大門美奈写真展「浜のあとさき」が、Place M Yokohamaで開催される。
紹介文
2018年にキヤノンギャラリー銀座での個展を皮切りに各地で開催され好評を博した「浜」。大門にとって茅ヶ崎の浜辺を撮ることはライフテーマであり、また代表作のひとつでもあります。同名の写真集(赤々舎)は International Photography Awards 2019 写真集/ドキュメンタリー部門にて入選。今回展示されるのはその「浜」の続編となります。前回と同様にモノクロームでまとめられた作品です。
写真展「浜のあとさき」では「浜」の一部作品を取り入れながらも、浜で繰り広げられる「喜び」と「悲しみ」をテーマに、浜の人々と風景を織り交ぜながら、時間の経過とともに厚みのあるストーリーを感じさせる構成となっています。あとさきの意味するものは前回の「浜」で中心的な存在であったサミーの生前・死後のみならず、大門にとっての浜は、後にも先にも目の前の浜だけなのだ、ということかもしれません。
今回展示する作品(一部を除く)は、株式会社DNPメディア・アートがオフセット製版・印刷技術をベースに開発した、版画的手法により職人が一枚一枚プリントしたプリント技術を採用しています。
ステートメント
2018年「浜」の発表から3ヶ月後、サミーがこの世を去った。
葬儀場へ向かう途中、最後にいつもの浜に立ち寄ったサミーの頭上には、ふたつの雲が漂っていた。大漁旗が音を立ててたなびく。
いまでも浜へ行くとサミーの気配を感じることがある。骨張っている割には力強い手の感触と、ちょっと乱暴な言葉遣いを思い出しながらも、頭に浮かぶのは顔中をくしゃくしゃにした屈託のない笑顔だけだ。
あれからコロナ禍に飲み込まれ、浜へ出てもいつもの顔に会えない日が長く続いた。
顔は知っていても名前も連絡先も知らないから、浜で偶然会うしかない。
サミーがいなくなってからというもの、船も陸に上がったままだから、初夏から秋口にかけては賑わっていた浜も裏寂しく、どこか物足りないような気持ちになるものだ。
約束なんてしなくていい。会って二言三言、言葉を交わすだけでいい。
それだけで「場」は生まれ、人が集い、かけがえのない場所になってゆく。
あなたの笑顔を覚えていたい。きっと私は、このまま浜のあとさきを見続けることになるのだろう。
大門美奈
横浜出身、茅ヶ崎在住。10代の頃より美術全般を学ぶ傍ら、写真を撮り始める。造園学を学んでいた大学時代に、卒業論文制作の為に訪れたスペイン・アンダルシア地方の街グラナダに出会い、以来数年に渡り繰り返し撮影している。多くのシリーズを持つが、ポルトガルを撮影した「Portugal」で、2011年リコーフォトギャラリーRING CUBEの公募展に選出、以後写真家としての道を進む。2014年、イスラム教とキリスト教の文化が入り混じり調和する世界の風景や建物、人々を捉えた写真集「Al-Andalus」(桜花出版)として刊行。その他に無印良品とのコラボレーション企画「本日の箱庭 – The Miniature Garden」に参加、自身が作る二段の弁当箱を箱庭に見立てた作品が無印良品の店舗で展開される。また「本日の箱庭展 -the Miniature Garden-」(72 Gallery 東京京橋)を同時開催。
2018年には湘南・茅ヶ崎を舞台に「浜」に集う人々をモノクロ写真で捉えた 「浜」を赤々舎より刊行。同展は2018年から2019年にかけて、キヤノンギャラリー銀座・名古屋・大阪の他、72Gallery、茅ヶ崎市庁舎のプロムナードで個展が開催された。2022年にはライカカメラジャパンとDNPメディア・アートの協業により、ライカGINZA SIX・ライカ大丸心斎橋店の他、DNPプラザにて新橋芸者をモノクロームで撮り下ろした「新ばし」を開催。
現在は作家活動のほか、「GARDÉ COLLECTIVE ×大門美奈」としてのアパレルブランドとのコラボレーションシリーズを 展開、カメラメーカー主催の講座やイベント等の講師を務め、雑誌・WEBマガジンなどへ寄稿、コラムの連載など活動は多岐にわたる。
https://www.minadaimon.com
- ギャラリー名
Place M Yokohama
- 住所
神奈川県横浜市神奈川区上反町2-17-2
- 開館時間
12:00~19:00 入場無料(会期中無休)
- アクセス
東急東横線 反町駅 徒歩2分 各線 横浜駅から徒歩15分
- URL