川田喜久治 作品展「ロス・カプリチョス 遠近」が、PGIで開催される。
概要
本展「ロス・カプリチョス 遠近」は、「ロス・カプリチョス –インスタグラフィ– 2017」(2017年) 同様、1960年代に撮影された作品も含まれます。特にヨーロッパで撮影され、後に作品「聖なる世界」(1971年)にも見られる作品が、水と世界を象徴するイメージとして登場いたします。「ラスト・コスモロジー」(1996年)に顕著に見られる空への写真的渇望は、「空から」として、アルフレッド・スティーグリッツの Equivalents を彷彿とさせる様々な雲の表情に、現代の都市の様相を表象させました。パンデミック下の東京を撮影した作品では、視界を覆うような植物や、行き交う人々の佇まいを撮り、刻一刻と変化する現代の張り詰めた緊張を捉えています。
「この時、この場所」の空気を俯瞰して捉えようとする作風は、時代と場所を自在に行き来して編まれた本作「ロス・カプリチョス 遠近」においても変わらず、パンデミック下でも止まることなく都市に刻まれる時を写し出しました。
ステートメント
はるか遠くで始まったシリーズ Los Caprichos は近くの見えない都市の日々を行き来しているが、町を走る数条の道は何処に向かっているのか、夕陽の落ちた黒く深い空へ続いているようにも見えるのだ。
フォトジェニックなイメージを異化することと未視の色彩を浮かび上がらせることはほとんど時代錯誤であろう。メビウスの輪のように反転する迷路、裏返しの回路に入った自覚さえチャンスを与えてくれない。隠れた都市の面影はふたたび悪魔の爪に荒らされ灰色一色の光景に変わっている。
微風が流れ、黒い空から黄金色の薄い紙が舞い降りてくる。春に赤と黄の可憐な花を見せのち強靱な紙に変わった三椏の純和紙である。新しいインクと絡んだ感情は郷愁の色彩と不穏な声を隠れた都市の迷路からすくい上げてくれた。
クロニクルな世界時を変転するヴィールス、遊園地の驚愕コークスクリューと噴水が謎のカタストロフを笑っている。軌道のネジレにさまよい、夢のなかで消えるリアルな一瞬を追いかけるシャッター音が近くに聞こえてくる。
川田喜久治

©Kikuji Kawada, Courtesy of PGI




- ギャラリー名
PGI
- 住所
東京都港区東麻布2-3-4 TKBビル3F
- 開館時間
月〜土/11:00〜18:00(日・祝休廊)
- アクセス
東京メトロ 神谷町駅 徒歩10分 都営大江戸線 赤羽橋駅 徒歩4分
- URL