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#NEWS & REPORT 清水裕貴作品展「浮上」

2024年9月4日〜10月19日

2024.08.09

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清水裕貴作品展「浮上」

清水裕貴作品展「浮上」が、PGIで開催される。

開催概
写真と小説、二つのメディアを行き来する清水にとって、写真と言葉は常に共存する表現手段です。2012年のデビュー以来、「風景を撮り、作品にすること」をテーマとし、土地固有の歴史や伝承のリサーチをベースに、フィクションの構造を用いて、写真と言葉を組み合わせて表現しています。どんなに見つめても消え去り、永遠に完成しない風景に向かって、「瞬きの合間に立ち現れる幻を捕まえる」ようにシャッターを押すことで、光を写真に固着しながらも、「いつも時間に置き去りにされる」と語っています。多くの写真家が抱えるこうした過ぎ去る時間へのジレンマが、清水に白昼夢のような言葉を見つけさせているのかもしれません。そうして編まれた言葉は、清水の写真の細部を繋ぎます。

本作「浮上」は、「歴史上の出来事からifを想像し、潮に侵食させた写真を用いて偽史を語る」作品です。

被写体となったのは房総半島の南にある館山です。小説「花盛りの椅子」(2023)の取材で訪れた館山で、郷土史のリサーチを通じて、清国の漂着船や第二次世界大戦の戦跡の存在、明治時代に館山から渡米し、戦時は日系人収容所で過ごした鮑漁師の存在などにたどり着きます。海の外の世界とつながる館山の地形から、制作のテーマとしている「近代における日本の輪郭(岸辺)を考えるのに最適な場所」に魅了された清水は、「見るべき/撮るべき場所と感じた。」と語り、その後、作品を撮るために通うようになります。
地形や歴史に紐づく過去をベースに風景を切り取り、海水で劣化させた偶発的なイメージを用いて現実と抽象が混ざり合った物語を構成します。「微睡み硝子」でも用いた、海水や潮を用いてネガを劣化させるこの手法は、現実の風景を写しながら、写真の表面に結晶や傷、痕跡、異なる層を表面化させます。それは実際の歴史を紐解きながら、自身の表現で新たな物語を紡ぐ清水の作品の表現と見事にシンクロし、誰かが見ていたかもしれない新しい風景写真が生まれます。


ステートメント

境界線から時間の地層に潜る旅の一つ。
館山の歴史上の出来事からifを想像し、潮に侵食させた写真を用いて偽史を語る。
館山沖にはかつて「沖ノ島」と「高ノ島」という二つの小島が浮かんでいたが、元禄地震と関東大震災で地盤が隆起し、砂が堆積して陸と繋がった。
「高ノ島」は埋め立てられて、今は海上自衛隊館山航空基地になっている。
「沖ノ島」は国定公園に指定されており、自衛隊基地の奥から細い砂の道を渡ると辿り着ける。浮上した海底地層が豊かな潮溜りを形成し、いつも磯遊びの人たちで賑わう無人島だ。沖ノ島もかつては日本軍の防衛拠点で、岩を切り開いて作られた洞窟が存在しているが、戦跡だと示す看板はなく、きらきらした海が映える撮影スポットとして人気である。
房総半島の先端に位置する館山は、江戸時代末期から太平洋戦争にかけて本土防衛の最前線だった。その一方で、古来より黒潮と親潮が交わる豊かな漁場であり、海を渡ってきた人たちとの交流の場でもあった。
この海岸には様々な来訪者が足跡を残し、絶え間なく打ち寄せる波が洗い続けてきた。
「浮上」は、それらの過去をベースに館山の風景を撮影し、言葉を紡ぎ、フィルムを海水で劣化させたイメージを用いて物語を構成する。

清水裕貴
1984年千葉県生まれ。2007年、武蔵野美術大学映像学科卒業。2011年、第5回写真「1_WALL」グランプリ受賞。2016年、第18回三木淳賞受賞。2017年頃から小説の執筆を始め、2018年、新潮社R18文学賞大賞受賞。土地の歴史や伝承のリサーチをベースにして、写真と言葉を組み合わせて風景を表現している。
主な出版物に、小説「ここは夜の水のほとり」新潮社(2019年)、小説「花盛りの椅子」集英社(2022年)、小説「海は地下室に眠る」KADOKAWA(2023年)、写真集「岸」赤々舎(2023年)がある。
2019年、船橋に予約制ギャラリーtide/poolをオープン。

©Yuki Shimizu, Courtesy of PGI

ギャラリー名

PGI

住所

東京都港区東麻布2-3-4 TKBビル3F

開館時間

月~土 11:00~18:00 日・祝日休廊

アクセス

東京メトロ 神谷町駅 徒歩10分 都営大江戸線 赤羽橋駅 徒歩7分

URL

https://www.pgi.ac/

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