Sony Imaging Galleryで開催中の、アキラ・タカウエ作品展『Theoretical Urban-Visionology “RESTARTED” ~ 建築構造/都市風景とファインアートの理論的融合 ~』を観た。
Webで紹介するビジュアルは透過光であり、展覧会はプリント(モニター展示は除く)なので、通常はそれぞれに違う印象をもつ事も少なくない。
しかし本展でまず驚いたのは、スマホやPCモニターで見ている透過光での写真と、会場のプリントの印象がほぼそのまま、ということだった。

白のヌケ、黒の締まりと、中間トーンのグラデーション。特に建築物はコンクリートなどのグレーも多く、このグラデーションをどやってプリントに落とし込むかがポイントになる。タカウエさんのプリントは、アンセル・アダムスの「ゾーンシステム」をデジタルカメラとインクジェットプリンターで再現しているかような印象。すごく美しい。
その「なぜ美しく感じるのか」を整理してみると
・グラデーション、黒の締まり
・計算されたアングル
・シャープネス、解像感
・近景と遠景で見せる奥行き感(作品による)
・スローシャッター(長時間露光)による動的なものの整理
かなと思う。
「計算されたアングル」というのは、4×5の大判カメラでアオリ撮影をしたような、水平垂直の統一感。そこがビシッと揃っているから、写真に安定感が出る。

「シャープネス、解像感」は、カメラとレンズの性能にも左右されるが、直線が多く硬質な建築物とデジタルカメラのセンサー配列とは相性のよさを感じる(フィルムは逆に粒子のランダムさが魅力)。
作品によるが「近景と遠景で見せるアングルは、距離感、奥行き感がすごい。手前から無限遠までシャープにピントが合っているのがなんとも言えず気持ちいい。平面の世界にものすごく奥行きを与えている。

「スローシャッター(長時間露光)」にすることで動いているもの、人間や波、雲の動きなどが整理され、建築物に自然と視点が誘導される。
そしてモノトーンであることで、建築物の色の生っぽさを消し去り、構造とフォルムの魅力に集中させてくれる。
9月23日まで開催されているので、時間のある方は是非会場で観て欲しい。


ギャラリー名:Sony Imaging Gallery
住所:
東京都中央区銀座5-8-1 銀座プレイス6階
開館時間:11:00~18:00(当面の間、18時に閉館)
アクセス:東京メトロ 銀座線 銀座駅 徒歩1分
URL:https://www.sony.co.jp/united/imaging/gallery/

SHOOTING編集長・フォトプロデューサー
坂田大作
Web Magazine「SHOOTING」編集長。株式会社ツナガリ代表。フォトディレクター、エディター、プロデューサー。
Webサイトを運営する傍ら、約600ページの「SHOOTING PHOTOGRAPHER + RETOUCHER FILE」を9年連続で発行。アマナトークラウンジや、日本最大の写真イベント「CP+」で毎年多くのステージを企画・登壇するなど、「写真」を軸に、ウェブ、出版、トークイベント等、メディアの垣根を超えて活動している。