山内悠「空晶 ku-sho 現象から空間へ」が、アンフォルメル中川村美術館で開催される。
開催概要
富士山、屋久島、モンゴルと、半ば不意に始まる「旅」で、山内は世界のパラレルな存在を捉えながら、この惑星の長くシリアルな歩みの中では、人間の営みもまた現象として時を経てきたことに気づきます。
今展では、毛綱毅曠が仕組んだ当館の奇想の空間で、モンゴルの岩と砂、屋久島の樹幹や岩、森からのぞく宇宙の茫漠など、山内の作品が縦横に展開し、当地の谷や川から運んだ石と砂が、それらの写真に共鳴します。
ステートメント
身近な川を訪れると、何気ない石の一つ一つにこの地のなりたちが垣間見える。露頭を削って水が運んできた石は、この村の背後に控える、九州にまで伸びる巨大断層の存在と由来を教えてくれる。
地震は頻繁にこの列島を襲い、目の前に現れた不気味な断層に人々はおののき、美しい山々の頂は、地の底から顔を出した尖端なのだと気づかされる。隆起し続ける山脈は、この惑星が数十億年を経てなお生きている証しでもある。
地球を覆う陸と海。石を水が差配し、人間はその間(はざま)を利用して生き延び、文明を築いてきた。今日、人間の手になる造り物が有り余り、新たな地層と化して、人間が地史の対象となった。全ては人間が為してきたこと、その果てにある。
高山の極限に身体を追い込み、人を寄せ付けない不毛の砂漠と原生の地に踏み込んだ写真家の視覚には、砂に吸い込まれていく夢幻の都市と、漆黒に浮かぶ岩や樹が現れ、星々の宇宙が広がった。
異貌(いぼう)の建築家・毛綱毅曠(もづな きこう)は、風と水の思考を建築に吹き込み、時に宇宙の誕生に及んだ。ビッグバンや釈迦の掌を形に託したこの美術館で、すべては空(くう)からの現象ととらえる写真家・山内悠の作品が、それぞれをつないだ新たな空間を生成する。
アーティストトーク
日時:7月27日(土)14:00〜15:00
場所:当館アトリエ棟
*参加希望者は要入館料(申し込み不要)
山内悠
1977年兵庫県生まれ。自然の中に長期間滞在し、自然と人間の関係性から世界の根源的なありようを探求している。
14歳の時に独学で写真を始め、スタジオアシスタントを経て制作活動を本格化。富士山七合目にある山小屋に600日間滞在して雲上の来光の世界を撮り続け、雲の上での暮らしと体験から制作した作品『夜明け』(赤々舎) を2010年に発表。また、滞在していた山小屋の主人に焦点をあて、山での日々から人間が包含する内と外の対話を著した書籍『雲の上に住む人』(静山社) を2014年に刊行。続いて、5年をかけてモンゴル全土を巡り、各地で形成される時間や空間から多元的な世界構造などを探求した作品『惑星』(青幻舎) を2020年に発表した。屋久島に9年通い、単身で1ヶ月近く森の中で過ごしながら自然との距離感を探り続けた作品『自然JINEN』(青幻舎)を2023年に発表。長野県を拠点に国内外で作品発表を続けている。
- ギャラリー名
アンフォルメル中川村美術館
- 住所
長野県上伊那郡中川村大草2124番地
- 開館時間
10:00〜17:00(火・水曜日休館)入館料:400円
- アクセス
中央道 松川ICから30分
中央道 駒ケ根ICから30分 駒ケ岳スマートICから25分
JR飯田線 伊那大島駅下車 タクシー25分
JR飯田線 飯島駅下車タクシー20分- URL