木村華子 作品展 SIGNS FOR [ ]が、Sony Imaging Galleryで開催される。
ステートメント
街を歩いていると、ある時から何も描かれていない看板が目に留まるようになった。
堂々と頭上に掲げられた意味を持たない空白。
それは「全てのものは存在意義がなくとも、そこに存在している」ということを人々に知らしめるためのモニュメントのように見えた。
本作はそのような頭上の空白を切り出し目線高に設置して、青い光で照らすことによって私がそれらから得たメッセージをより明確に可視化する試みである。
木村華子
“SIGNS FOR [ ]” によせて
木村華子の作品を初めて見たのは「御苗場」という写真コンペティションの会場だったと思う。
鮮やかな色が特徴のスナップショットだった。
ちょうど大学を卒業し、カメラスタジオに入社し、コマーシャルの仕事をしながらのファインアートでの作品制作も始めたタイミングだったようだ。
コマーシャルの仕事とファインアート作品の両立は意外と難しい。同じ写真でも最終的なゴールの向きが全く逆だからだ。
あくまでもクライアントの意向をヴィジュアル化するコマーシャルと、作家個人の思いを写真のするのは、撮影するという行為だけが一緒で、重きをおくポイントが全く違うのだ。
木村はそのような状況を楽しみながら制作しているようだ。
アジアのアーティストを対象としたイベント「Unknown Asia」でグランプリを取った”SIGN FOR [ ]”では、何も書かれていないビルボードの堂々とした存在感を捉え、それを照らす青いネオン管を画面に加えている。
「【意味があること/ないこと】の間を何も描かれていない看板を通して見つめること、それ自体の存続は、意味が有る無しには左右されない。」という哲学的なコンセプトだ。
加えられるネオンの青は、その色の光が精神の高ぶりを抑える作用があるところからきているそうだ。
そういった説明を聞かなくとも、トマソン的な意味のない空虚感と不思議な明るさが印象的で、強く頭に作品イメージが残り、私には今の時代のポートレイトのように見えた。
また、それは「今のわたしのポートレイト」とも見える。
トマソンと呼ぶにはあまりにクールでシリアスなそのポートレイトは、青いライトに照らし出されて、つかみどころがない。
つかもうとするとスルリと抜けていくようなこのイメージから、今後どう展開するのか楽しみだ。
綾 智佳(The Third Gallery Aya)
木村華子
京都府出身、大阪市在住。同志社大学文学部美学芸術学科卒業。
商業フォトグラファーとして広告や雑誌などで撮影する傍、2011年頃から自身のライフワークとして作品制作を開始。
主に「存在する/存在していない」などの両極端と捉えられている事象の間に横たわる広大なグレーゾーンに触れることをステイトメントの中心に据え、コンセプチュアルな作品を展開する。
また近年は写真表現だけに留まらず立体作品、コラージュ、ドローイング、インスタレーションなども手がけている。
- ギャラリー名
Sony Imaging Gallery
- 住所
東京都中央区銀座5-8-1 銀座プレイス6階
- 開館時間
11:00~18:00 定休日なし(当面の間、18時に閉館)
- アクセス
東京メトロ 銀座線 銀座駅 徒歩1分
- URL