく気を遣います。
Profoto B10などに比べると、空気の流れも最大限に考慮した冷却システムになっていると聞いていましたが、実際、撮影中はつけっぱなしだったのに終始静かでした。HMIだったらつけっぱなしにすると熱をもってしまうので現場が蒸し暑くなり、夏なんて過酷な状況になりますが、L600D・L600Cではそういうことも一切なかったですね。今回セリフはありませんが、これなら同録もできそうです。
「禁じられた果実」を含んで闇に落ちる
坂田 「変容」のシーンはかなりダークな世界観でした。
久富 鏡の向こう側へと引き込まれて存在が少しずつ変化する様を撮りたくて、反射や歪み、シルエット、布越しの影などを使いながら境界を崩していきました。このシーンではL600Cのカラーが役立ちましたね。

「変容」: 鏡の向こう側へと引き込まれ、存在が少しずつ変化していく。
3色くらいは色を入れたいと考えていたので、左右からのトップライトとボトムからもライトを入れています。L600Cが2台だったため、このシーンではL600Dにもカラーフィルターを付けて使用しました。光を当てながらも陰影は残したかったので、ボトムにはグリッドを装着し、硬い光を当てています。
定常光の良いところは見た目通りに撮れる点にあるので、色や濃淡、位置を判断しやすいです。そういう意味ではストロボに慣れていないフォトグラファーでも、イメージに近い光を構築しやすいでしょうね。


L600Dにもカラーフィルターをつけることで色作りが可能。3灯使いながら、色が混ざり合う状態を目視で確認・調整できるのがメリット。取手があるので直置きしやすい。
坂田 撮影中、スタンドアームの部分が床置きに丁度良い角度になって便利だとおっしゃっていました。
久富 そうなんですよ。スタンドアーム部分を使って安定させることもできるし、スタンドアームを外して直置きもできるからすごく便利でした。ストロボだとサンドバッグなどで固定しないと倒れて危ないじゃないですか。L600D・L600Cはアンブレラも挿したらそのまま使えますし、こういう取り扱いが楽な面も機動性の高さにつながっていいなと思いました。

坂田 モデルの表情もすごく良かったですね。
久富 ムービー撮影もあったので表情に動きを出せる、演じられるモデルを探しました。HMIだと眩しいですし、機材自体が熱くなってしまってモデルの方に負担がかかりますが、終始楽しんでくれていたのも印象的でした。
坂田 今回は使いませんでしたが、モデルの(眼の)負担を軽減するために、定常光ライトなのに、フラッシュモードもあるそうです。


「変容」:反射、歪み、シルエット、布越しの影などを使いながら、境界が崩れていく感覚を描く。

闇を纏いながらも、再生の可能性を感じさせる

「結末」:少女は“闇の女王”として立ち現れる。
ただし、その手の中には小さな発光体がある。闇をまといながらも微かな光を残した存在として描くことで、終わりの中に再生の気配を残す。
look 2 / Dress:MARC JACOBS
問合せ:Marc Jacobs Customer Center
https://www.marcjacobs.jp/

坂田 「結末」は圧倒的な“闇の女王感”でしたが、手に持つ小さな発光体に微かな希望を感じます。
久富 ただ破滅に向かわせるだけで終わりにしたくなかったんですよね。
“堕落の物語”ではなく、“光と闇の両方を知ってしまった存在の変容”として着地させたかった。この小さな発光体によって、終わりの中に再生の気配を残しています。

坂田 手元の照明にはスポットライトを使われていました。
久富 小さなライトを細かく組み合わせて使う撮影が好きなんです。モデルがジュエリーを身につけたビューティの撮影もよくするのですが、ジュエリーにだけピンポイントで光を当てることで、ほんの少しキラッとした感じを出すと印象が大きく変わります。

スモールスポット装着し、手元だけに集光。発光感を出している。
坂田 定常光なので芯を入れたほうがいいかのか外したほうがいいのか、その場で確認しながら調整されていましたね。
久富 はい、その場で見ながらできるので効率的でした。最後のシーンは、トップからL600Dを当てて陰影を出しています。ボトムからは全体的にブルーを少し感じさせたかったので、色を調整できるL600Cにソフトボックスを付けています。背景にも若干ブルーを感じさせたくて、下からL600Cを当てています。

坂田 ブルーにしたのはどうしてですか?
久富 衣装の黒い部分や顔のシャドウにブルーが入ることで、より”闇の世界感”が出せるかなと思いました。後ろの鏡の前に置いたキャンドルは「光の中の入り口」としての役割を持たせています。
坂田 トップライトは、アシスタントの方が一人で脚立にあがって3mの高さにセッテイングされていましたね。
久富 コンパクトなL600D・L600Cはスタンド1本でも安定するため、倒れないように固定したり、何人かでセットしたりする必要がなかったですね。少人数でもこれだけの撮影ができるのはメリットでしかないです。
ストロボだとファースト・アシスタントがスタジオマンに出力を伝えて、撮って、確認して、調整して…とするじゃないですか。それがすべて手元のアプリでコントロールできるのでスピーディですし、安心感につながりますよね。
坂田 撮影にもよりますが、L600D・L600Cだとワンオペでも光のコントロール可能なので、そういった心配ごとも減りそうです。

L600Dにホワイトグリッドを装着して光を絞り、トップから照射。
撮影で大切にしていること
坂田 今後はL600D・L600Cをどういうシーンで使いたいですか?
久富 やっぱり今回のような規模感・環境で、スチルとムービーの両方を撮らないといけない時にはぜひ使いたいですね。デイライトとのミックス撮影時に最適だと思います。あとは雰囲気を出したい撮影の時にも使いたいかなあ。ハウススタジオで撮る時も天候によってはL600Dを1灯持っていると安心ですよね。
坂田 普段の撮影で大切にしていることを教えてください。
久富 ADが求めている世界観や人物像をどのライトソースで表現するのかをとことん考えるようにしています。たとえば女性の場合は“女性像”というものが何よりも重要で、「どういう女性にしたいのか」、「この女性だったらどうアクトするのか」、「こういう時どんな表情をするのか」を考え、それを効果的に出すためには「どんなライティングがいいのか」、「光の硬さは」、「当てる方向は」、「色味は」とどんどん掘り下げていく。そういったことをとても大切にしています。

アシスタントによく話すのですが、ライティングは奥が深いのでなんでもかんでも手を伸ばすのではなく、人物だったらまずはアンブレラを極めてみるといいと思います。アンブレラひとつでも、被写体との距離やアンブレラのズーミングを変えるだけで撮れるものは全然違いますから。
ひとつのことを熟知した上で次にステップアップすると、次のステップでも効果的に表現できるようになります。いろいろなものを使うことを目的としてしまうと完成度が低くなってしまいますよね。感覚だけでどうにかなる世界ではないですから、どんな仕事がきても表現できるように基礎的な技術と知識を一つひとつ身につけていってほしいですね。
坂田 これからやってみたいことはありますか。
久富 5年前から東京藝術大学のデザイン科の学生に写真を教えているのですが、彼らは写真についての知識はまだ浅いのですが、アートへの造詣はとても深いんですよね。だからこそ毎回出す課題に対して想像の上をいくような答えを出してくるんですよ。それが何よりも楽しくて。写真のことを何十年もやってきて凝り固まっていた部分があることにも気づけて良い刺激になります。

もともと「写真が好きだからファッションフォトグラファーになった」のではなく、「ファッションフォトが好きだからフォトグラファーになった」人間なので、仕事で撮れていればそれで幸せだったんです。雑誌で撮るファッションストーリーが自分の作品だと思っていましたから。でも学生たちと交流を重ねるようになってからはアートベースのコンテンポラリーフォトグラフィーにも魅力を感じるようになって、仕事とは別の作品づくりに挑戦しているところです。
美大の学生たちって課題以外にも好きな作品をつくっている人たちが多いんです。長期休暇中にグループ展や個展を開く学生たちばかり。観に行くたびに「自分も仕事以外に個人の作品をつくらないと!」って刺激を受けますね。
最近では、これまでまったく興味がなかったアワードにも挑戦してみたり。学生に感化されすぎですかね(笑)。でも入賞したら嬉しいですし、また違うことにチャレンジしたくなる。自分の中の変化を楽しんでいこうと思っています。
Profoto L600D/L600C

主な特長
L600D/L600C(共通)
• バラスト不要のコンパクトな一体型ライトで素早くセットアップができ、持ち運びが容易
• 軽量な本体と静音・高効率なHydroCTechTM液冷システム
• 0.1%~100%シームレスな16ビットの精密制御と完全なフリッカフリーを実現
• 100種類以上のライトシェーピングツールに対応する Profoto マウントとアンブレラホルダー搭載
• 内蔵DMX、Timo-Two CRMX、Bluetooth、Profoto Airによる柔軟な接続性
L600D
• わずか5.9kgの重量から生み出される圧倒的な明るさ
• Core-1TMエンジン搭載の強力な600WデイライトLEDで正確かつ自然な色再現(TLCI 99)
• リサイクルタイムなしでHSSフラッシュが可能なProfoto Airフラッシュモード
L600C
• わずか6.1kgでパワーと重量の新基準
• Core-6TM RGBWWW LEDエンジン搭載の強力な600Wで、2,000〜15,000Kの精密なCCT制御と卓越した色再現(TLCI 99)を実現
• 1,600万色と300種類以上の内蔵されたフィルターを備えたオプションライトモード
• Profoto Airフラッシュモードにより1,600万色のカラー発光をHSSで制御。リサイクルタイムなしで使用可能
直販価格
Profoto L600D 436,000円(税込:479,600円)
Profoto L600C 484,800円(税込:533,280円)
製品詳細
https://www.profoto.com/jp/ja/shop/products/lights/monoled/
Photographer
久富裕史 Hiroshi Kutomi
1991年 Sasaki Studio勤務。
1994年 ケイ・オガタのアシスタント勤務。
1996年 渡英。
1997年 Nick Knightのアシスタント勤務。
1999年 Londonをベースにfashion photographerとして活動を始める。
2007年 帰国後、東京をベースに活動を始める。
Beauty、Fashionを中心に、上質なモード感を描き出すphotographer。
美しい空気感とともに被写体の一瞬の表情を的確に切り取る、豊かな感性の持ち主。 近年は動画にも力を入れ、広告や雑誌等で幅広く活躍中。
https://no-2.co.jp
mail@no-2.co.jp
Instagram @hiroshikutomi








