嶋田篤人写真展「そこ一里」が、THE BOOK ENDで開催される。
ステートメント
故郷の房総半島で撮影した写真を、繰り返し発表している。
今回は過去に発表したプリント群の総括となるような展示を目指した。しかしここに選定できたものは総括と言うには拙く、どこか足らないという気持ちが拭えない。思えばこの足らなさを、常に私は感じ続けている。
私が撮った光景はこの土地の断片にすぎず、そこに流れる連続的な時間からも断絶している。こうしている間にも房総には時間が流れ、様々な光景が広がっているはずだ。その全てに立ち会い、個々を多角的に認識することは出来ない。
しかしその断片からなる写真を眼前にした時、まるで行間のような世界が私の内に立ち現れる。その世界は足らなさを補完するものではあり得ないが、私はそのどこでもない場所に寄る辺を感じる。
ここにありのままの房総半島は無く、あくまで「私が見た」という主観を越え出ることはない。
しかしそれは断片的ではあるが、着実にある時ある場所の記録にもなり得る。
この満たされることのない足らなさへ、受容しながらも抗い、私は房総を通して写真と向き合っていきたい。
その道はまるで「そこ一里」※のように、どこまでも繰り返される問答に似ている。
※房総で現地民に道のりを尋ねると「すぐそこ、あと一里だ」と答えるが、いくら行けどもその問答の繰り返しでなかなか到着しないこと。かつて浮世絵師の歌川広重は房総を旅し「菜の花や 今日も上総のそこ一里」と詠み、また夏目漱石は小説『こころ』で「我々は暑い日に射られながら、苦しい思いをして、上総のそこ一里に騙されながら、うんうん歩きました」と綴っている。
嶋田篤人/Atsuto Shimada
1989年千葉県生まれ。2011年東京工芸大学芸術学部写真学科修了。
2011年から撮影地を房総半島にしぼり、自身で現像・プリントをしたゼラチンシルバープリントの作品を制作。現在の技術とスタイルが確立した2019年より「そこ一里」というタイトルで発表を繰り返している。
【個展】
2024年「そこ一里(#02)」金柑画廊、東京
2022年「そこ一里(#01)」金柑画廊、東京
2021年「そこ一里(#00)」リコーイメージングスクエア、東京
2019年「知る由」Alt_Medium、東京
2018年「待つ」Alt_Medium、東京
2016年「思わぬ壺」Alt_Medium、東京
2016年「堰を切らぬ廐」Pond Gallery、東京




- ギャラリー名
THE BOOK END
- 住所
兵庫県神戸市中央区海岸通3-1-5 海岸ビルヂング 302
- 開館時間
11:00〜18:00(火・水曜定休)入場無料
- アクセス
JR 元町駅 徒歩5分
- URL