野口やよい写真展「名づけられたものたち」が、Roonee 247 fine artsで開催される。
ステートメント
数年前、箱根の山でバスを待つ間、足元に落ちていた朴の葉になにげなくカメラを向けた。再生したその画像を見て驚いた。侵しがたい何かが映っていたのだ。ただの葉だ。しかも、散った後の葉。だがそれは土に戻るまでの道を、なおも凜として〈生きて〉いた。それから落ち葉を撮影しに箱根や高尾などに足しげく通いだした。
「名づけられた葉」という新川和江の詩がある。「わたしも いちまいの葉にすぎないけれど(中略)わたしは呼ばれる わたしだけの名で」。ファインダー越しに落ち葉を見ながら、私は同時に「名づけられた葉」を見ていたのだと思う。自分も含めて、この世にごまんといる、ありふれた人間たち。何のために生きるのか。何のために写真を撮るのか。
新川の詩はつづく。「だからわたし 考えなければならない 誰のまねでもない 葉脈の走らせ方を 刻みのいれ方を せいいっぱい緑をかがやかせて うつくしく散る法を」。
落ち葉にはそれぞれ固有の色や形、朽ち方、佇まいがあった。百枚、千枚と撮影するうちに、すとんと胸に落ちるものがあった。〈いのちはどれも美しい〉と。
自分以外の何者にもならなくていい。精一杯生きればいい。-囁くようだったその声は、シャッターを切るたび大きくなっていった。
- ギャラリー名
Roonee 247 fine arts
- 住所
東京都中央区日本橋小伝馬町17-9
さとうビルB館4F- 開館時間
12:00-19:00 最終日16:00閉館 / 月曜日休館
- アクセス
JR 総武線 馬喰町駅 徒歩3分
都営地下鉄新宿線 馬喰横山駅 徒歩3分- URL