森下大輔 作品展「Dance with Blanks」が、PGIで開催される。
紹介文
森下は「存在」や「関係性」を核となるテーマにしています。事象を見つめ、シャッターを切り、暗室でプリントを制作、印画紙の上に二次元の視覚表現として立ち上がらせる、という変哲のない写真行為の繰り返しのなかで、写真を通して世界の原質に触れようとし、その直接性を追求し続けています。
自身と他者の関係性の中で、自らの内にある「空白」を意識するようになったという作者。当初は空虚や虚妄のようなネガティブなイメージを抱いていたましたが、それらが徐々に変化し、作品を制作する上で欠かせない要素と感じるようになったと言います。
「Dance with Blanks」では遠景と、近景の構図が並びます。遠景のランドスケープは、視線を誘うビル群や木々が却って、空や、建物の狭間などの空白を際立たせています。肉体と場面との距離が、そのまま世界への精神的な距離のように見え、見つめる人の存在を思わせます。翻って、視線をそのまま切り取ったかのような近景は、時に荒々しさも持って眼前に迫ります。瞬時には状況を把握し難いそれらのイメージでは、モノクロ作品のシャドウ部分とハイライト部分が絶妙な効果を成し、画面は被写体で埋まっているものの、まるで空白が存在するような印象を与えます。それは、見る人を迷わせ、「空白」の中に置き去るかのようです。
本展のタイトル「Dance with Blanks」にあるBlank(空白)は、仏教における「空(くう)」という概念に通じるものがあります。全ては運動の中にあるという「空」の考え方は、「存在」そのものをテーマに据える森下にとって深く感得できるものでした。写真家として、空白とともにありながら、印画紙の上に新たな空間を創造していきたい、と語っています。
ステートメント
たとえ世界が単なる像や触感に過ぎないとしても、私たちは一つ一つの現実について、そこに宿った名前や意味が真実であるとして日々を生きている。
異国の歌を憶えること。遠くの山が三つの名を持つこと。飛ぶ鳥と空が交わること。
鏡を見るように、月を見ること。重力に触れること。葉脈と血管が繋がること。雪が白く燃えること。
名前や意味は、私たち一人一人の活動の内でその都度生起する。つまり私たちはいつも、新しい世界を創出する基点なのだ。そしてそこから生まれるもののなかで、世界にも私たち自身にも還元できないものが自由である。自由は、幸福とともにあることだろう。
空白と踊る。空白を踊れ。空白を満たすことなく。
森下大輔
- ギャラリー名
PGI
- 住所
東京都港区東麻布2-3-4 TKBビル3F
- 開館時間
月〜土/11:00〜18:00(日・祝日 展示のない土曜日 4月29日〜5月5日休廊)
- アクセス
東京メトロ 神谷町駅 徒歩10分 都営大江戸線 赤羽橋駅 徒歩4分
- URL