TOPNEWS & REPORT佐藤信太郎作品展「Boundaries」

#NEWS & REPORT 佐藤信太郎作品展「Boundaries」

2023年3月23日〜5月13日

2023.02.24

佐藤信太郎作品展「Boundaries」

佐藤信太郎作品展「Boundaries」が、PGIで開催される。

紹介文
佐藤は、都市形成の基盤となる地面をテーマとした初期作品「Geography」から始まり、その後、歓楽街の様相を捉えた「夜光」、非常階段の上から街を俯瞰してみる「非常階段東京」、スカイツリーの建設過程において変貌する周辺地域の歴史を見つめた「東京|天空樹 Risen in the East」と、生き物のように変貌し続ける都市、東京を記録してきました。
主に東京の東側をテーマにしてきたこれまでの作品から、前作「The Origin of Tokyo」では東京の中心である皇居を舞台に、東京という都市が持つ土地の歴史や記憶、人の営みによってもたらされた特有の雰囲気を捉える試みをおこないました。この撮影のなかで、かつて江戸城が海に面しており、東京がその海と陸の境界から生まれ、発展したことに気づいた佐藤は、これをきっかけに「都市の境界について考えるようになった」と語っています。そして、自身の原点でもある、都市を形成する土台となっている土地そのものに再び着目します。

本作「Boundaries」は、かつて海と陸の境界だった崖が舞台です。草木が生い茂り鬱蒼とした境界独特の雰囲気を漂わせ、一見森のようでありながら、実際は垂直に迫り上がる崖が数キロにわたり続く場所を、佐藤作品の特徴である、細部へのこだわりと緻密な描写で、一つ一つ丁寧に記録していきます。撮影した写真をパソコン上で繋ぎ合わせ、一つのイメージを作り上げ、更に草木や花を幾層にも重ね合わせることで時間と空間が複雑に積み重なった多層的な空間が現れています。
「Geography」では、平面を平面的に撮ることで多角的な視点をもたらし、様々なイメージの喚起をもたらしましたが、 この複雑なレイヤーの重なりは時空間の揺らぎをもたらし、「境界を写すというより、境界を作るという方が近いかもしれない」と語るように、異質でありながら圧倒的な存在感を放っています。
本展ではアーカイバルピグメントプリント約20点を展示致します。

ステートメント
2016年に皇居周辺を撮影した際、そこがかつて海に面した境界的な場所で、そこから江戸/東京が発展していったことに興味を持ち、都市の境界について考えるようになった。私の住むエリアは起伏に富んだ地形で崖のような切り立った場所が多く、かつて東京湾に面し、海と陸との境界だった崖が数キロにわたって存在している。このシリーズでは主にその場所を題材にしている。崖といっても現在は様々な草木が生い茂り、一見すると森のようにも見えるが、奥行きを欠き平面的で、垂直に迫り上がっていく森だ。そこには境界性の強い場所に特有な独特の雰囲気が漂っているように感じる。その感覚を裏付けるように、大きな神社や鳥居、祠、お墓のような、この世とあの世、生と死といった境界を象徴するものが点在している。

最初は境界のポートレートを撮るように、1点1点撮影しプリントしていった。ある時、白枠を切り落とした数枚のプリントを無造作に投げ出していたところ、プリントがずれ重なって作り出す空間に気づいた。違う時間に違う場所で撮影されたプリント同士が干渉しあって美しい時空間を作りあげている。意識的に作られた1枚の写真に対して無意識に現れたこの周縁の美に強く惹きつけられた。複数の写真が干渉しあって作り出すこの時空間をコンピュータで再現してみたらどうなるか、といった実験からこのシリーズは生まれている。最初は複数のプリントの端がずれて重なるイメージで、直線的に画像データを切り抜き重ね合わせていたが、途中から木の葉や枝、草花などのすでにある形をレディメイドとしてそのまま利用しレイヤーを重ね、組み替えていく方法に変化していった。コラージュの一種であるかもしれないが、リコンバイン(recombine 組み替える)という言葉がより適切であると思う。コラージュでは、イメージが積み上げられ徐々に全体が完成していくが、リコンバインは制限された種類の各データの組み替えによる作業で、全体のイメージが突然予想もしない形で変化することがしばしば起こる。

平面上で、異なる場所や季節は混じり合い、互いに干渉し、上とも下ともいえないゆらぎをはらんだ複雑な時空間が生まれていく。それは感情移入しやすい一般的な写真の遠近法とは違った多層的、多時間的でリアルな時空間であり、感情移入を拒む画像は写真の物質性をあらわにする。

佐藤信太郎
1969年、東京生まれ。1992年、東京綜合写真専門学校卒業。1995年に早稲田大学第一文学部を卒業し共同通信社に入社。2002年よりフリーの写真家として活動する。「土地の持つ性格や歴史、人の営みと、そこから現れる特有の雰囲気(ゲニウス・ロキ、地霊)」をテーマに、生き物のように変貌する都市を捉えた独特の作品を発表している。2009 年に日本写真協会賞新人賞、2012年に林忠彦賞を受賞。
主な展覧会に『夜光』(PGI 2014)、『The Spirit of the Place』(キヤノンギャラリーS 2014)、『東京・TOKYO 日本の新進作家 vol.13』(東京都写真美術館 2016)、『Civilization: The Way We live Now』国立現代美術館(ソウル 2018 他世界巡回展)、『The Origin of Tokyo』(PGI 2019)など、国内外で個展、グループ展を多数開催。写真集に『夜光』、『東京|天空樹 Risen in the East』、『非常階段東京 TOKYO TWILIGHT ZONE』(いずれも青幻舎)、『Geography』(ふげん社)などがある。

#73 ©SATO Shintaro, courtesy of PGI

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ギャラリー名

PGI

住所

東京都港区東麻布2-3-4 TKBビル3F

開館時間

月~土 11:00~18:00 日・祝日休廊 入場無料

アクセス

東京メトロ 神谷町駅 徒歩10分 都営大江戸線 赤羽橋駅 徒歩7分

URL

https://www.pgi.ac/

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