八太栄里 個展 「風景の採集」が、MASATAKA CONTEMPORARYで開催される。
『風景の採集』
作品制作において、イメージの抽出の方法は作家によって異なる。
例えば、ひとつの絵を導くために習作のドローイングを何枚も手がけるという画家や同じモチーフをくり返し延々と描き続ける画家もいる。しかしそのようなプロセスは私の中に無い。「自分はドローイングが出来ない」と、とある作家の知り合いに相談したことがある。その返答は「ものを見たり写真を撮ったりする行為がドローイングに匹敵しているのではないか」というもので、私はその言葉に大いに納得し、それからiPhoneのカメラロールに保存する写真の数が増えた。
最近では作品制作に直接つながる場合もそうでない場合も、風景を写真におさめる行為を「風景の採集」と呼び、ライフワークのように行っている。これに関しては路上観察的な視点に大いに影響を受けているが、私の場合は対象物そのものに重点をあてるというより、自分でおさめた風景の共通点を探り、自身の潜在的な構図の取り方(ものの見方ともいえる)や、意識のポイントを明らかにしていく…そのような作品制作における自己分析のための採集なので、昨今盛り上がりを見せる路上観察シーンとは少し異なる地点にいる。
描くためには撮り集めたあらゆる写真から資料を取捨選択する必要があるが、その際に生じる『記憶の反復』が私にとってのイメージの抽出方法であるといえよう。
風景を「見たまま」ではない絵画に落とし込んでいくための必要なプロセスである。
以前、同会場で「浮かんでいる風景」という個展を行った際(2019年)は、集めた風景に一貫して「浮遊感」を見出し抽象的ではあるがひとつのまとまりとして提示した。
それは目に見えない人の気配というものの手がかりを自分なりに見つけるキーワードであったが、今回は暮らしの息遣いから実在と不在に至るまで、風景の採集を行う中でひとつの標的として浮かび上がる「気配」に、より接近して描いている。
八太栄里 ERI HATTA
http://ellie.egoism.jp/
1989年 京都府生まれ
2011年 大阪デザイナー専門学校 研究科イラストレーションコース卒業
<個展>
2020年
「在りし日の標」/ 芝田町画廊(大阪)
2019年
「経年のゴースト」/ GALLERY龍屋(愛知)
「浮かんでいる風景」/ MASATAKA CONTEMPORARY(東京)
2018年
「忘れようとしても思い出せない」/アトリエ「空白」(大阪)
「いたかもしれない」/GALLERY SPOON(大阪)
2017年
「気配、滅んでいくまで」/GALLERY龍屋(愛知)
「暮れる日」/AIR南山城村(京都)
「心象とドローイング」/GALLERY SPOON(大阪)
「エンドロール」/The Artcomplex Center of Tokyo(東京)
2016年
「Missing」/芝田町画廊(大阪)
2015年
「いつかの海のよう」/The Artcomplex Center of Tokyo(東京)
2014年
「昨日の光-記憶のゆくえ-」/芝田町画廊(大阪)
「昨日の光」 /The Artcomplex Center of Tokyo(東京)
- ギャラリー名
MASATAKA CONTEMPORARY
- 住所
東京都中央区日本橋3-2-9 三晶ビル B1F
- 開館時間
火〜土 12:00-19:00(日・月・祝日 閉廊)
- アクセス
東京メトロ 銀座線 日本橋駅 徒歩3分 JR 東京駅 徒歩8分
- URL