新納翔 写真展「PETALOPOLIS」が、BOOK AND SONSで開催されている。
紹介文
現代都市とそこに暮らす人間の有様を表現してきた写真家 新納翔。
本作では、私たちが生活する現在の都市を仮想都市に見立て、それらを「MEGALOPOLIS」の先にあるもの、GIGA、TERAよりもさらに大きな単位である「PETA」と合わせた造語「PETALOPOLIS」として総括しています。
昨年4月の新型コロナウイルスの蔓延による緊急事態宣言発令下、人のいなくなった銀座のビル群を目にした新納はそれらを現代の遺跡のように感じ、未来の都市に錯覚したといいます。
同じ場所に違う時代の景色が存在していると思わせるような違和感の正体ー 今目の前にある風景をずっと先の都市風景の片鱗ではないかと予感した新納は、非現実な「現実」の断片を集め採集していきます。そこには現代都市の姿でありながら、はるか未来の姿にも感じさせる矛盾を孕んだ都市の片鱗が写し出されています。
本展では写真集「PETALOPOLIS」に加え、新作「unsustainable」に収録されている作品から約30点を展示いたします。
東京の都市風景を極端に引き伸ばし、グラフィカルに構成した新作「unsustainable」。
「PETALOPOLIS」で提唱された東京の未来の都市風景への批判的な視線を、より縦に長く、単一に伸びていく抽象的な視覚表現へと昇華し、現在の都市のありさまを「unsustainable」=持続できないものとして示唆しています。
会場では写真集「PETALOPOLIS」「unsustainable」のほか、築地市場の警備会社で働きながら取材し撮影した『築地0景』、7年間にわたって山谷の帳場で働きながらありのままの山谷を切り取った『Another Side』、東京オリンピックへ向けて、急速に変化していこうとする都市の表層を削ぐように撮影した、2007年から10年間の都市風景の集成『PEELING CITY』など過去作品集も販売します。
ステートメント
東京を中心としたエリアを撮影していると妙に違和感を抱く景色に出会うことがある。 それは、いつも決まって刹那的に現れては消えていく。
羽田空港をはじめとした湾岸部や東京駅周辺など、 再開発地区の中でも際立って変化が著しい場所で多く見つけるのだが、 時の止まったような古ぼけた商店街の一角で姿を見せることもある。
去年の4月、コロナで人が消えた銀座を撮影していた。 誰一人いない数寄屋橋交差点で信号待ちをしている時、ふと気がついた。
この違和感の正体、それは100年後もしくはずっと先の都市風景の片鱗なのではと。 同じ場所に違う時代の景色が存在しているから感じる違和感。
今はまだ小さな欠片でしかないが、やがて未来都市のコアになるもの。 1950年代後半に複数の巨大都市が交通通信網の発達で密接に結ばれ、一体化した大都市群は「Megalopolis/メガロポリス」と呼ばれるようになった。
それから半世紀、インターネットの普及によりさらに広域に結びついた世界は 「Megalopolis/メガロポリス」よりもずっと規模の大きい「Gigalopolis/ギガロポリス」 と呼ぶにふさわしい世界になった。
2007年からの10年間で撮影した『PEELING CITY』(2017)は、 ギガロポリスに住む人々にフォーカスしながら切り撮った都市風景だと考えている。
この写真集は未来都市の欠片を集めた標本のようなものである。 つまりは、私が提示できる未来の東京都市像なのだ。
『PEELING CITY』で撮影した「Gigalopolis/ギガロポリス」のずっと先の都市の姿。 それを「Petalopolis/ペタロポリス」と呼ぶことにした。 今作に登場する景色は現在の景色でありながら、やがて訪れる未来の姿なのである。
新納翔
1982年横浜生まれ。
麻布学園卒業、早稲田大学理工学部中退。
2000年に奈良原一高氏の作品に衝撃を受け、写真の道を志す。
2009年から2年間、中藤毅彦氏が代表をつとめる新宿四ツ谷の自主ギャラリー「ニエプス」で メンバーとして活動。
かつて肉体労働者の街と呼ばれた東京都台東区にある「山谷地区」を撮影するために、約7年間簡易宿泊所の管理人として撮影。
その後築地市場を撮る為に、市場を担当する警備会社に就職、その後も常に内側からの視線によって変わりゆく街・都市風景を捉えてきた。
主な写真集に『山谷』『Another Side』『築地0景』『PEELING CITY』がある。
現在RICOH・PENTAXアンバサダー。
https://www.shoniiro.com/
- ギャラリー名
BOOK AND SONS
- 住所
東京都目黒区鷹番2-13-3 キャトル鷹番
- 開館時間
12:00〜19:00(水曜日休館)
- アクセス
東急東横線 学芸大学駅 徒歩3分
- URL