伊島 薫「あぶな絵 -針と糸、そしてけむり-」展が、東京・目黒区のスペース「目黒場」で開催される。
女優に黒いストッキングを被せて「変顔」を連写のように撮影した「新美人論1」、女優やモデル、ミュージシャンらに有名ブランドをまとわせ「死」の光景を撮影した「死体シリーズ」。
そして、女性の身体のディテールまで超高画質のカメラ機材で迫り、左右約10メートルの大作に仕上げた「あなたは美しい」など、アートワークは国内外で常に異端視されてきた伊島薫さん。「あぶな絵」もその名のとおり、見るものを困惑させるような危険な妄想を具現化した世界観が展開される。
紹介文
この「あぶな絵」のシリーズ16枚は、長くオクラ入りになっていた”幻の作品”でした。ある新創刊男性誌から依頼された連載グラビアページ企画が、「過激」だとして書店流通を拒否され打ち切りとなりました。その事件のおかげで、見る側の感性への強い訴えかけができた、と確信した伊島氏は、長い間このシリーズ発表の機会をうかがっていたといいます。
転機となったのは、老舗の壁材メーカーのオーナーが伊島氏と「あぶな絵」に惚れ込み、斬新な印刷手法を提案してくれたこと。それは、建築物で使用する塗り壁用のざらざらした素材に工業用インクジェットプリントで吹き付けるというもので、長辺約120センチの大きな画面で制作しても、表面のザラザラした感触が、逆に写真の肌の透明感を引き立たせ、ヒリヒリした先鋭的なイメージを柔らかく中和させつつ、伊島氏の意図をより受け入れられやすくする手法になりました。
ステートメント
人には言えない。
でもやってみたい、見てみたい。
人からおかしな目で見られるかもしれない、変態だと言われるにちがいないと思い、なかなかできなかったことをやらせてくれるというので引き受けた雑誌の仕事。 その雑誌には取次ぎ店からヒステリックなクレームが入り連載2回であっけなく打ち切りに…
そのおかげで、そこまで拒絶されるということは、なにか人に訴えかけるものがあるに違いないという手応えを強く感じ、その後も撮影を継続しつつ、 いつ発表しようかと思い悩んでいるうちに10年以上経ってしまった。
それがここにきて「京都場」の眞田大輔くんと仲野泰生さん、それに老舗壁材メーカー「北辰」の萬本浩也さんという“変態仲間” いや “よき理解者” を得て このたびこれまでの封印を解き、とうとうこの禁断の作品を発表することにいたしました。特に萬本さんが開発した塗り壁の素材を利用した画期的なインクジェットプリントは、 私の想像を超えて人肌の質感を見事に表現してくれ、この展覧会を開こうという決断を私にもたらしてくれました。
江戸時代の春画に置き換えるならば私が絵師、萬本氏が刷り師、京都場が版元という感覚で、ある種危険な匂いのする、かといって単にSMや緊縛というカテゴリーには収まらない新しいタイプの「あぶな絵」を、上質で美しい大型プリントによってご覧いただきます。
伊島薫
- ギャラリー名
目黒場
- 住所
東京都目黒区目黒1-23-15-3F
- 開館時間
14:00~20:00 会期中無休
- アクセス
JR 目黒駅 徒歩8分
- URL