「富士忍野グランプリフォトコンテスト」で、第30回グランプリ(最優秀)賞に輝いた作品が「合成写真だ」との指摘が相次いだ。
朝日新聞DIGITAL
記事:https://www.asahi.com/articles/ASN63778JN61UZOB00T.html
SNS全盛の現在、画像処理ソフトによる合成や色変換はいまや当たり前である。思えば、ポジ(リバーサル)フィルムは、ほぼいじれないので撮ったままが写る。もちろんメーカーや製品ごとのカラーバランス特性や、現像時の増減感による露出の差は生じる。
フジのプロビア、ベルビア、アスティア、コダックのエクタクローム、コダクローム、といったように、フィルムを選択する時点で、ある程度見せたいトーンを選択し、そこから先は個人の技術と表現力に委ねられていた。
その後、個人でもカラーネガフィルムのプリントができる現像機(Lucky CP51他)の発売もあり、暗室でのカラーバランスの調整やモノクロと同じように覆い焼き、焼き込みをして、作家の意図を反映させたプリントが自室で作れるようになった。
そしてデジタルカメラやスマホと、画像処理ソフトやアプリ全盛の現在、もはやデジタルデータでは「何でもできる状況」になっている。その自由度を歓迎する方もいれば、もはや風景写真は「記憶色」ではなく「希望色」だと指摘する人もいる。
でも、もはやそんなことを議論する意味もないだろう。
新しい製品やテクノロジーを受け入れて、それを表現に活かしていくのは普通のことだからだ。
「フォトコンテスト」においては、応募規定でカテゴライズすればよいと思う。
例えば、
1. JPEG撮りっぱなし部門
2. カメラ内フィルター使用や、トーン調整のみOK部門
3. 規制なし(なんでもあり)部門
1の「JPEG撮りっぱなし部門」は、その名の通り、撮影時の設定のまま瞬間を切り取った写真。
2の「カメラ内フィルター使用や、トーン調整のみOK部門」は、各メーカーが搭載しているフィルターやカメラ内加工、また撮影した写真データ全体の明るさやトーンを画像処理ソフトで調整する。
個別にマスクを切って、レイヤーごとのトーン調整は不可。いわゆる撮影時に、フィルターをつけるようなイメージ。
3の「規制なし。なんでもあり部門」は、現在行われているような切り抜きや合成等、後処理も含めて最終的に「一枚絵」として仕上げた作品。
これらを「前提条件」に加えて募集すれば、主催者や審査する側も「合成か否か」で悩まずに済む。
画像処理しているのに、「JPEG撮りっぱなし部門」に応募するとか、それは別問題ですね(苦笑)。
SHOOTING編集長・フォトプロデューサー
坂田大作
Web Magazine「SHOOTING」編集長。株式会社ツナガリ代表。フォトディレクター、エディター、プロデューサー。
Webサイトを運営する傍ら、約600ページの「SHOOTING PHOTOGRAPHER + RETOUCHER FILE」を8年連続で発行。アマナトークラウンジや、日本最大の写真イベント「CP+」で毎年多くのステージを企画・登壇するなど、「写真」を軸に、ウェブ、出版、トークイベント等、メディアの垣根を超えて活動している。