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#EDITOR'S BLOG Kenji Aoki写真集『Space』にみる無双感

2022.01.14

Kenji Aoki写真集『Space』にみる無双感

2010年秋から、アメリカのNYにベースを移された青木健二さんから、写真集『Space』が届いた。

持った瞬間、ズシリと重い。

表紙の写真と、そこからブラックアウトするようなカバーとシンプルなデザインに、写真集全体のコンセプトが集約されている。

青木さんが日本にいる頃は、渋谷のスタジオには何度も伺っていた。撮影スペースの反対側には高級オーディオと茶器が置かれており、撮影の打ち合わせや取材で尋ねているのに、「どこかのオシャレカフェか」と思ってしまうようなジャズの流れるリラックスした空間で、写真を見せて頂いた記憶がある。

その空間自体が青木さんの演出であり、写真を見る前からプレゼンは始まっているのだ。

以前、藤井保さんや土井浩一郎さんの事務所(スタジオ)でも似たようなことを感じたことがある(この話はまた別の機会に)。

写真集に話を戻そう。

青木さんの写真は、ものすごくシンプル。
でもね、「シンプルなものを撮る」のと、「シンプルに見えるように撮る」のは全然違う。

今までにないものを撮ると考えると、大抵の人は南極とか活火山とか、密林とか、地球の局地を想像してしまいがち。もちろんそこへ行くだけの時間や労力、また経費も含めて、「その場所で写真を撮ること」も凄いエネルギーが必要だとは思う。

でも「心の内面を具現化していく作業」=「自らのリアルを求めること」だけではなく、「何を見つめてどう撮るか」でも実践できるものだと、この写真集を見て思う。

写真は「光と影」で構成される。物体に光があたって、影が落ち、それを両眼で見ることで、紙やモニター等の平面の世界に、立体感や奥行きがあることを脳が認識する。

でも青木さんの作品は、本当は立体なのに二次元または2.5次元に見えたり、光をものすごく感じたかと思えば、光の存在を無視した物質そのものが写っていたり。また、すごく近距離で撮影しているはずなのに、無限の奥行きを感じたり…。

対象物としての球体や円錐、時にはプロダクトさえも「次元を圧縮」したかような写真になっている。

青木さんの後書きで「バウハウスの美術教育機関にnon objectと題された1冊の本を見つけ、またインドの『0の起源』という概念に引き込まれて…」と綴られている通り、「無」という対象、概念に惹かれているとのこと。

この写真集は、写っているものを見つつ、「写っていないものを探す」きっかけを与えてくれる本だった。

序文 Dr.Sozita Goudouna(抜粋)
Art Historian https://en.wikipedia.org/wiki/Sozita_Goudouna

Aokiの作品は、カロタイプ(ギリシャ語で美しい、良いという意味のカロスに由来)と呼ばれる初期の写真プロセスの概念と定義を思い起こさせるものである。写真における美の意味について、別の感覚や層を導入することで、写真というメディアを再発明し、別のジャンルへの写真の拡張を探っているのです。このように、彼はは美的効果だけでは不十分であり、哲学的・精神的・実存的な意味やシステムを追求することで、自身の芸術や芸術全般の存在意義を見いだしているのです。芸術作品の物体性、永続性、時間性、物質的地位に挑戦する現代芸術の実践の普及を考慮すると、作家にとっての写真の決定的な側面は、静と動、止まった時間と過ぎ去る時間の接点で「時を超えた」吸収力のある瞬間を構成することである…そこではさまざまな形の美と無が永久に共存しうる…」。

  
  
写真集 後書き

私たちが住むこの地球は、私たちに無数の美しい現象をもたらしてくれます。私たちの上には星があり、地球上で自然が私たちに提示する無限の美の形態があります。
古代から、人類は宇宙の存在の問題を解決するために信念と哲学を発展させてきました。数学的および物理的な証明も私たちの理解に貢献します。これらすべてを通して、「美」の概念は、私たちの魂と祈りに「形」を与えることを可能にしました。
美術を志した学生時代、バウハウスの美術教育機関にnon objectと題された1冊の本と出会います。『無対象』という、東洋における禅のような精「神を持つ西洋の芸術に影響を受けた私は、インドの『0の起源』という概念に引き込まれていきますが、無という対象を見つけようとすればするほど、その概念から引き離されていくことを知ります。

遠いどこかに答えは無い。探してはならない。見つけるのだ。
まるで禅問答をしているかのように、私の『探している何か』は、目の前にある普段の生活から、
自らの内側に見出さねければならないことを学びます。

私の目的は、私たちが住んでいる3次元の世界の超越的な側面を捉えるために、幾何学的な観点を使って「空間の形」を探求することです。

私たちの精神は暗闇の中で未知のものを発見しますが、これは私たちがよく知っている「場所」の意味とは異なる「未知の空間」です。

その「空間」は、私が自分の作品に取り込むことを目指しているものです。

「Space」
序文:Sozita Goudouna(Art theorist &curator)
編集協力:Kathy Ryan(Director of Photography for The New York Times Magazine.)
判型:29,1x36cm 108ページ
出版社:Kehrer Verlag Germany
限定750部

註:アマゾン・ジャパンでの販売分は完売しています。
現在、追加発売できるか検討中とのことなので、また情報が入り次第「SHOOTING」でもお知らせします。
購入アマゾン販売ページ

SHOOTING編集長・フォトプロデューサー

坂田大作

Web Magazine「SHOOTING」編集長。株式会社ツナガリ代表。フォトディレクター、エディター、プロデューサー。

Webサイトを運営する傍ら、書籍「SHOOTING PHOTOGRAPHER + RETOUCHER FILE」を10年連続で発行。アマナトークラウンジや、日本最大の写真イベント「CP+」で毎年多くのステージを企画・登壇するなど、「写真」を軸に、ウェブ、出版、トークイベント等、メディアの垣根を超えて活動している。
2021年11月より、写真家らと組んで「NFT Art作品」の販売をスタート。「普遍的な作品の価値」を追求している。
https://shooting-mag.jp/
https://shooting-nftart.com/

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