本間理恵子写真展「此処」が、Art Gallery M84で開催される。
開催概要
今回の写真展は、Art Gallery M84の第173回目の展示として実施する個展である。
写真展『此処』は、「cube」と「rooted」の2シリーズで構成されている。
「cube」では、複雑な内面を持つ被写体と、外側の世界との関わりを映し出そうとしている。この世界には多くの情報が溢れている。ネガティブな感情を引き起こすニュースや、匿名の悪意、言葉の凶器。それらに触れるとき、自分の殻に閉じこもり、現実から逃げ出したくなる。誰かと繋がりたいという願望と、それを叶えられない隔たりから生まれる葛藤。現実からの逃避が、このシリーズの中心的なテーマである。
作品に登場するガラスの箱は、内側を人の心、外側を現実世界とみなし、その二つを隔てる境界を表している。一見すると孤独で閉塞的なこの箱は、同時に、ストレスの多い現実から一時的に逃げ込むことのできる「心のシェルター」でもある。
自分自身の弱さを受け入れることから生まれたこの作品には、もし同じように傷ついた人がいるなら、その心をそっと守る場所であってほしいという願いが込められている。
「rooted」は、人として生きる時間が終わったあとも、別のかたちでこの世界の一部として存在し続けることができたなら——という想像から生まれたシリーズである。人間という輪郭を静かに離れ、ひとつの生命から、より大きな生命の循環へと回帰していくことをめぐる物語でもある。
このシリーズでは、植物、流木、砂、草むらなど、自然の中に裸の身体を置いている。衣服を脱ぎ、社会的な情報を失った身体は、次第にその輪郭を曖昧にし、人と自然を隔てていた境界がほどけていく。
もし人生の終わりに、植物になるという未来を選べるとしたら。土に還るのではなく、そこに根を下ろし、身体は少しずつ土や砂に沈み、枝や葉に覆われ、やがて風景の一部になっていく。それは消滅ではなく、人間というかたちを離れ、かつて自分もその一部であった大きな生命の循環へと還っていくイメージである。
ステートメント
ガラスの箱の内側と外側。
衣服をまとう身体と、何も身につけず草木の中にある身体。
私はこれまで、人と世界のあいだにある境界を撮ってきた。
cubeは、現実から身を守るための小さな避難所として始まった。
けれど撮り続けるうちに、その境界は、ただ閉じるためのものではなく、
外の世界へとほどけていくためのものでもあるように思えてきた。
いつか、人生の終わりに、植物になれる道を選べたらと思う。
身体の輪郭が失われ、草や土、光や風の一部になっていくこと。
ここに写るのは、人であることと、自然へ還っていくこと。
そのあわいにある身体である。
『此処』は、閉じこもる場所であり、
ほどけていく場所でもある。
本間理恵子/Rieko Honma
新潟市在住。2010年より独学で写真による作品制作を始める。逃避と境界をテーマに、現実と非現実のあわいにある、どこか奇妙で夢のような世界を表現している。
作品は、伊坂幸太郎著『バイバイ、ブラックバード』新装版(双葉文庫、2021年)、李琴峰著『星月夜』(集英社、2020年)など、小説の装幀にも採用されている。月刊『アートコレクターズ』2026年7月号 巻頭特集「ヌード エロスの視線」に掲載。
https://www.instagram.com/riekohonma/

© Rieko Honma

© Rieko Honma

© Rieko Honma
- ギャラリー名
Art Gallery M84
- 住所
東京都中央区銀座4-11-3 ウインド銀座ビル5階
- 開館時間
10:30~18:30(最終日17:00まで)入場料 : 500円(成人限定)
- アクセス
東京メトロ 日比谷線 東銀座駅 徒歩1分
- URL








