内倉真一郎 個展「私の肖像」が、KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHYで開催される。
紹介文
黒い背景の前に立つのは、撮られることを職業としない、一般の人々。自然光の元で何百枚と連写撮影を重ねるなか、そんな彼らの得も言われぬ存在感が放たれる瞬間を、内倉は写真に捉えていきます。
被写体が人生を通し重ねてきた「既知の個性」を写真に投影することが良いポートレート写真の定義であるとすれば、本作はそれとは異なるのかも知れません。手法的には極めて王道的なポートレート写真でありながら、その一枚一枚には独特の質感が伴い、写真だけが捉えられる特有の「気配」を内に湛えながら、鑑賞者を不思議な世界へと惹き入れていきます。
ステートメント
私は写真館で働いている。
記念写真を撮り、その後、お客様にお願いをして作品を撮る。
あるいは、こちらから声をかけて撮影を行ったり、静かな場所でじっと人が来るのを待ち撮影する。
太陽光の下で黒いステージに立つあなた。
指示もしていないのにカメラ目線になったり、私に笑顔を見せたり、マスクを外したりする。
私は、約5分から10分の間に、500カットから1000カットの連写撮影を行う。
すると思いもよらない、無意識の中にある表情が写真に現れてくる。
それは、肉眼では確認できないさらけ出された表情、あるいは体の原始的な微妙な仕草。
私は撮り、選び、プリントする時に思うことがある。
大量のカット数の中から「あなた」をセレクトしていく過程では、
撮れた確信なるものが、その後のセレクトで消えることもあり、
撮れなかったかもしれない状態で、新たな「あなた」に出会うこともある。
もしかしたら誰しも、今の自分は絶対の存在ではなく、
無数の自分というものを秘めているのではないだろうか。
私は自己をレイヤーのように「あなた」に重ねる。
拡散され融合されたモノクロームから浮かび上がる「あなたと私」。
それは、一枚の写真となり、二度と出会うことのない未知の存在のようだ。
「私の肖像」は連写から生まれた彫刻のように、蓄積された「あなたと私」との愛の関わりである。
内倉真一郎
1981年、宮崎県生まれ。日本写真映像専門学校(大阪)卒業後独立し、現在は宮崎県にて活動。主な個展に『十一月の星』(2018年、EMON PHOTO GALLERY、東京)、『犬の戦士団』・『十一月の星』(2018年、居藝廊G.GALLERY、台湾・台北)、『PORTRAIT』(2017年、BLOOM GALLERY、大阪)など。主なグループ展に『第8回大理国際写真祭』(2019年、中国・大理)、『My Body, Your Body, Their Body』(2019年、KANA KAWANISHI GALLERY、東京)、『第2回寧波市国際写真祭』(2017年、中国・寧波)、『YP』(2017年、清里フォトアートミュージアム、山梨)など。
主な受賞歴に第41回キヤノン写真新世紀優秀賞 (2018年澤田知子選)、 第33回・34回・36回キヤノン写真新世紀佳作 (2010年清水穰選、2011年大森克己選、2013年椹木野衣選) 、第7回EMON AWARDグランプリ (2018年) 他多数。作品集に『十一月の星』(2019年)、『Collection』(2019年)など。
2020年9月、新作『私の肖像』を赤々舎より刊行予定。
- ギャラリー名
KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHY
- 住所
東京都港区西麻布2-7-5 ハウス西麻布 5F
- 開館時間
13:00〜20:00(水〜金)/12:00〜19:00(土)/日・月・火・祝休廊
- アクセス
東京メトロ 表参道駅 徒歩10分/六本木駅 徒歩13分
- URL