小松敏宏 個展「ミザナビーム|Mise en Abyme」が、KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHYで開催される。
紹介文
東京藝術大学大学院美術研究科修了後、マサチューセッツ工科大学(MIT)大学院建築学部を修了した小松敏宏は、アムステルダムやニューヨークでの滞在制作を経て、MoMA PS1やクイーンズ美術館での個展など精力的に活動。帰国後は、瀬戸内国際芸術祭(2013)や越後妻有アートトリエンナーレ(2012/2015)など国際芸術祭を中心に、サイトスペシフィック・インスタレーション、パビリオン(仮設建築)、写真表現など、事象の認識を更新させる視覚芸術を重ねてきました。
西麻布で2年振りの個展となる本展では、建築空間のレイヤーを打ち消す透視写真シリーズ〈CT〉の新作を発表いたします。フランス語で「底知れぬ深みに置くこと=入れ子状態に置くこと」という状態を意味するMise en Abyme(ミザナビーム)をタイトルに冠した本展は、欧州の建築空間をモチーフに制作されていた従来の作品から一転し、日本の建築物をモチーフにした新作で展示を構成いたします。
欄間の組み込まれた落ち着いた色調の木造建造物(京長屋や、皇室が滞在したこともある書院造りの旧家)や、廃校となった木造の小学校は、幾何学模様にレイヤーがくり抜かれたその奥の空間を、見通せるかのように感じられますが、よくよく観察すると、壁を取り払わずには得られないはずのパースペクティブが現れています。1900年代のNYで活躍をしたアーティスト、ゴードン・マッタ=クラークは、建造物の実空間にスリットを入れて景色を更新させましたが、ディスプレイ上のレイヤーを消去することに慣れた私たちの眼や脳は〈CT〉で小松の示す景色をすんなりと受け入れてしまいそうになり、記憶、視覚、空間認知など、人間の知覚の根幹に揺さぶりをかける表現であることが分かります。
ステートメント
身体をCTスキャンするように、デジタルカメラで家や校舎をスキャンしながら撮影し、室の向こう側に実在する、壁や障壁画、カーテンで隠された「奥」を透視するようにして表出する。
実際の建築空間をリアルに切断しスリットや穴を穿ち刳り貫くのではなく、現場で撮影した建物の前室「手前」と後室「奥」をレイヤー化させた写真をもとに、「手前」壁面の画像を部分的に刳り貫き「奥」を露わにし、まるで実際に穿ったように見せる現実と虚構の目眩く視覚的撹乱。
太秦の義祖母が93歳で亡くなるまで、嫁いでからずっと住み続けた京長屋、建築士の父を持つ妻の京都岩倉の生家、大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレの舞台でもあり廃校になった新潟の木造の小学校、皇室が滞在したこともある130年前に建てられた北兵庫の書院造りの旧家、人の記憶と歴史が詰まった建物を写真が透視する。
小松敏宏
1966年、静岡県浜松市生まれ。京都精華大学教授。1993年、東京藝術大学大学院美術研究科修了、1999年、マサチューセッツ工科大学(MIT)大学院建築学部修了。
主な個展に『Aperture—眼差しを穿つ』(2020年、KANA KAWANISHI GALLERY、東京)、『トポフィリア(場所愛)—ジャパニーズ・ハウス』(2020年、KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHY、東京)、『TOSHIHIRO KOMATSU』(2009年、ウィンブルドン芸術大学ギャラリー、イギリス・ロンドン)、『サナトリウム』(2006年、遊工房アートスペース、東京)、『透視 2005.9.21』(2006年、galerie16、京都)、『クイーンズフォーカス03:隣接する空間』(2000-2001年、クイーンズ美術館、アメリカ・ニューヨーク)、『Special Projects Fall 1999』(1999年、MoMA PS1、アメリカ・ニューヨーク)など。
グループ展・芸術祭に『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015』(2015年、新潟)、『On the Exhibition Room』( 2015年、特定非営利活動法人キャズ、大阪)、『島からのまなざし なぜ今、アーティストは島へ向かうのか』(2014年、東京都美術館、東京)、『瀬戸内国際芸術祭2013』(2013年、香川)、『日本の新進作家 vol.2:幸福論—小松敏宏・蜷川実花・三田村光土里』(2003年、東京都写真美術館、東京)など。
- ギャラリー名
KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHY
- 住所
東京都港区西麻布2-7-5 ハウス西麻布 5F
- 開館時間
13:00〜20:00(水〜金)/12:00〜19:00(土)/日・月・火・祝休廊
- アクセス
東京メトロ 表参道駅 徒歩10分/六本木駅 徒歩13分
- URL