濱田祐史作品展「Incidence and Reflection」が、PGIで開催される。
展覧会概要
濱田祐史の最新作となる「Incidence and Reflection(入射と反射)」を展示いたします。
本作では、現代の版画で使用されているPS版(Pre-Sensitized Plate)というアルミ版の、塗布されたフォトレジストという組成物に紫外線が反応し硬化することでネガ像やポジ像の版ができるという特性を利用し、紫外光が結ぶ像を捉えています。
具体的には、8×10や4×5、6×6など中判から大判のサイズに切り出したPS版をフィルムの代わりにカメラにセットし撮影するという方法です。晴れた日でも90分以上の露光が必要だったりと、使い慣れたフィルムでの撮影とは条件が大きく異なります。 本展ではこのアルミ版に露光された作品、およそ60点をご覧いただきます。
「絶句するほど長い露光の間、目の前の風景が紫外光によって版にどう焼き付いていくのかを想像し(中略)、写真の黎明期にニエプスがヘリオグラフィを発明したのは、リトグラフから着想を得ていたということ(中略)に想いを巡らせた。作品を仕上げるにあたって、版画の技法に基づき版にインクを乗せて紙に刷ってみた。しかし、この作品にとって重要な要素が抜け落ちてしまうことに気づいて、版そのものを展示することにした。」
ステートメント
2020年の夏、縁あってオフセット印刷やリトグラフに使用されているPS版(Pre- Sensitized Plate)と出会った。写真集の刷り出しの立ち会いの際には何度も目にしていたし、出版物の副産物としてその版を展示したこともあったが、当時はそれが「PS版」と呼ばれていることや、その特性にまでは意識が及んでいなかった。今回のシリーズ「Incidence and Reflection」は、このPS版の紫外線に反応する特性を知ったことがきっかけとなり制作を始めた。目には見えないけれど、太陽から確かに届いている紫外光によって現れる像を見てみたくなったのだ。
紫外光による撮影は、普段の撮影とは異なり、露出という概念がないらしい。絶句するほど長い露光の間、目の前の風景が紫外光によって版にどう焼き付いていくのかを想像しながら時間をやり過ごす。そのうち、写真の黎明期にニエプスがヘリオグラフィを発明したのは、リトグラフから着想を得ていたということが想起され、200年という大きな時間に想いを巡らせた。
作品を仕上げるにあたって、版画の技法に基づき版にインクを乗せて紙に刷ってみた。しかし、この作品にとって重要な要素が抜け落ちてしまうことに気づいて、版そのものを展示することにした。
紫外光によって焼き付いた像が、現像を経て浮かび上がってくる過程に純粋な喜びを感じ、薄いアルミの板がまるで日光浴をした後の皮膚のように熱を帯びとどまっている、その様に美を感じている。
濱田祐史
1979 年大阪府生まれ。2003年、日本大学芸術学部写真学科卒業。東京を拠点に活動し国内外で作品発表をしている。
『Primal Mountain』、『photograph』をデビューに、継続して作品を発表しています。2015年から取り組んでいる色をテーマにした作品では、ユニークな手法を用いて、写真という平面のメディアにおける色や形、画像の考察を行ってきました。デビュー以来、資格によって左右される認識のポテンシャルに興味を持ち、工業製品としての写真の多様な表現機能に根ざしたパフォーマティブな制作を続けています。
主な個展にPGI(東京)にて「Pulsar + Primal Mountain」(2013)、「C/M/Y」(2015)、「Broken Chord」(2017)、「R G B」(2018)、「 K 」(2019)、ミュンヘンのGALLERIE f 5.6にて「photograph」、「Primal Mountain」(2016)がある。
スイスのフォトフェスティバル Images(2014)、 フランスのエクス・アン・プロヴァンスフォトフェスティバル (2015)などに参加。
主な写真集に、 印刷技術も写真表現のひとつとした写真集『C/M/Y』(Fw:books、2015)、スイスに滞在して雪山登山の過程の記録を落ちている枝のみを撮影し制作した『BRANCH』(lemon books、2015)、『Primal Mountain』(torch press、2019)がある。
反射光によって撮影されたランドスケープ (カメラによる通常の撮影)
入射光によって撮影された看板
(ガラスや光を透過する対象にPS版を当ててフォトグラムの手法で制作)
- ギャラリー名
PGI
- 住所
東京都港区東麻布2-3-4 TKBビル3F
- 開館時間
月〜土/11:00〜18:00(日・祝休館)入場無料
冬季休廊:2022年12月24日(土)〜2023年1月4日(水)- アクセス
東京メトロ 神谷町駅 徒歩10分 都営大江戸線 赤羽橋駅 徒歩7分
- URL