川田喜久治 作品展「影のなかの陰」が、PGIで開催される。
ステートメント
インスタグラムに注目する。新しいコミュニケーションを秘めたこの方法も一度は試してみたかった。アップロードをはじめて二年、何の制約もない時間のプラットホームにたったが、声も出ないぐらい早く時間が過ぎていった。時折、見知らぬ蔭が音もなく目のまえをよぎる。
季節や時代が落とす陰の不明には背筋が寒くなるし、現実か、夢かとおもえるような光景のなかを迷走してきた。そして、突然の同時性に唖然と立ち止まることもしばし。まぎれもない自分が翳のなかでイメージという誘拐事件に巻き込まれている。しかも、あのハート印の「いいね」を繰り返す見えない人たちの呪文のような声援は、日々の光の謎の奥へと探索をうながしてくる。
冬に痩せた木々は光の微笑みをかりてまぼろしへと成長をつづけ、都市のガラス窓が吸い込む夏の光も過剰な影のなかで「そのイメージはあなたのカゲですよ」とささやく。雲や風の翳は色彩を捨てながら次元を変え、古くなった電線の波打つ陰もまた不協和音で地表を覆ってしまう。夜、カゲになった群衆は巧妙な擬態で名残りを唄いながらインベーダーとともに空に消えてゆく。
いままで影身していた幾多の翳は顔をもたない道化師のように素早く現実と入れ変わって舞台に現れる。陰の正体に近づこうとする写真は翳のなかで終わりのない舞を舞い続けているのだ。誘拐犯のイメージというかげには潮時という終わりのときがないらしい。
川田喜久治
- ギャラリー名
PGI
- 住所
東京都港区東麻布2-3-4 TKBビル3F
- 開館時間
月〜金/11:00-19:00 土/11:00-18:00 日・祝日 展示のない土曜日休館
- アクセス
東京メトロ 神谷町駅 徒歩10分 都営大江戸線 赤羽橋駅 徒歩7分
- URL