倉谷 卓 個展「through glass」が、KANA KAWANISHI GALLERYで開催される。
開催概要
本展で初発表される新作〈through glass〉は、作家がネットオークションで購入した1940年代頃の写真乾板(写真術の感光材料の一種で、写真乳剤1を無色透明のガラス板に塗布したもの。像は白黒で、明暗が反転している。ガラス乾板とも呼ばれる)を撮影したシリーズです。入手したものの中から傷や汚れがあるものを選び、傷や汚れが見えるように撮影し、ネガポジ反転した後に、AIを用いてカラー化されています。
「写真に写らなかったものや、(写真が経過した)時間を想像することが重要」であると語る倉谷にとって、写真についた「傷や汚れ」は、写真に写されたものと同等あるいはそれ以上の意味を持ちます。それらの傷や汚れは、写真に写らなかったもの、あるいは写真が超えてきた時間を想像するためのトリガーとなり得るからです。ネガポジ反転、カラー化の過程は、倉谷にとって、写らなかったもの・時間を【現像】したいという意思の表れでもあります。
同シリーズは「F」と「A」の二種類に分かれており、元の写真画像を活かしたFの作品群と、ほぼ傷や汚れのみのAの作品群があります。
Fは、傷や汚れによって元の写真画像が不明瞭になり、カラー化がうまくいかずに被写体にもやがかかったようなイメージとなっており、約80年前という撮影された当時との時間の距離感が鑑賞者との間に現出するかのようでもあります。
一方Aには、ナンバリングに加えて、元の写真画像をAIに解析させて付けたタイトルが付随し、抽象的なイメージとなんとなく状況を推察出来るようなタイトルは、画像と自動生成されたタイトルがマッチするとも全く的外れであるとも言えそうで、鑑賞者の想像力を刺激します。
ステートメント
選ばれたフレームの外側、一瞬のシャッターの前後にあったものを想像したい。
写真は無数に増えていくけれど、写されたものより、写されなかったものの方が多いのだから。
倉谷 卓(くらや・たかし)
1984年山形県生まれ、東京在住。2005年、日本写真芸術専門学校卒業。2011年、塩竈フォトフェスティバル写真賞大賞。2013年と2014年に、TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD審査員賞受賞。近年の個展に、「I was you, you will be me」(Art-Space TARN、2022)、「アリス、眠っているのか?」(Hasu no hana、2019)、「 Ghost’s Drive」(ニコンサロン銀座・大阪、2018)など。グループ展に「My Body, Your Body, Their Body」(KANA KAWANISHI GALLERY、2019)、「Pets Friends Forever, 2017-2018」(Deutsches Hygiene-Museum)、「新章風景#2」(東京都美術館、2017)など。写真集に『カーテンを開けて/A Glimmer of Light』(塩竈フォトフェスティバル、2013)。
- ギャラリー名
KANA KAWANISHI GALLERY
- 住所
東京都江東区白河4-7-6
- 開館時間
水曜日〜土曜日 13:00〜18:00(日・月・火・祝休廊)
- アクセス
東京メトロ 半蔵門線 清澄白河駅 徒歩12分
- URL