GRAPHGATE企画展 逸見祥希 写真展「光さす杜の声を聴く」が、キヤノンギャラリー Sで開催される。
開催概要
2023年にキヤノンMJが開催した第1回 写真・映像作家発掘オーディション GRAPHGATEにおいて、グランプリを受賞した写真家・逸見祥希氏による作品展です。
氏の地元である青森県六戸町では太陽光発電施設が設置されるようになり、氏は再生可能エネルギーの活用に対する理解と、一方でそれをきっかけに土地が失われていくことへのやるせなさの相反する感情を抱え、どう向き合っていくか考えていました。そこで氏は、太陽光発電に対する自分の気持ちを記録するため、人と太陽光パネルが共棲する風景を撮影するようになり、現在は日照時間が日本一長いとされ、発電施設も設置されている山梨県北杜市をフィールドに研究を続けています。氏の作品は、写真作品としての美しさだけでなく、その地が抱える課題や社会問題も写したという点で評価されました。
ステートメント
地球規模の気候変動により、人間の生活環境が脅かされている。原因は人間の活動にあることが明らかとなり、世界は脱炭素社会を目指し始めた。災害は激甚化し、今日も多くの命が奪われている。人間が豊かな生活を貪欲に求めてきた代償だ。私たちは化石燃料に依存しない方法で生きることを求められている。毎日地球に降り注ぐ光エネルギーを電気に変換する太陽光発電は、気候変動を止めるための一つの答えだ。しかし、新たなエネルギー開発は地球環境を救うと同時に、地域で様々なコンフリクトをもたらしている。突然始まる開発に納得できない住民は行政や発電事業者に疑義を唱えた。自分もその一人だった。
私は地元の太陽光発電開発をいまだに受け入れられないでいる。でも未来の子どもたちに豊かな地球環境を残すことができるなら、開発を受け入れる必要があると思った。だから、開発に向き合うために、自分の気持ちを記録するために、写真を撮り始めた。幸か不幸か、私の写真表現は太陽光発電の様々な表情を捉えた。しかし、アンビバレントな要素を多分に含む私の写真は、評価されることもあれば、時に強烈な人の怒りを買うこともある。社会に写真を発信する責任を感じるようになった。同時に、私の写真にしかできないことを考え始めた。
全ての人間に受け入れられるものなんてない。それは開発も写真表現も同じだ。だからといってそれが相互の理解を諦める理由にはなってはいけない。私たちは一度立ち止まって、今この地球で起こっている真実に目を向けて、同じ方向を見つめる必要がある。それを可能にすることが写真の力であり、それこそが私の写真に課せられた役割だと思う。
逸見祥希
1994年生まれ、青森県三沢市出身。早稲田大学大学院社会科学研究科地球社会論専攻修了。修士(社会科学)。専門は環境社会学、社会デザイン、芸術実践論。早稲田大学大学院社会科学研究科博士後期課程在籍中。
現在のテーマは「エネルギー開発との共生」。実家周辺の太陽光発電施設の開発をきっかけに撮影と研究活動を開始。太陽光発電開発がもたらす地域課題を把握するために、山梨県北杜市を中心に住民や行政の声を聴きながらフィールドワークを実践し、課題解決手法としての写真の可能性を追究している。
- ギャラリー名
キヤノンギャラリー S
- 住所
東京都港区港南2-16-6 キヤノン S タワー1階
- 開館時間
10:00~17:30 日・祝休
- アクセス
JR 品川駅 徒歩約8分
- URL