プロフォトから、B10シリーズの信頼性を元に、よりパフォーマンスをアップしたモノブロック・バッテリーストロボ「Profoto B20/B30」(以下、B20/B30)が発売された。
B10Xシリーズよりも13%速いリサイクルタイム、約2倍明るくなったLED、追加されたシンクロ接点、また自身でフラッシュチューブ交換ができるなど、使い勝手が向上している。
このB20/B30を使ったスチルとムービーの撮影を、フォトグラファーの上村可織氏に依頼。B10ユーザーでもある上村さんが、新製品の「ストロボと定常光(LED)」を使い、どのような表現が生まれたのか。また操作性や、光質をコントロールできるプロフォトの各種アタッチメントの魅力も訊いた。
Photo:上村可織 ST:オオヤカズマサ Hair:YAMA Maku Up:Kayaki susumu
Model:Hanna Demidziuk(Donna) 衣装協力:LOOK1 dress:morimori、
LOOK2 dress:RIKO Nosaki、LOOK3 Tops:LEPO TOKIO 撮影協力:イイノ・メディアプロ
Interview:坂田大作(SHOOTING編集長) BTS Photo:谷川淳
坂田 上村さんは美大の絵画科卒と伺いました。そこから写真を生業にしようと思われたきっかけを教えてください。
上村 はい。幼少期、絵を描くことや、テレビや雑誌でファッションショーや服を見るのが好きでした。大学に進学する際に、ファッション系に進もうか、絵画に行こうか迷っていましたが、一度絵画を学んでから考えてみようと思い、大学は絵画科で油画を専攻しました。
絵画を学ぶ中でフォトリアリズムや、写実的な表現にも興味が出て、写真も勉強するようになりました。学内に暗室があったので、「写真を撮っては暗室で現像・プリント」、という作業を繰り返しているうちに、“写真の世界の楽しさ”を感じました。そこからは独学になってしまうのですが、大学時代に写真で作品を作るようになりました。
大学を卒業すると、スタジオスタッフなど写真を学ぶ道があると思いますが、当時は独学だったもので、広告写真とマガジンの業界の違いなど、何も知りませんでした。

上村可織さん(製品はProfoto B30)。
スタジオスタッフの仕事があることだけは知っていましたが、当時は作家志向も強かったので、1年間はアルバイトをしながら作品制作をしたいと考えていて、国立新美術館で監視員をしていました。
たまたまそのタイミングで、「アンドレアス・グルスキー展」が開催されていて。そこで毎日展示作品や来場する方々を見ているうちに、自分も「人に感動を与えられるようなものを作れる人間になりたい!」という思いが深まりました。
とはいえ独学の限界を感じていたので、プロフェッショナルな世界で学びたいと思い、アマナに入社しました。

坂田 アマナグループは広告撮影がメインだと思いますが、入ってみてどうでしたか。
上村 率直に、驚きました(笑)。自分が見ていた写真の世界は、ファッションフォトだったので、「こういう世界があるんだ」、というのを初めて知りました。
素材撮りや合成など、そういうことを手伝いながらも、今何をやっているのかよくわからない(苦笑)、という所から始まりましたね。
坂田 雑誌は「よい空気感で」という撮影も多々ありますが、広告は事前準備から緻密に練り上げていくことが多いですね。
上村 化粧品やブツ撮りはより繊細な作業になりますね。
坂田 その中で、ライティングも学んでいかれたのですか。
上村 そうですね。スタジオにあるような照明機材も初めて触るものが多かったので、センチュリーやスタンドの使い方から、一つ一つ教えていただきましたね。
現場のアシストをしながら、「光の理解」を深めるために、休日には自分でライトを触らせて頂き「作品撮り」という名のテストシュートを続けました。

メインライトはフロントトップから、B30+オクタシルバー(150cm)を照射。
坂田 プロフォトの製品はいつ頃から使われたのですか。
上村 私が所属していた当時アマナグループのUN(アン)という会社はロケが多く、ハウスやレンタルスタジオで撮影する際は、ほぼプロフォトを使っていました。
プロフォト製品は、基本的な使い方がシンプルで、頑丈なのでロケ先でも安心して使えました。アタッチメントも豊富で、アクセサリー関連は色々レンタルして使っていました。
坂田 ちなみにアタッチメントで使用頻度が高いのはどれですか。
上村 オクタ型のソフトボックスとスポット系が一番多いですね。
独立のきっかけ
上村 2020年から日本もコロナ禍になり、また様々な環境の変化も含め「今後どうしていくか」を考えた時に、今まで以上に「写真に向き合いたい」という思いが強くなり、2022年に独立しました。
坂田 独立してどのような変化がありましたか。
上村 独立後は一人で撮影に向かうところから始まったので、お仕事で繋がらせていただく一人一人の人の繋がりに、より感謝の気持ちが湧くようになりました。
数年前に妊娠・出産をしまして、産後に仕事がとても少ない時期がありました。その時はフリーランスの波を感じましたが、またそこから少しづつお声をかけてもらい、お仕事をさせて頂いています。

Profoto B30
テーマは「タイムレス」「近未来」
坂田 今回、プロフォトの新しい製品「Profoto B20/B30」での撮影をお願いしました。ビジュアルのコンセプトを教えてください。
上村 ここ数年、タイムレスなもの、ずっと残っていく普遍的なものに興味が出てきました。
昔の写真集を見ても「今も好きだな」とか、「カッコいいな」と思える、そんな「時代性を超えた作品」に強く感動するようになってきた自分がいます。
自分が写真を撮る時も、その時々で時代性はにじみ出てくるものの、その時の「自分自身が良いと思えること」が、普遍性に通じるのではと考えています。この撮影も、個人的に良いと思える感覚を重視したものを作りたいという思いから始めました。

そのキーワードとして「タイムレス」をあげました。
過去におきた事はわかりますが、未来はわからないので、「近未来」を想像し、衣装要素は時代性を追わず、「いつの時代かわからないけど、未来的な衣装」というイメージでスタイリストさんにご相談しました。
照明に関しては、ハレーションだったり、「光の反射」を感じられるような写真にしようというイメージがありました。
坂田 どのカットも、発光感というか、「光の存在」を感じます。
上村 ありがとうございます。全体を通して、「発光感」とともに「湿度感」が出るといいなと思って意識していました。
坂田 1カット目はピンク系の衣装とヘアメイク、シルバーの風船のコントラストがすごいです。
上村 このカットは、合計4灯使っています。黒バックで硬いライティングをすると、コントラストが強くなりすぎると思って、少しマットな雰囲気を出すために、メインライトは150cmのオクタ(RFi ソフトボックス オクタ型)です。

少しニュアンスを入れるために、「B30+グリッド+スヌート」を左下へ、右上から「B30(LED)+スモールスポット」。右下からB20(LED)にはグリッドを付けて、ハレ切りしながらあてています。
オクタ1灯だと、キレイに光が広がると思いますが、メイン以外の3灯をスポット的にあてることで、フラットになりがちなところに、「光のムラ」を作っています。

スモールスポットをB30に装着したところ。スモールスポットは115mmの光学レンズが入っていて、集光から拡散光まで自由にコントロールできる。
今回は映像も撮る予定でしたので、基本的には3カットとも範囲の小さいライティングにはしないで、動画に切り替えても「モデルが動きやすいように」、ということも意識しています。B20/B30は電源部と発光部が一体型でコードがない分、セットが組みやすいですね。スタジオスタッフも作業しやすかったと思います。
この撮影では、トップ位置などを動かしづらいライトには、充電器を接続した状態のまま使いました。充電しながら使うことで電池切れでライトを動かす必要がない状況を作り出せるのも便利です。

メインのオクタですが、上からブームで吊っています。普通のストロボだとジェネがついてくるので、動かすのが大変なのですが、B20/B30はモノブロック一体型で可動範囲が大きい(動かしやすい)ため、光の感じを探りやすかったです。あとは、Profoto Controlアプリのおかげで、出力を手元で制御できるのも助かりますね。

坂田 こちらはより近未来感がありますね。
上村 ありがとうございます。このカットに関しては、光はオクタ1灯で作っています。

普段は影が出ないように、バック紙とモデルの立ち位置の距離を開けて撮影することが多いですが、ここではわざと背景寄りに立ってもらっています。
オクタを使えばやわらかな影が落ちるので、そのグラデーションもキレイだと思いました。

オクタは仕事でもよく使っています。ボックスの中と外にディフューザーを2枚かけています。その分光量は落ちますが、B30なら最大出力が500wsあるので、このくらいの距離なら1灯で全身をカバーできます。
坂田 衣装とメイクも独特ですね。
上村 インナーの泡のようなドレスがフェミニンな雰囲気だったので、そこに「強さ」みたいなものを加えていきたいという話をしていて。上から防具のようなものもオンして、強さと柔らかさが共存するスタイリングにして頂きました。

坂田 硬軟のミックス感が、逆に目をひきますよね。槍のような武器かなと思いきや、チューブ風船だったり(笑)。
上村 戦士っぽさもありつつ、不思議な感じですよね。柔らかくて強い新たな戦い方をする女性像ができました。
坂田 アタッチメントを付けても1灯で全身が撮れるのなら、クリップオンの次のステップとしてB20/B30は選択肢に入りますね。
上村 そうですね。ここでは風船を投げてもらったりして、そのタイミングでも撮っていますが、連写をしてもそこまでチャージでストレスを感じることはなかったです。

フィルムで撮影したもの。
フィルムカメラでも撮影
坂田 フィルムカメラも何台か持参されていましたよね。感度はいくつのものを使われていたのでしょうか。
上村 感度はISO160ですね。フィルムも問題なくちゃんと撮れていました。

坂田 このビジュアル(上)は、床にアルミシートを敷かれていました。
上村 そうですね。より未来的な空間を最小限で出せたらいいなと。

右サイドから、スモールスポットを付けたB30の光(LED)をシルバーの床に照射することで、複雑な反射がバックの白ホリに投影されて光のニュアンスを作っています。

右上からハードボックスを使った強い光を人物と銀シートにあてることで、全体を照らしています。
また。光のムラができるように右奥から、「グリッド+スヌート」付きで、1灯あてています。衣装や足元にも光が反射して“キラキラ感”が増しています。
坂田 硬めの青白いシャープな光がカッコいいです。月光で撮影したような感じもありますね。

上村 宇宙空間っぽいですよね。ハードボックスやスヌートで、ポイントを絞って光をあてることで立体感が出せるので、このライティングにしました。

B20/30からは、ユーザーによるフラッシュチューブやガラスヘッド(別売)の交換が可能となった。ここではフラットフロント用グラスカバーに交換してからハードボックスに装着している。
坂田 新製品のB20/30からは、乳半(標準仕様)のフロントガラス部分やフラッシュチューブを、自分で外して交換することができるようになったんですよね。
上村 はい。ハードボックスの中に入れて使うB30は、「ガラスドーム」に付け替えて仕込んでいます。フラットヘッドとどこまで違いがあるかまでは比較できていないのですが、ハードボックスを使う時には、ガラスドームにすることで、筐体中の光で広がった光がより前面に集光されるので、光量を有効に使えると思いました。
坂田 ジェネレーターとプロヘッドを初期に導入するのは金額的なハードルが高いので、まずはB20/B30と、必要なアタッチメントを揃えていくのがいいかもしれないですね。

LEDライトでムービー撮影も可能
上村 今回、縦位置のムービーも撮影&編集しました。
B20/B30はB10シリーズよりも、LEDライトの光量が2倍明るくなったと伺いました。撮影時からわかってはいたのですが、映像の撮影にも使えますね。動画はコンパクトデジタルカメラを使ったり、わざとチープな遊び要素を入れて作ってみました。

坂田 上村さんは、ご自身ではB10を所有されていると伺いました。今回のB20/B30の率直な印象はどうでしょうか。
上村 B30はチャージが速いなと思いました。ストレスはあまり感じなかったです。筐体がラバーになって滑りにくくなったし、ハンドル(オプション)があるとバランスがよくなって、持ちやすいですね。重量のある大きさのオクタを上から吊っても、ヘッドが動くこともなかったので、安定して使えたなと思います。

左:オプションのハンドルをつけると、手持ちで操作しやすい。右;B20/30からシンクロ接点が搭載された。
坂田 新しく搭載された「シンクロ接点」はどうですか。
上村 フィルム撮影の時も、「Connect Pro」で飛ばして撮ったので、今回は出番がなかったのですが、シンクロ接点があるのはいいです。ワイヤレスは便利ですが、本番の時に万が一不測の事態があってもケーブルで繋いで飛ばせるのは、とても安心感があります。
仕事をし続けていると、「本番いきます」となった時に、何かが起こることってあるんですよね。そういう時に有線で使えるのは、安心要素ですね。
逆に「Connect Pro」を、今回プロフォトの皆様に使い方を詳しく教えて頂いて(笑)、すごく使いやすくなりました。
状況によって、あまりアシスタントを連れていけない時など、「Connect Pro」をProfotoのスマートフォンアプリと連携できるのがすごく便利です。一人でモデリングのオンオフや、出力をコントロールできます。「master control」というところで、全部一気に発光できたり。特に多灯の時は、すごく便利ですね。

私がアシスタントのころは、大型の照明機材の扱いには苦労していたのですが、今回の撮影で「ここまできたんだな」と感じました。言葉が適切かどうかわからないのですが、「少し学べば使える」という世の中になってきたんだなあと。より思いますね。
坂田 プロフォトブランドは「直感性」を重視していると思うので、おっしゃっていることはよくわかります。
上村 一人で撮影に出かけるとなっても、カメラとB20(30)がバッグに入っていれば、ロケや取材ものでもいけそうです。
映像の撮影・編集について
坂田 縦位置のムービも作って頂きましたが、映像編集は以前からされていたのですか?(映像は後日公開)
上村 そうですね。仕事で少し使っていました。ただ凝ったものはできないのですが(笑)。当時、映像の撮影はブラックマジック系の小さめのカメラをよく使っていました。
坂田 この撮影では、旧タイプのコンパクトデジタルカメラや、昔のハンディカム系のビデオカメラなど、少し解像度が低かったり、懐かしいカメラでも撮られていましたね。
上村 そうなんです。すごく綺麗で、高解像で撮れる機材はたくさんありますが、今回はもう少しアナログを感じる作りにしたかったので、敢えて少し古めの機材を持ってきました。

ムービーはニコンのコンパクトデジタルカメラや古いハンディビデオカメラ、フィルムではニコンやペンタックス67等も使用。
坂田 B20/B30は、今後どういうシーンで使いたいと思われますか。
上村 そうですね。夕方のマジックアワーの時間帯に、海や森のロケシーンで、ライトを入れつつ撮るとか。その場ですぐ動画に切り替えても、LEDの灯で十分撮れそうです。
最初に機材をお預かりした時に、「LEDの光量はどうなんだろうか」という不安もあったのですが、動画を回してみるとモデル一人の撮影なら十分いけると感じました。光質も生々しすぎず、すごくよく撮れていました。

今回はスタジオで作り込みましたが、次は電源確保が難しそうな外ロケに持っていきたいですね。少人数でコンパクトな撮影ほど、機動性が活かせると思います。
撮影で大切にしていること
坂田 撮影の仕事で心がけていることはありますか。
上村 最近の仕事スタイルはテザーでPCに繋いで撮影するのが多いですよね。でも自分がファインダーを覗いている感じと、PC上でモニターに写し出される写真は少しニュアンスが違うんですね。
なので、シャッターをきったあとはモニターでも確認して、周りの方々が納得できるものが作れているのか、その場に時間がとられても、必ずチェックする、というのは心がけています。とても普通のことになりますが、、、(笑)。

現場のノリで「大丈夫です」「イけてます!」ってなっても、撮影後にチェックしていく中で、足りないカットがあったりすることもあるので、現場でのチェックが大事だなと思います。今後のことについては、やはりアートやファッションや音楽が好きなので流通や、ファッションブランドの撮影などもどんどんしていきたいです。
Profoto B20/30

主な仕様
Profoto B20
最大出力:250Ws
出カレンジ:11f-stops(0.5~250Ws)
リサイクルタイム:
Ecoモード:0.01~1.1秒
Boost/Freezeモード:0.01~ 1.2秒
大きさ:幅110 x 長さ210 x 高さ160mm(スタンドアダプター使用時)
重さ:1.9kg(スタンドアダプター使用時)1.5kg(スタンドアダプター不使用時)
直販価格:29万9,860円
Profoto B30
最大出力:500Ws
出カレンジ:11f-stops(0.5~500Ws)
リサイクルタイム:
Ecoモード:0.01~1.8秒
Boost/Freezeモード:0.01~ 2.1秒
大きさ:幅110 x 長さ255 x 高さ160mm(スタンドアダプター使用時)
重さ:2.2kg(スタンドアダプター使用時)1.8kg(スタンドアダプター不使用時)
直販価格:37万4,990円
定常光 (B20/30共通)
モデリングランプ:LED(40W)
調光範囲:100~1%
色温度: 2800K~7000K(+/-500K)
最大光束(ルーメン):5,000lm
照射角: 63°
Photographer
上村可織
1988年兵庫県淡路島生まれ。
多摩美術大学絵画科油画専攻を卒業後、株式会社amana、UNにてアシスタント、フォトグラファーを経て2022年よりフリーランスフォトグラファーとして独立。
2020年wood pencil 受賞。
東京を拠点に広告、ファッション、アート、音楽など多方面で活躍の場を広げている。
https://kaoriuemura.com
kugraph@gmail.com








