岩根 愛 個展「ARMS」が、KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHYで開催される。
紹介文
岩根愛は、ハワイと福島という一見結びつきの見当たらない土地に「BON DANCE (ボンダンス) 」を通じた深いつながりの歴史を見出し、12年という長い年月をかけた壮大なフィールドワークを、作品集『KIPUKA』に結実させました。本展では、ここから新たに派生した「新緑」をテーマにした未発表作品〈ARMS〉を展示いたします。
ステートメント
ARMS—顔のない人
ハワイ島サウスポイントの、冬の雨季の午後だった。連雨のあとに現れた、米国最南端の太陽の光に、地中から目を覚ました草が蛍光色に輝き、遮るもののない轟音の貿易風に揺れていた。岬の先へ、一面に輝く蛍光グリーンの海の中を歩きながら、初めて見るその色が、体に染み渡っていくようだった。常夏ハワイの新緑の季節は、冬だったのだ。
やがて東京の春に、サウスポイントのグリーンが現れることに気がついた。街路樹の先端に現れるその色は、これまでの私には見えていなかったのだ。拡張した視覚が求めるまま、私はあのグリーンを探した。新緑のとき、雨が降った翌日の、正午の真上の光の中、出て来たばかりの腕が、私に伸びてきた。
私に向かってくる新緑と出会うそのとき、既視感があった。
今はジャングルとなり忘れられた、ハワイのサトウキビ農場跡地を歩き、ここだ、墓地を見つけた、とわかる、最初の墓石と出会うときである。
ハイウエイの橋桁から降りて、道なきヤブの中を進むと、ふとした気配があって、ぷつっとクモの糸をちぎってしまった感触に視線を落とすと、草に埋もれた墓石がある。貯水タンクのすぐ横に、荒れ果てた草地に、溶岩流の中に、それらはふと鎮座している。刻印された文字が判別できない苔むした墓石は、人型の輪郭を纏って私を見つける。
出て来たばかりの新しい命と、ひっそりと隠れていた命の痕跡、正反対にも見えるこの二つの対象が、ふと自分に見えるとき、それらは、顔のない人が力強く腕をつき伸ばしてくるように、同じように私に向かってくるのだ。
岩根 愛
トークイベント
「石内都 × 岩根愛 対談」
日時:2019年6月7日(金)19:30~20:45 (19:15受付開始)
会場:KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHY
東京都港区西麻布2-7-5-5F (tel 03-5843-9128)
登壇者:石内都(写真家)岩根愛(写真家)
定員:40名(先着25名着席)
料金:予約 1,000円/当日 1,500円(ワンドリンク付)
予約フォーム → https://bit.ly/2vIXYLa(フォームにて予約の方は1,000円)
- ギャラリー名
KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHY
- 住所
東京都港区西麻布2-7-5 ハウス西麻布 5F
- 開館時間
13:00〜20:00(火〜金曜日)/12:00〜19:00(土曜日)
(日・月・祝休廊)※5月25日、6月1日(12:00〜17:00)- アクセス
東京メトロ 表参道駅 徒歩10分/六本木駅 徒歩13分
- URL