市川信也写真展「2O14 [ni-ou-ichi-yon] II」が、ギャラリー イー・エム西麻布で開催される。
紹介文
市川信也は、村上春樹が1979年『風の歌を聴け』で群像新人賞をとり、単行本化される前に群像誌上に掲載されて以来、現在まで村上作品のほとんどを読んできている。また市川は学生時代から一貫してモノクロームの表現にこだわり、フィルムでの撮影を続けてきている。その写真表現と村上春樹への想いが交差したのが夜の公園。愛犬の散歩で訪れた人気のない公園で、市川は不思議な体験をする。水銀燈に照らされた遊具たちが闇に中から浮き上がり、何かを語りかけるかのように迫ってき、それは村上の小説『1Q84』のワンシーンを彷彿とさせたのだ。その刹那、この世界を写真で表現するのが自分の使命と感じ、以降試行錯誤が始まった。まずは夜の公園で4x5インチの大判カメラを三脚に載せ、遊具を懐中電灯でライティングし長時間露光する撮影を始めた。夜の人気のない公園で、自分の姿が映り込まないように素早く動きながら、まるで踊るように懐中電灯を持って動く姿は、村上の小説にも出てこないような不思議な姿だった。その過程で生み出された作品は、2017年12月に京都のGalleryMainで『2O14[ni-ou-ichi-yon]』として発表された。
しかしこれだけに満足する市川ではなかった。以前から赤外線フィルムでの風景写真を撮影してきた市川は、赤外線フィルムを使って公園を撮ることを思いつく。中判カメラに赤外線フィルムを入れて、露光時間をさまざまに設定しテスト撮影を繰り返した。その中に明らかに露光不足で全体がかなり暗くなってしまったイメージもあった。当初これは失敗だと思ったが、よくよくそのコンタクトプリントを観察すると、まるで夜の闇からうっすらと遊具が浮き上がってきていて、これまで見たことのないような不思議なイメージがそこにあった。この夜のような不思議なイメージで公園を撮れば、村上ワールドに近づけるのではないかと、赤外線フィルムで公園を撮り続けた。この度西麻布にあるGallery E&Mで、市川が挑んだシリーズ第2弾である、現実の中に非現実を見る村上ワールドのモノクロームによる表現を堪能して欲しい。
- ギャラリー名
ギャラリー イー・エム西麻布
- 住所
東京都港区西麻布4-17-10
- 開館時間
12:00〜18:00(月・火曜日休館)
- アクセス
西麻布交差点より徒歩5分
- URL