幸本紗奈写真展「hums behind mirror」が、金柑画廊で開催される。
開催概要
幸本は、身の回りの事物や風景を撮影し、それらを見つめ直し、捉え直しながら写真作品を制作しています。
本展『hums behind mirror』は、鏡の背後から聞こえるハミングという意味です。幸本にとって、鏡面の反射が“現れ”であるならば、そのハミングは“現れ”になる前の源泉であり、それは反射として言葉や意味に落とし込まれる前のもの、あるいは音楽のような直感的な知覚といえます。私たちが認知する世界の前または背後に潜む、言葉になる前の内面的な“何か”は、個々の目線によって形作られ、それは気配、あるいは無形のものとして知覚に呼びかけるように存在しています。
幸本は、その言葉になる前の“何か”をすくい取るように、ゆっくりとした時間の流れに身を任せながら暗室作業を続けます。「撮ったときの場所・時間などの情報や意味を排除し、改めて写っているものと向き合う感覚に近い」と彼女は語ります。
丁寧に形作られた彼女の作品は、鑑賞者に委ねられることで新たな時間が流れ、そしてその作品はまた新しい形を生み出していきます。この機会にご高覧ください。
(太田京子/金柑画廊)
ステートメント
子どものころの遊びや素朴な関心事が、
実はこれまで人間があらゆる分野から探ろうとしてきた問いと
ひと続きになっていたことに気付くことがある。
どうやら私たちは、いつか覗いた水面の反射にとらわれたきり
そのひとすくいを手鏡にして、肌身離さず持ち歩いているみたいだ。
そこに映る小さな像と、即席の言葉をたよりにしながら日々を過ごしているが、
実はきっと、それ以前、その背後に広がる未知の光景と
もう一度繋がることにあこがれ続けてきた。
誰でも、夜にはいったんその鏡を手放し枕元に置いて眠りにつくのだろうか。
きっともう、その開かれた世界を直接見ることは叶わないが、
不器用ながらも何らかの手段を使ってその気配を感じ取り
かすかな残響に触れることはできるかもしれない。
眼を瞑ること、計算をすること。
他者との手探りの対話から、
あるいは子どもや動物たちの眼差しから。
写真を使い制作することは、私なりの方法のひとつでもある。
また、それらが作者の設けたテーマを離れ、見る人個々の静かで自由な想像力に
奉仕するようなものになってほしいと思う。
幸本紗奈
1990年、広島県生まれ。2013年、武蔵野美術大学造形学部映像学科・山崎博ゼミ修了。
身の回りのささやかな事物や風景を撮影している。写真にすることで、それらを内的なできごとや見えない領域のしるしとして捉え直し、解読・展開することを通じて制作を続けている。それは、物事が像になる前の気配や、言葉に落とし込まれる前の地点にとどまろうとする試みでもある。第19回写真「1_WALL」ファイナリスト。2019年、初の写真集『other mementos』(Baci)を刊行。
https://www.sanakohmoto.com
https://www.instagram.com/sanakohmoto_othermementos/



- ギャラリー名
金柑画廊
- 住所
東京都目黒区目黒4-26-7
- 開館時間
12:00〜19:00 開廊日:木、金、土、日(祝祭日)
- アクセス
東急東横線 祐天寺駅 徒歩17分/目黒駅西口より東急バス 元競馬場前または目黒消防署 下車 徒歩3分
- URL