岡本明才 個展「ピンホールカメラ・エクステンデッド」が、Kanzan galleryで開催されている。
開催概要
岡本明才(1971年生まれ、高知市在住)とピンホールカメラとの出会いは、2006年に遡ります。岡本は、その数年前から高知市のユニークなアートシーンと接点を持ち、自己流で写真作品の制作を行っていました。あるコンペに参加するために複数の時間を1枚の写真に表現しようとしたところうまくいかず、Googleで検索を繰り返すうちに「ピンホールカメラ」の存在を知ります。密閉された箱状のものに穴を開けるだけでカメラになる――半信半疑で、軽トラックの荷台に幅・高さ約190cmの巨大なピンホールカメラを作り、その内部に42枚の印画紙を貼り付け、時間をずらしながら撮影を行い希望通りの作品を制作することに成功します。以降は、部屋や段ボールをカメラにする試み、5m四方の超巨大カメラや自転車に付属した移動式カメラでの制作、そして、現在は建物の既存の開口部を利用した撮影に挑戦しています。
「私の制作は『写す』ことから始まるのではなく、装置を作ること、つまり『写る仕組み』そのものを構築する行為から始まる」と岡本は言います。それは、「高知の九龍城」とも呼ばれる日本屈指のセルフビルドマンションであり、さらに住民たちが暮らしながら改造していくことで変化し続ける沢田マンションで暮らした経験を礎石とし、「思いついたらまず手を動かしてみる」という徹底した実践主義に貫かれています。
一方で、岡本の関心は、優れた装置や仕組みを開発することではなく、カメラを「光の現象を観察し、再構成するための実験装置」としてとらえ、その現象を可視化、つまり写真にすることで「『見えるとは何か』『写るとは何か』」を問い直すことにあります。
作品に、ピンホールカメラの「穴」を含めていることも風景を写す構造を可視化するためであり、写す(撮影者)・写される(被写体)関係性にも示唆を与えます。また、岡本にとって、ピンホールカメラでの制作は古典技法への憧憬や回帰とは無縁であり、デジタルカメラを積極的に利用し、双方の特性を活かしていることも特徴のひとつと言えます。シンプルな構造を多様な方向にエクステンド(拡張)させ、「見えること」「写ること」への問いかけを続ける岡本明才の軌跡を辿る展覧会となります。
ステートメント
私たちは、見えているものを疑うことなく、「世界はこういうものだ」と決めてしまう。けれど、それは本当に「見た」のだろうか。ただ光の強さや向きに支配され、「見せられたもの」を見ているだけではないだろうか。ピンホールカメラは、光が直進するという単純な原理をそのまま形にした装置です。そこには、レンズによる補正も、意図的な選択もない。ただ、光が穴を通り、世界を結ぶ、それだけの仕組みです。私はこの装置を拡張し、風景を見るのではなく、「見るという行為そのものが、いかに世界を形づくっているか」を問う場をつくっています。どこまでが現実で、どこからが像なのか、見えているはすのものが、なぜ見えないまま通り過ぎていくのか。それは、「見えていない」のではなく、見ていないだけかもしれない。世界は、いつでもそこにある。問題は、「自分が何をどう見ようとしているのか」にあるのです。
岡本明才/Meisai Okamoto
1971年生まれ、高知県在住。
https://meisaiokamoto.com
主な個展
2018年 「カメラオブスキュラ展」TAO gallery (高知)
2017年 「A 3-DAY BUILDING PHOTO EXHIBITION」南はりまやビルヂング(高知)
2014年 「THE MOST BEAUTIFUL LIGHT NEXT TO THE DARK」沢田マンションギャラリーROOM38(高知)
2014年 「IN THE PINHOLE」ブックギャラリーポポタム(東京)
2013年 「SKETCH OF SUN」沢田マンションギャラリーROOM38(高知)
2013年 「SKETCH OF SUN」ISE CULTURAL FOUNDATION(ニューヨーク)
2012年 「CAMERA」 新宿眼科画廊(東京)
2009年 「VU JA DE」 グラフィティ(高知)

- ギャラリー名
Kanzan gallery
- 住所
東京都千代田区東神田1-3-4 KTビル2F
- 開館時間
[火曜-土曜]12:00〜19:00[日曜]12:00〜17:00 月曜定休/入場無料
- アクセス
JR 馬喰町 徒歩3分 都営新宿線 馬喰横山駅 徒歩4分
- URL