2014年、PNETAX 645Dの後継機種として発売された、レンズ交換式中判デジタル一眼レフカメラ「PENTAX 645Z(以下645Z)」。
有効約5140万画素という超高精細画像を実現するとともに、プロユースにも対応する快適な操作性と高い信頼性を備えた話題の機種。

「SHOOTING」ではフォトグラファーの遠藤雅俊さんに、645ZとPCを直結して撮影できるソフト「IMAGE Transmitter2(以下IT2)」を使い、MacとWinマシンでテスト撮影を依頼。
普段、中判デジタルバックから一眼レフまで使いこなすプロが、どのような印象を持ったのか、また実際にテザー撮影で仕事に使えるのか、プロが気になる部分をレポートする。


          協力:リコーイメージング/東芝/スタジオD21

初めて645Zを使ってもらいましたが、まずハード面の印象から聞かせてください。

カメラ本体としては、最初から違和感なく使えました。メニュー画面に入っていっても、一目でわかる感じで扱いやすかったです。

ペンタックスもKシリーズのデジタル一眼レフカメラを発売していますが、645Zの操作も35ライクな感じです。

撮影時にライブビューを使えるのが良かったですね。拡大率がジョグダイヤルでクルクルッと簡単に変えられるので、小さな商品とか、ブツ撮りで厳密にピントを合わせたい時にライブビューはかなり便利です。

他のデジタルバックの場合、PCのモニタ上で100%表示をして、「ちょっと手前だね」とか「もうちょっとピンを奥に送ろう」とか、そういう作業をしているので、それがカメラの背面モニタを見ながらリアルタイムでできるのは効率的です。

PC直結のテザー撮影ができるIT2はどうでしたか。

USBの接続からカメラのマウントまでは良好です。繋がらないとか、認識しないということは一度もなかったですね。
シャッターを切って画像が転送されるまでの操作は、ソフトのインタ−フェース自体もシンプルでわかりやすいです。

単純に「転送するためだけのソフト」と考えれば全く問題ないのですが、表示される画像(画面)の大きさが固定になってしまっている部分が惜しいと言えば惜しいですね。




IT2のインターフェース(WinPC)。操作はシンプルで簡単。
カメラとの接続はUSB3.0ケーブルを推奨。

今回は、MacとWinマシンで、IT2経由での転送速度を測りました。結果は後述するとして、このカメラをスタジオでどのように使っていけばいいのでしょうか。ハード、ソフトの両面で、良い点と課題を教えてください。

画質に関しては、素晴らしいと思います。操作は35ライクですが、センサーサイズが大きいので35との画質の差は歴然です。シャドウ部分の粘りも充分感じられます。

後処理をした時に、色情報に余裕があるのでレタッチ耐性が高いですね。その分早く仕上げられます。プロにとってはフィニッシュまでのトータルスピードが短縮されるのはありがたいです。

カメラには縦位置用の三脚ネジがあるのですが、これを使用する場合、大型の雲台プレートを使用するとシンクロケーブルが付けられないので、プレートは小さいものを選ぶ必要がありますね。

また、ここでは使いませんでしたが、AFのフォーカスポイントは中央付近で細かくピントを合わせたい場合には便利ですね。周辺に合わせたい時は、マニュアルを使った方がいいかもしれません。

実際のワークフローについてですが、細かいディテールまで見ないのであれば、IT2で完結させた方が早いです。
現状のIT2の画面サイズ確認でよければ、JPEGのみを記録・転送して確認作業をしつつ、RAWデータをSDカードに記録する、という方法です。

カメラ → IT2に画像が表示されるまでの転送速度 計測データ


(単位は秒、シャッターを切ってからIT2に表示されるまでの時間を5回計測した平均値)

RAWデータの転送速度に関しては、IT2に表示されるまでにMac、Winマシンとも4〜5秒台でした(計測速度は表参照)。
JPEGに関しては約2秒で表示されます。プロはRAWデータの撮影が前提なので、RAWはSDカードに貯めていく方が便利ですね。

一方で、他アプリとの連携によるワークフローでは、LightroomとBridgeでキャプチャーしながら撮影を進めました。BridgeとLightroomとの比較では、Lightroomの方が転送されてからの表示に時間がかかってしまいます。
Lightroomは常に最新画像が自動表示されますし、トーンカーブやホワイトバランスを調整した色味が見られるのはいいのですが、時間がかかるのが惜しいですね。

Bridgeの方が表示は速いのですが、自動更新ではないため、一長一短あります。このようにスモークを焚いている間だけ、バシャバシャと連写して、後から確認するような撮影ならこれでいいのですが、ライティングを1カットずつ見ながら詰めていくには、「カーソルを動かしてカットを更新する人手」が必要です。

カメラ → IT2経由で、画像がAdobeソフトに表示されるまでの時間


Adobeソフトでの画像閲覧には時間がかかるが、JPEGデータなら、IT2には2秒弱で表示される(DNG RAWで4〜5秒)。
とにかくPC上で画像を早く見たい場合は、JPEG転送にすれば高速化できる。





煙の状態を見ながら連続撮影したカット。モニタ表示を気にしなければ、20コマ以上連続撮影できる。

では実際に、このカメラをスタジオでどのように使っていけばいいのでしょうか。

撮影の目的にもよると思いますが、1カットずつの細かいディテールを見たいのであれば、「Lightroomで100%表示」をした方がいい。
IT2の設定で、撮影モードは「RAW+JPEG」にしておいて、転送は「JPEGのみ」にしてライティングを進めていく。JPEGでも大きさ(画像サイズ)自体はRAWと変わらないため、ディテールの確認はできます。

それで進めて、ライティングが詰まってきた所でRAW転送に切り替え、じっくり細かい所まで見て行き、トーンカーブやホワイトバランスを調整して最終的に詰めて行く、というのが現実的です。

ファッションやポートレイトの撮影では、ダブルスロットの1枚にRAWデータを記録していき、もう1枚には軽めJPEGを記録。その軽めJPEG データをIT2に転送、というパターンがオススメです。

人物撮影の場合は、「次々とモニタに表示される画像を見ながらヘアメイクやポージングをチェックする」というワークフローが定着しているので、JPEGの軽データでいいので、撮った画像をIT2にサクサク表示させるのがベターです。

今回は、純正ではないEye-fiカードを使って、7インチのアンドロイド・タブレットへの転送も試みましたが、最小JPEGデータなら、最初の転送が始まれば、サクサク表示されることがわかりました。特にロケの場合には、ノートPCやタブレットにワイヤレスで画像を飛ばして、クライアントや編集者はそちらで確認、というワークフローでもいいと思います。
一番小さいXSサイズのJPEGでも、横幅が1920pixelあるので、普通のノートPCなら画面一杯に表示できます。

推奨ワークフロー


 

今後さらに進化させてほしいとしたら、何を望みますか。

何はともあれ「RAWデータの転送速度の向上」ですね。後は、もう少しIT2の機能が充実すると、このソフトだけで完結できる撮影が随分増えると思います。「色情報」「最大画面表示」「100%表示」この3つは最低限付けてほしいですね。
トーンカーブとか彩度調整は味付けの部分なので、そこは次の段階でいいので、撮影現場ではその3つがあればいいと思います。

あとは僕のような商品撮影が多いフォトグラファーで、水平・垂直を出したい人には、ファインダーに方眼メモリが表示されると嬉しいですね。水準器はあるのですが、設定でできるのかな?(註:方眼ファインダーは別売で交換可能。ライブビュー時はモニタ表示可能)

今回は55mm(smc PENTAX-D FA645 55mmF2.8 AL[IF] SDM AW)と120mmマクロ(smc PENTAX-FA645 MACRO 120mmF4)を使いましたが、中判としての解像感も申し分なかったです。 55mmではAFモードも使ってみました。レンズは35タイプよりも大きいし重たいわけですが、スースーと動いて気持ち良かったです。AFスピードも実用上問題ないと思います。レンズラインナップとしては、シフトレンズがあるとさらにいいですね。

後はシンクロソケットの蓋。ねじ込み式なので開けると取れちゃうんですね。なくしてしまいそうなので、紐をつけてボディにぶら下がるようにして欲しいかな。細かい所ですが(笑)。

カメラの画素数がアップするよりも、テザーソフトのスピードアップが最優先と考えていいですか。

できればそこに注力して頂きたいですね。
現在は645Zのボディ価格が80万円前後ですが、例えば2秒間隔でRAWデータが転送でき、もう少し画像処理の機能を付加した「IT2 Pro」があと20万円だったとしても、プロなら買うと思うんです。むしろ100万円で他社の中判と同じスピードが手に入るならお買い得です。

中判デジタルカメラは、今まで300万円以上というドーンと大きな壁があったわけですが、100万円台なら「いこうかな」という気にさせます。私が所属しているスタジオD21は、機材レンタルもしていますが、販売価格が安いとレンタル価格もその分下げられるので、意外と(レンタルでも)出るのではと思いますね。

35ミリタイプのフルサイズデジタル一眼レフを使っているプロは多いですが、そのあたりのユーザーに関してはいかがですか。

現状は35フルサイズカメラを使っている人がかなり多いと思いますが、35とミディアムフォーマットとの画質では、依然として開きがあります。レンズのボケ味も違いますし。

35ユーザーが、次のステップとしての投資を考えた場合に、クオリティと価格と扱いやすさで、このカメラシステムはちょうどいいですよね。 テザー撮影ではなくSDカード記録なら問題ないわけですから、まずはそこから始めて中判フォーマットに慣れるのもありかもしれません。

メイキング


ライティングセット全景。
カメラ側から見て左サイドから1灯グリッド付きで直射。右サイドからスリットBOX1灯。
奥側から天トレ、水平ギリギリにタングステン2灯照射。


レンズは主に120mmマクロを使用。ライブビューで画像を拡大表示させながらピントが確認できるのが便利。


Win Pcは、東芝「dynabook T95」。Macは「Mac mini Late2012」でテスト。
T95は、ノートPCだが4K対応モニタを搭載。
同じUSB3.0ケーブルを繋ぎ変えて、画像が表示されるまでの時間を複数回計測し、平均値を出した。


ライティングが出来た段階で、お湯を入れた器にドライアイスを投入。
煙の出具合、ギターを設置したアクリルキューブの高さ等をチェックする。


本番撮影。お湯にドライアイスを入れた瞬間が最も煙が出る。
モニタは見ないで、煙の形だけを直視しながら遠藤さんが秒2~3コマ間隔で連写していく。
本番では4隅に加え、上からも煙を落としている。


市販のEye-Fiカードを使って、JPEGデータをスマホやPCモニタに表示させることも可能。
JPEGの軽いデータなら、1枚目が表示された後は、サクサクと連続表示されるので、本番撮影をワイヤレスで確認することが可能。
今回はテストしていないが、645ZにはHDMI端子がついているので、HDMI対応モニタでリアルタイム表示させることもできる。

■ 東芝「dynabook T95」

64bit Windows8、Intel corei7 2.50GHz搭載。
ノートPC初の「4Kパネル(3,840×2,160ドット)」は超高精細。
Lightroomも同梱される。
製品情報
http://dynabook.com/pc/catalog/dynabook/141014t95/index_j.htm

■PENTAX 645Z

製品情報
http://shooting-mag.jp/products/camera/00715.html

■IMAGE Transmitter2

PCからのリモート操作に対応。画像をPCの任意のフォルダに転送できるほか、
ライブビュー表示を見ながら絞りやISO感度などの露出設定とレリーズが行なえる。
¥19,800 (税別)
リコーイメージング公式直販サイト
http://store.ricoh-imaging.co.jp/g/gS0038553/