3月15日からロックダウン(都市閉鎖)が始まったカナダは、容赦なく全てをシャットダウンしました。食料品と生活必需品を扱うお店しか営業出来なくなり、レストランやカフェはテイクアウトかデリバリーのみ。
ヘアサロンもジムも公共施設も全て休業。アウトドア好きなカナダ人が外に溢れないよう、国内全ての州立公園やリクリエーションエリアは5月末まで閉鎖されています。そして、1歩外に出ようならソーシャルディスタンスの徹底…。
自由を奪われ制限ばかりのロックダウン生活の中、国民の不安や不満に対してカナダ政府や州政府は細かく対応し、どんな境遇でも1人ぼっちにさせないよ、と対策を日々練っています。
毎朝8時15分から始まるカナダのトルドー首相の生会見。私は朝食を食べながら聞くのが日課です。ロックダウンが始まって以来週末も含め毎日、国民に向けてコロナウィルスの現状報告や経済支援対策を、首相自ら40−45分間話します。老若男女、会社員、フリーランス、アーティスト、社会的弱者、受刑者問わず、全ての人に寄り添う経済的支援や援助を約束し、時に想像以上の我慢を強いられているであろう子供達に向けて優しい口調で話す姿はちょっとほっこりさせられます。
午後3時になるとBC州衛生管理局長の ボニー・ヘンリー博士が同州内の詳しいコロナウィルス関連の会見を行います。BC州の厳しいロックダウン政策の詳細を決めているのはこのヘンリー博士ですが、彼女の透明性のある情報開示と感染を防ぐための適格な指示にBC州の住人は絶大な信頼を寄せています。
ソーシャルメディアでは彼女のファンクラブが出来てしまうほどで、彼女の生会見は高視聴率を叩き出す人気番組になっているとか!! 私は生では見ませんが、毎日ヘンリーさんの会見内容をニュースで必ずチェックしています。
そんな政府の姿勢に応えるように、どんな厳しい状況でもカナダ人はコミュニティーの結束を強め、思いやりと感謝の心を忘れません。その象徴となるイベントが夜の7時。最前線で戦ってくれている医療関係者のシフト交換の時間に合わせて、街中が拍手や自由気ままに奏でる音楽などでエールを送ります。
私も家のバルコニーからご近所と一緒に鈴をチリチリ鳴らすのが1日のハイライトになっています。今まで面識がなかった道を隔てたお向かいさんとも笑顔で手を振り合ったり。このエールの数分間が「みんな同じ気持ちだよね!」と確かめ合っているようで、何とも温かい気持ちで1日が終わりるのです。
前代未聞のロックダウン生活のストレスや戸惑い、見えない未来への不安はあります。けれど、心が穏やかに保てるその背景には、カナダ政府の「誰ひとり見放さない」と言う心強い支援と国民の理解を深める丁寧な情報提供があるからなのだと思います。
「命より大事なものはない」。そのハッキリとした国の価値観が、カナダのロックダウン生活をより有意義なものにしてくれています。
maku-up artist
MINA
2001年渡英。ロンドン、パリ、ミラノコレクションでアーロン・デ・ メイ,シャーロット・ティルバリーらのチームに参加。2005年帰国。広告、ファッション誌で幅広く活躍する傍ら、化粧品ブランドのアドバイザーや美とライフスタイルにまつわる執筆活動などビューティ業界の多方面において厚い信頼を得ている。近年はオーガニックコスメに関する執筆やメイクブランドのアドバイスにも携わっている。
http://sekikawa-office.com/archives/category/make-up/mina