まず「bird and insect」の業務内容を簡単に教えてください。

シュンタロウ 「bird and insect」 は、写真と映像のプロダクションです。元々は写真の仕事から始めて、デジタル一眼レフが映像を撮れるようになってからは、映像の仕事も始めましたが、「映像ならチームでやった方がいい」という判断をして立ち上げたのが「bird and insect」になります。約3年前に法人化し、インターン1名を含めて現在10名体制で仕事をしています。

スチルの撮影は個人へのオファーが多いですが、映像の場合はチームに仕事が来るので、うちの会社全体で動くときは映像の仕事が中心です。

僕の役割としては、映像の時は立案から納品まで全体を見ます。お話を聞いてから、企画と予算のバランスで提案していく、「ディレクターとプロデューサーの兼任」的な役割です。具体的に絵を作っていく映像ディレクターとして、桜屋敷と主馬の2名がいます。撮影は林が撮ることが多いですが、編集は桜屋敷、主馬、林のいずれかが都度行います。グレーディングは、林がメインで担当しています。


シュンタロウさん。

仕事の内容としては、企業PRに使うイメージ映像が多いです。メディアとしては、Webサイト、トレインチャンネル、シネアド等です。ここのところは、YAHAMAさんにお仕事をいただく機会を多く頂いています。

例えば、YAMAHAグループには管楽器を修理する職人の学校があるのですが、その学校の40周年を記念したPR動画として、実際の生徒さんたちに出演者して頂いて、映像を作ったりしています。


YAMAHA 管楽器テクニカルアカデミー

弊社はスチルから始まっているので、動画の撮影はもちろん得意分野なのですが、グレーディングも重視しています。今はグレーディングの重要性がフォトグラファーの方にも認識されてきていますが、始めた当時は、絵作りにはこだわっても映像を撮った際の色味には無頓着の方もいらっしゃいました。birdでは当初からそこにこだわって試行錯誤してきたので、今では撮影と色作り、両方の信頼性でお声をかけて頂くことが多いのかな、と感じています。

最近は企業が自社のWebサイトでコンテンツを発信することが増えていますが、「写真と映像のトーンを揃えたい」と相談されるケースが増えています。その場合も、両方をワンストップで統一できるのもbirdのウリの一つです。


BUTTERFLY QUALITY

林さんの仕事内容を教えてください。

 当初は僕がカメラを回して、編集、グレーディングまで全ての工程に携わっていましたが、最近はスタッフが増えて、分業体制ができてきました。その中で、最近は撮影を中心にしていて、編集はサポートに回っています。

birdのスチルの仕事は、シュンタロウと僕と阿部が撮っています。シュンタロウはスタジオなどでの仕事が多いのですが、僕は一般の人をいかに魅力的に見せるか、というのが得意なのでそういう仕事が多いです。企業のリクルートサイトは「そこで働いている人をいかに魅力的に見せるか」がポイントなので、そういう案件は僕が撮影しています。


林 裕介さん。

シュンタロウ 林はもともとリコーで、GR等のカメラ設計をしていたので、テクニカル系に強いです。映像はスチルよりも知っていなければならない専門知識の幅が求められます。

 感覚だけでやっていると後で大変なことになります(笑)。技術的な裏付けは絶対に必要です。3〜4年前までは、CM、映像制作を手がける大手プロダクションやポスプロと、「一眼ムービーから始めてみました」という個人レベルのクリエイターと二極化していたと思うんです。

現在は、その個人レベルのクリエイターのレベルが上がってきて、CMと個人レベルを埋める中間の案件ができる規模のプロダクションが増えてきています。

シュンタロウ 映像の人が使うグレーディングソフトにはダヴィンチ(DaVinci Resolve)等がありますが、僕らは PhotoshopやLightroomから始まっているので、そこでLut(ラット)を書き出して、Premiereに当て込む方法を当初から行ってきました。動画系の人があまり行わないやり方かもしれませんね。

 birdのような10人規模のプロダクションは、撮影からフィニッシュまで一貫して行うことでクオリティコントロールができるので、そういう意味では編集から納品データまでを扱うモニターは、重要な機材と言えます。


主馬さん。

モニターの話に繋がりましたね。主馬さんの仕事内容も教えてください。

主馬 僕はまだ入社数ヶ月で、birdにはエディターとして参加させてもらいましたが、これからはディレクターとしても活動していきたいと考えています。

今までは一人で企画、ディレクション、撮影、編集、グレーディングまでこなしていました。地方の伝統産業のプロモーション映像の制作、お祭りからダンス系PVまで作っていました。

シュンタロウ PM(プロダクションマネージャー)の女性もいて、映像の制作チームとしての形はできている気がしますね。

制作の機材環境を教えてください。

シュンタロウ PCはiMacをメインに、Macbook系、編集ソフトはPremiereです。


UKO「ONE LOVE」

今回、BenQの映像編集用モニター「PV270」を使って頂きました。しばらく仕事で使って頂く中で、項目ごとに印象というか、使用感を聞かせてください。まず27インチという画面サイズはどうでしょうか。

 僕は27インチがベストだと思います。iMacも最大27インチですし、今はiMacとダブルモニターで使っているので、2台のサイズが揃っているのは使いやすいです。あとデスクの広さによって、自分の視野の範囲があると思いますが、27インチよりも大きなモニターだと距離を遠ざけてしまいそうです。逆に21〜23インチだと「サブモニター感」が出てきます。各メーカーのモニターに27インチが多いのは、現状ではそれがベストだからではないかと思います。


 PV270

解像度が2560x1440pixelというスペックはいかがですか。

 iMacが5Kなので、それに慣れてしまうと映像によっては4Kでも物足りなく感じることはあります。人間の目でドットが判別できないサイズになれば、5Kも8Kも関係なくなります。そういう意味では、不満に思うか思わないかの境目が4Kあたりかなと。ただ2560×1440でも普通に編集している際には必要十分です。使ってみる中で、ピントや細かいところの解像度が気になるシーンだけ、iMacで確認することもありました(註:BenQの別ラインナップでは4Kモニターもあります)。

シュンタロウ 林が言ったのはプロの業務用途が前提なので、「これから映像をやっていこう」という人ならば、この解像度でも十分です。

色域はAdobe RGB/99%、DCI-P3/96%、Rec709/100%です。

 写真系の方はAdobe RGB、sRGBを気にされますよね。それに対して、DCI-P3、Rec709は、HDテレビや映画用の規格だったりするので色域の範囲が少し違います。 仮にsRGBまでしか表示できないモニターで作業した後に、HDテレビや色域の広いモニターで見たら、すごく彩度があがってギラつく可能性があります。このモニターを使って制作していれば、そういう事が起こる不安がなくなるのは大きい。

色域の狭いモニターだと、予想で「自分はこの位の彩度が好みだけど、実際は少しギラつくからちょっと色を抑えておこう」というような曖昧な調整をしなければなりませんが、PV270を使っている限りは、安心してここで詰められるのはすごく助かりますね。

主馬 テレビCMやネット系ショートムービーとか、映像に関して言えばRec709が100%カバーされていれば、全く問題ないと思います。

それとAdobe RGBカバー率が99%ということは、スチルとムービー両方の仕事をする人にとっては、安心して使えるモニターではないでしょうか。


Gloaming

10bit表示(14bit 3D LUT)はどうですか。

 ルックアップテーブルが14bitなので色再現は正確です。実際の表示が10bit(10億7,374万色)というのは、8bit(1,677万色)モニターよりもなだらかな映像表現というか、特にグラデーションは美しいです。ただ特にそれで「すごい!」という感動あるわけではありません。

と言うのも、iMacのRetinaディスプレイも10bitモニターなので、その美しさに慣れてしまっているんですね。逆に今から8bitモニターには絶対に戻れない、ということでもあります(笑)。

シュンタロウ 安いモニターで高精細な映像を見るとバンディングが目立ったり、「ビット数足りない感」がありますね。

 JPEGは8bitですよね。写真でJPEGを扱う場合や一般的な動画などは8bitで作業することが殆どになるかと思いますが、10bit収録できる動画機材なども出てきており、今後間違いなく10bit以上のデータを扱う作業が増えていくと思います。そのためにも今のうちに10bitモニターを買っておいた方が長く使えます。


キャリブレーションソフト「Palette Master」が無料提供される。

モニター本体のRGB表示を直接制御・調整する「ハードウェアキャリブレーション」に対応しているということで、試して頂きました。

主馬 BenQのWebサイトから「Palette Master」をダウンロード(無料)して、キャリブレーターのセットアップをします。

X-Rite社と共同で開発されているそうで、やってみたら5〜10分でキャリブレーションできたので、すごく簡単でした。特に専門的な知識がなくても、操作に従っていけば標準の色が出ます。その点、機材に詳しくない人、チームで同じモニターを共同で使う人たちでも、簡単に色調整ができるのはありがたいです。

シュンタロウ BenQ製品は、もともと出荷時にキャリブレーションを取ってくれているので、それも効率がいいし、安心だよね。

感覚で色を扱う人も少なくないので、キャリブレーションをあまり知らない、または気にかけない人もいますからね(笑)。操作は簡単に越したことはないです。

ユニフォーミティ補正で「色再現の均一性」がセールスポイントの一つですが、実際に色ムラはなかったですか。

主馬 色ムラはほぼ感じません。この機能は実作業では一番重要なんです。

シュンタロウ ユニフォーミティ機能が付いているモニターは他メーカーでもありますが、高いんです(笑)。

それだけ重要な機能、ということですね。

 これはすごく良いです。チェックする側からすると作業をしている人の斜め後ろからモニターを見るわけです。そこに色ムラ、輝度ムラがあるとその都度移動しながら見るとか、ストレスになります。正面から見ても周辺がムラになっていたり、暗くなっていることもありますが、このPV270に関しては、そういう事がほとんどないです。

主馬 シンプルなグレーを全画面表示して斜めから見ても、色ムラはまったく感じないです。

シュンタロウ 弊社では他社製品を使っているのですが、ムラがあるんですね。写真のセレクトで10枚位を並べてみたときに、端が暗く見えてしまって使いづらく感じる時がありますが、このモニターは端まで有効に使えますね。

電源を入れてから「5分で安定」ということですが、5分はあっという間ですね。

シュンタロウ 別メーカーでは、同等クラスで7分くらいかかります。

主馬 2分速いですね!

 オフィスで長時間使う人にはそれほど大きなことではないですが、ロケ現場に持っていく時にはいいですね。

色々な場所を移動しながら撮影する場合、一旦電源を抜いて運ぶじゃないですか。次の場所ですぐに撮らないといけない時に、5分で安定するのはありがたいです。7分だとそんなに変わらないかもしれませんが、安定まで30分かかるモニターだと使えませんから。

シュンタロウ 大きな仕事、大きな現場になればなるほど、モニターが複数台必要になってきます。レンタルするケースもありますが、自分が信頼できるモニターを持っていった方が、安心して進められます。

諸事情で安いスタジオを使うことになり、そこのモニターを借りたら「色が悪い!」ということがありますからね。だったら自分たちで持ち込んだ方がいい。色が悪くてクライアントに不安材料を与える心配もなくなります。

「映画編集に最適な1080/24P プレイバックに対応」というのは、映画やシネアドを作る際には便利ですね。

主馬 「True 24P」と書かれていますので、モニター表示が本当の24Pで再現できる、という機能ですね。

 iMacのモニターは60Hzですが、「一般的なモニターの60Hzリフレッシュレートによって生じるソース映像の歪みがなく、 24Pのフィルムコンテンツが正しいフレームで表示される」ということなんですね。

シュンタロウ 映画館で見る時と同じ環境をPV270で再現できると。

主馬 このモニターはDCI-P3対応とか、シネマ編集のユーザーを意識していると思うので、劇場のスクリーンで見た時と同じ24Pで表示されるのが、必要な人にはとても重要な機能だと思います。

 わかりやすく言うと、24Pで撮った映像を普通のモニター(60Hz)で表示すると、24コマの倍数の48Hzでも72Hzでもないので、1コマ→1コマ→2コマ→1コマという、違う長さのフレームが所々に入るので、極端に言うとカクカク見えてしまうわけです。でもこのモニターは、すべてのコマが1コマとして見せられるので、映画館と同じ24コマの映像を見ながら、編集できる。これはコアな機能です。

シュンタロウ 映画を作る人には重要だし、ミュージックビデオとかで、味として「24コマで撮りたい」という意図が場合には、必要な機能です。

モニターフードが標準で付いています。

シュンタロウ フードは絶対に必要ですし、標準でついているのはありがたいです。

主馬 作りはすごくしっかりしています。内側が黒のフェルトで反射しないようになっていますし、キャリブレーションをとる際に中央がスライドして測定器を上から通せる。よく考えられていますよ。

モニターフードやユニフォーミティ補正他、様々な機能がついて実勢価格が108,000円です。

シュンタロウ 正直に言うと、最初はこの金額を知った時に、他社製品で4Kも買えるなと思いました。でも輝度ムラ、色ムラを考えた時に、ユニフォーミティ機能がついている製品を探したら、だいたい倍以上します。それを考えるとかなりお徳な製品だと思いました。

 ビギナーの方はモニターを検討する時に考えるのはまず「解像度」と「色の再現性」です。そういう人がアマゾンで調べると、某社の4Kモニターが出てくるんです。でも今日、僕たちが話してきたように、モニターってそれ以外にも大事な要素があるんですね。そういう機能も入ってこの金額なら、導入する価値はあると思いました。

シュンタロウ 主馬くんも「iMacのRetinaよりもPV270の方が信頼できる」って言ってたね。

主馬 iMacのRetinaディスプレイは、見た目はキレイです。色も派手ですし。ただ世の中の人が皆それで見るわけではないですし、何よりムラもなくて画面がフラットなので、安心して編集作業ができます。

今は、テレビ、PCモニター、スマホ、デジタルサイネージ、トレインチャンネル、映画館等、映像を見るデバイスが多岐に渡る中で、このモニターで編集すれば、ほぼ対応できます。納品先のメディアで色が大きく転ぶとか、彩度が上がりすぎるようなリスクは防げるだろうなと感じました。

シュンタロウ アドバイスは1点だけ。フレームの右下が機能を切り替える「タッチパネル」になっているのに最初気づけなかった。「説明書を読め」という話ですが、購入した方はそこだけ覚えておいてください(笑)。


電源スイッチの横がタッチパネルになっていて様々な機能が呼び出せる。

パソコンを買うと、そのままキャリブレーションをとらずに仕事をする方も少なくないと思います。

林 まず言えるのは、スチルでも映像編集でも、複数名で仕事をする人は、モニターの色が統一されている必要があります。

実際にiMac数台で仕事をされている人は多いと思いますが、実はバチっと色を合わせるのは難しいんです。キャリブレーションしているはずなのに微妙に違ったり...。PV270は、X-Rite社と開発したソフトが無料でついてきてハードキャリブレーションがとれるので、複数台で使っても色が合わせやすい。

それと先ほど話に出たようにiMacのRetinaディスプレイは色が派手なので、自分が見たり、作業している分には楽しいけれど、最終的に他のデバイスで一般の方が見た時に地味に見えてしまう可能性があります。



最近は、エンターテイメント系も企業のWebサイトも、スマホで見られるケースがかなり増えています。そうすると、iPhoneで見る人も多いわけです。iMacよりもiPhoneの方がやや発色が地味なんですね。このモニターは色が正確に出るということもありますが、iPhoneに近い色味で作業できるので色の齟齬がおきないのはいいなと思います。

グーグルがスマホを発売して話題になっていますよね。iPhoneの勢いが鈍化して、 今後グーグルスマホが伸びてくることを考えると、「グーグルスマホのディスプレイがどうなるのか」がすごく重要になってきます。

シュンタロウ iMacは特にそうですが、最近のPCは明るくて派手なモニターが多いし、グレア系です。映像編集やレタッチで長時間モニターを見て作業する人は、目が疲れるんです。

1日中、ずっと見ているわけじゃないですか(笑)。仕事で使う人にはノングレアでフリッカーレスのパネルはありがたい。

 仕事ではずっと編集やレタッチだけをするのではなくて、メールの読み書きや資料を作ったりする時間もけっこうあるじゃないですか。文字を打つとか文章を読む時に、iMacよりもこのモニターの方が目の疲れが少なく済むんじゃないかな。



主馬 birdはメインPCがMacですが、僕は今までWin系だったんですね。それでこのひと月ほどずっとiMacで作業していたら一気に視力が落ちたんです(笑)。本当なんです。一日中編集作業をしている身としては、このモニターを常用したいと思いました。

シュンタロウ 健康面からもPV270をメインモニターとして使って、必要な時に2台体制にする、という方法がいいかもしれないね。

あと同機能の他メーカーと比べると価格帯が安いので買いやすいです。僕たちのようにプロダクションとして何台か揃える際には経費的に助かりますし、ビギナーが本格的に仕事を始めるのに10万円台ならファーストカラーマネジメントモニターとして導入しやすいと思いますよ。


Go Hiyama「Embrace」





PV270



主な仕様
27インチ WQHD(2560 x 1440)の解像度
平均ΔE≦1.5、Rec.709 100%、DCI-P3 96%、Adobe RGB 99%をカバーする広色域
ハードウェアキャリブレーション対応、キャリブレーションソフトウェアPalette Masterも無料提供
ムラ補正回路搭載により均一なユニフォーミティ
バックライトセンサー搭載により安定まで5分
映画編集に最適なリアル24Pプレイバックをサポート
http://www.benq.co.jp/product/monitor/pv270/





shuntaro


Image Director
1985年、東京生まれ。京都工芸繊維大学で建築・デザインを学び、広告系制作会社を経てフリーランスへ。2013年、University for the Creative Arts で写真の修士号を取得。その後、株式会社bird and insectを立ち上げ、代表取締役を務める。2017年には、日本のファッション写真史の研究で博士号も取得した。



林 裕介


Cinematographer
大学院まで機械工学を学び、株式会社リコーにてRICOH GR等のカメラ設計を経験の後、2014年2月に辞職し作る道から撮る道へ。写真・映像の撮影、編集からドローンの操縦まで担当。理系思考を強みに何でも理解して習得することを心掛ける。原因を考えるのが得意。謎解きをしている気分で写真と映像をやっています。



主馬


Movie Director/Editor
ヒーローになりたかった幼少期。現実の厳しさを知った学生時代。ヒーローになる以外の選択肢を考えていなかったので途方にくれる。夢を見続けたい。そんな僕を救ったのは映像でした。これからもワクワク、ドキドキするものを作りたい。
http://bird-and-insect.com