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#EDITOR'S BLOG 日本は四季から二季へ
風景カレンダーにみる「日本人の色彩感覚」の変化

2023年12月31日

2023.12.31

日本は四季から二季へ 風景カレンダーにみる「日本人の色彩感覚」の変化

2023年も今日が大晦日。

店舗やネットでは、11月には「日本の四季」「世界遺産めぐり」的な、2024年(令和6年)のカレンダーが発売されていました。

特にここ数年、写真系のカレンダーを見ていて感じることがあります。それは、

色がギトギトで彩度が高すぎないか!

ということです。

世の中はスマホ全盛で、SNSでどれだけ「いいね!」がもらえるか、承認欲求の競い合いです。

特に、風景写真やスナップは、インスタ映えや写真投稿サイトの影響もあり、どんどん派手な色、より目を惹く方向へ進んできました。

目立つ方法論として、

・お花畑やグリーンなどの原色系の彩度アップ
・マスク、またはパートごとのレタッチ
・別々の写真を合成
・逆光や赤い夕陽などのドラマチックな過剰演出等

パーツごとに調整された切り貼り的な風景写真(と呼ばれるもの)が溢れています。
デジタル全盛の時代に、もはや一発写真やJpeg撮りっぱがよいわけでもないし、風景写真にも定義はありません。

どうしてこうなっているのか?

それはSNSや投稿サイトで、「少しでも人よりも気を引きたい」という思いからだと思います。最近ではSNSでも収益化が可能になってきており、ビジネスとしての側面もあります。

なぜそれが可能なのか?

それは画像処理ソフトのAIを含むアップデートで簡単にドラマチックな写真が作れる。
またテレビ、PCモニター、スマホ、デジタルサイネージの「彩度」や「輝度」が上がり、透過系ディスプレイの色域が広がってきたから。

印刷(紙媒体)はどうでしょうか?

一般的なオフセット印刷は、基本的にはCMYKの4色インク、175線がベースです。

しかしそこから特色の追加、高精細、高濃度印刷、FMスクリーニング他、様々な技術向上により、色域や彩度も広がってきました。

印刷よりも、一般家庭に普及しているインクジェットプリンターは4色インク以上があたり前で、写真品質のプリンターは色域も広いです。

これらによって、反射原稿も益々、派手目な写真が増えています。

風景写真とカレンダーの役割

カレンダーは一度買うと、家や会社でも1年中見て使う、という役割があります。

私は特に自宅のカレンダーには、ほとんど絵画やイラスト系を買っています。

なぜかというと、一般的に売られている風景カレンダーは彩度が高すぎて、家の中で見ると落ち着かないから。これは人それぞれの感覚なので、何とも言えませんが、私はそうなのです。

岩宮武二氏の言葉

写真家の岩宮武二氏が、大阪芸大の写真学科長だったころ、先生がおっしゃっていた言葉あります。

記憶が鮮明ではないですが、「風景写真は曇りの日がよい」と。
ピーカンだと影がはっきり出過ぎてしまい情緒がない。曇りや薄曇りの時は、光がやわらく注ぎ、草木が美しく見える。

このようなニュアンスだったと思います。

当時カラーは、リバーサル(ポジ)フィルムが主流で、鮮やかに見えるフィルムが受け始めていたので、そういう傾向に警鐘を鳴らされていたのかもしれません。

温暖化による、四季の変化

ここ数年の温暖化、特に夏の暑さは異常です。
春夏秋冬が3ヶ月ごとだったのが、いまは、「夏冬が5ヶ月、春秋が1ヶ月」、のように感じています。

そうするとどうなるでしょうか。

秋の紅葉は一瞬で枯れ果て、春の温暖な気候を満喫するまでもなく、夏日になっていく。
写真に写すのは自ずと夏と冬の写真が増え、季節の移り変わり、そこでの「ゆらぎ」のような曖昧さが薄れていきます。

科学的な裏付けはわかりませんが、これはかなり日本に住む人の感覚にも影響すると思います。

日本は
花冷え、春眠、陽春、惜春、花曇り、新緑、薫風、
雨でも、梅雨、小ぬか雨、小雨、霧雨、雷雨、五月雨、氷雨、長雨、豪雨、時雨、春雨、緑雨、秋雨、秋霖、、

季節や自然現象に多くの季語があるように、その季節や天候を言葉で表してきました。

「うつろい」や「曖昧さ」って、人間には必要で、白黒はっきりクッキリだけが「美」ではありません。

ビューティや商品撮影でも、日本人のフォトグラファーは「グラデーション」に繊細な感覚を持っていると感じています。

このまま四季が二季に近づき、ディスプレイがさらに進化して、日本人独特の「間や風情」を感じるの感覚が希薄になっていくことを危惧します。

地球環境の変化やネット環境などに適応していくのが人間であり、進化なので、それを受け入れることも大事です。ですが、中庸、グラデーションに美しさを感じる感覚を大事にしたいなと思いつつ、2024年を迎えたいと思います。

来年もよろしくお願いいたします!

SHOOTING編集長・フォトプロデューサー

坂田大作

Web Magazine「SHOOTING」編集長。株式会社ツナガリ代表。フォトディレクター、エディター、プロデューサー。

Webサイトを運営する傍ら、書籍「SHOOTING PHOTOGRAPHER + RETOUCHER FILE」を12年連続で発行。アマナトークラウンジや、日本最大の写真イベント「CP+」で毎年多くのステージを企画・登壇するなど、「写真」を軸に、ウェブ、出版、トークイベント等、メディアの垣根を超えて活動している。
2021年11月より、写真家らと組んで「NFT Art作品」の販売をスタート。「普遍的な作品の価値」を追求している。
https://shooting-mag.jp/
https://shooting-nftart.com/

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