#NEWS & REPORT テリ・ワイフェンバック/Terri Weifenbach写真展「Cloud Physics」

テリ・ワイフェンバック/Terri Weifenbach写真展「Cloud Physics」 が、ブリッツ･ギャラリーで開催される。

紹介文
「Cloud Physics」（雲物理学）は気象学・気候学と密接な関係があり、気候変動の研究と切り離すことができない大気物理学です。本作でワイフェンバックは自らの自然をテーマにした作品スタイルを、大気の中で起こる様々な気象現象と関連付け、地球上の雲と生物などとの複雑な関係性を、ヴィジュアルの形態や質感を通して探求しています。撮影は、自分の庭や世界のさまざまな場所で、あらゆる季節に、夜明けから夕暮まで行われました。数年かけて撮られた何千枚もの写真が、ウォレス・スティーブンスの詩を参考にして編集され、最終的に約7年の歳月をかけて、2020-21年の都市のロックダウン中に「Cloud Physics」は完成しました。彼女は「パンデミックが起こり、自然は我々よりも強いということが明らかになりました。」とコメントしています。

フォトブック巻末には全作品の撮影場所、撮影日に加え詳細な気象データ（降水量、気温、湿度、風速、気圧）が記載されています。彼女はフォトブック刊行に寄せて「私が言葉ではなく、写真で表現したいのは、気候変動によって失われるものは美しさだということです。」と記しています。

本作では、いま世界規模で起きている様々な気候変動問題が意識されています。地球温暖化による環境破壊の最前線を撮影する写真家は多くいます。彼女はあえて美しい理想化された自然を意識的に切り取って作品化しています。私たちはそれらのヴィジュアルを見るに、こんな美しい地球の風景や、精一杯生きている鳥や植物たちを大切にしないといけないと、頭ではなく直感的に心で理解できるのではないでしょうか。

本作のバックボーンとなっているのは、雲の起源、構造、粒子、太陽との関係などを研究・測定するためのアメリカ、オクラホマの施設「大気圧放射線測定施設(ARM)」で撮影された一連の写真作品です。ワイフェンバックは同作で、2015年にグッゲンハイム・フェローを受賞しています。彼女はARMの測定機器をポートレート写真の伝統を踏まえて撮影。大気現象を数値データ化するために設計されている機器が、まるで前衛的でエキゾチックな彫刻の様な存在として表現されています。そして彼女は、これらの装置で測定され数値化される雲のしくみを、自分のやり方（写真）で表現することを考えました。情報を知的に理解するのではなく「感じる」ことができればと願ったのです。

フォトブック「Cloud Physics」には、光、湿度、火、稲妻のわずかな変化、虹色の霧や蒸気などの織りなす気象現象を背景に、空、雲、水、植物、動物などの自然界や、都市などを撮影した作品が収録され、生きとし生けるもの、大地と空、太陽と雲の共同性が表現されています。ワイフェンバックの自然への愛着、その美しさと神秘性を讃えるまなざしに変わりはありませんが、同時に、自然の絶滅に直面したときの恐怖や心配が明らかにされています。
本展では、フォトブック「Cloud Physics」収録作から、デジタル・アーカイヴァル・プリント作品23点を展示する予定です。ギャラリーの展示レイアウトも彼女がディレクションしています。また同時に、iPhoneにより撮影された小サイズの新作約16点も紹介。フランス郊外のブルゴーニュ地方で撮影された美しい風景のスナップ作品です。

会場ではフォトブック「Cloud Physics」（ワイフェンバック直筆サイン入り）を数量限定で販売いたします。重いフォトブックはどうしても包装が過多になります。ブリッツ・ギャラリーでは環境を意識した本作のテーマ趣旨を尊重して、リサイクルコットン製のエコバックに入れて販売する予定です（一部の洋書専門店でもリサイクルコットン製エコバック入りで販売されます）。