二藤建人 x 馬嘉豪「HOLMGANG」が、TAV GALLERYで開催される。
開催概要
二藤は触れえぬ他者との境界や、重量を可視化する表現者としてしられ彫刻作品を起点としながら写真や映像、インスタレーションなど幅広い表現方法で作品制作に取り組んでいる作家であり、TAV GALLERYには2018年に開催された美術家・高田冬彦との二人展「不可能な人」(2018)以降、約4年ぶりの出展となります。主な展覧会に「In a Grove」(LEESAYA、2020)、「ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術」(水戸芸術館現代美術ギャラリー、2023)、「あいちトリエンナーレ2016」(東岡崎駅ビル3F、2016)など。また、近年では舞台美術のディレクションや、自らもパフォーマンス公演に参加するなど、彫刻と身体表現の関係性を積極的に模索しています。
馬嘉豪は兵馬俑が発掘された中国西安出身の作家であり、膨大な人口数の下に潜む暴力性や違和感、アクチュアリティとその行方を人型の建築模型用のフィギアに圧縮した彫刻表現を行うアーティストとして知られています。2015年に来日以降、第4回CAF賞入選、第22回岡本太郎現代芸術賞入選。主な個展に、社会情勢を一文字で要約した「霾(バイ)」「燎(リャオ)」「諫(カン) 」(TAV GALLERY、東京) シリーズの個展など。公私共に影響関係にあったふたりが、初となる共作の新作映像作品を発表いたします。
作品の舞台はボーダレスな自然空間。彫刻表現の基礎的なメディウムである約150キロの水粘土で自己陶酔的な理想の姿に武装した二人は、お互いの粘土を奪い合い、飛ばしあい、一方が動かなくなるまで抗争を続けます。メイクシーンでは鏡の前でそれぞれの理想となる「変身」の形をメイクアップアーティストに告げつつ、私的な想いが交錯し、当人たちにも気づく事のなかった実存の姿があらわになり、次第に風景と同化していく二人は、歩幅と呼吸を合わせつつ、非合理な暴力を発露し合ったのちに、一つの塊へと物質化していきます。当作品は「奪い、奪われる」といった価値観の上に成り立つ営みを身体化し、反省的に検証することを目指して二藤建人によって創案されました。テーマの性質故か、随所でトキシック・マスキュリニティ(有害な男性性)とまで言われるようになった精神を根深く享受してきた世代の秘められた欲望が見え隠れします。男性同盟による評価を中心とした近代社会の歴史を反省すると同時に、マスキュリニティと「男同士の絆」への考察が促されます。闘争に内在する欲望の発露は、今日のパターナリズムの転倒の問題に通じ、いわずもがな世界的な紛争状況へ呼応し、多くの鑑賞者の”立ち位置”を揺さぶるきっかけとなるでしょう。初の試みとなる気鋭彫刻家、二藤建人と馬嘉豪の抗争の先に産まれた新たな絆に、是非ご注目ください。
佐藤栄祐(TAV GALLERY)
制作協力 : 山本英、伊藤快斗、上田理絵、長島奏理
協力:LEESAYA
二藤健人
1986年、埼玉県生まれ。同県在住。言語化し理解する過程で取りこぼしてしまう感情や感覚、現代において獲得しにくい「実感」を、自身の身体によって過剰なまでに体験することで追及する。代表作には、自身が一枚布の雑巾となり世界各地の街を拭き上げながら全身で都市を知覚し、その身に蓄積させていく「雑巾男」や、他者の重さを真下から両足で踏み締める装置「誰かの重さを踏みしめる」などがある。
【主な個展】
2022年 「REVOLVING GRAVITY」gallery N (愛知)
2021年 「私と世界を隔つもの」 LEESAYA(東京)
2020年 「catch the air」gallery N (愛知)
2018年 「ヘルニア」第1部《労働のエステティクス》gallery N 神田社宅(東京)
第2部《自由な落下のために》gallery N (愛知)
2017年 「たゝ゛吹き抜ける風」 Art Center Ongoing(東京)
2017年 「凍てつく雲のふわふわ」 gallery N 神田社宅(東京)
2015年 「私の愛は私の重さである。」gallery N (愛知)
2014年 「傘の内側に降る雨」 Antenna Media (京都)
2013年 「山頂の谷底に触れる」 gallery N (愛知)
2012年 「全身を以て認めざるを得ない|Red Porcupines」GALLERY TERRA TOKYO(東京)
2012年 「不測に向かって放り込む」トーキョーワンダーサイト本郷 (東京)
馬 嘉豪(MA Jiahao)
1996年生まれ。中華人民共和国西安出身。埼玉を拠点に活動。兵馬俑(へいばよう)を彷彿とさせる建築模型用の人体フィギアを圧縮させた彫刻作品を数多く発表。社会主義制度の問題を問う現代美術家の馬嘉豪(マ・ジャホウ)は異邦人として日本国のあり方を俯瞰的に読み解き、社会に生きる人々の共存の可能性を問い続ける。主な個展に「霾(PM2.5)」TAV GALLERY(東京)「Involution society」ARTDYNE GALLERY (東京)など。
【主な個展】
2022年 「諌」 TAV GALLERY
2022年 「シャトレーナガシマ」 ART DYNE
2021年 「Involution society」 ART DYNE
2020年 「燎」 TAV GALLERY
2018年 「霾(PM2.5)」 TAV GALLERY
- ギャラリー名
TAV GALLERY
- 住所
東京都港区西麻布2-7-5 ハウス西麻布4F
- 開館時間
13:00〜20:00(月・火休廊)
- アクセス
東京メトロ 千代田線 表参道駅 徒歩10分(A5出口)
- URL