写真に興味を持たれたのはいつ頃からですか。

僕が子供のころ家にはカメラがなくて、旅行に行く際には親戚からカメラを借りていました。カメラの使い方は父親から教えてもらいましたが「ここを押せば写るから」と言われた程度で、写るという意味もよくわかりませんでした。


旅行のあと何日かして仕上がってきたプリントを自宅で見て「自分が見た風景がそこにある!」と単純に感動しました(笑)。「自分の見たものが写る、残せる」という、その事実に興味を惹かれました。お小遣いを貯めてカメラを買ってからは写真にのめり込み、「職業にしたいな」と思ったのは、中学2年生の頃です。


島田敏次さん。

中学2年で職業を決めるのは随分早いですね。

確かにそうですね。当時、通っていた中学校に写真部はなかったので、部を作ろうと動きました。大学も日芸(日本大学芸術学部)しか行きたくなかったので、高校に入ってからは、日芸受験に向けての勉強しかしていませんでした。

高校には、写真部はあったのですか。

高校はありましたね。入学式翌日に写真部を訪ねました(笑)。僕の通っていたその高校の写真部には変なジンクスがあって、1年おきにしか部員が入りませんでした。


入部希望名簿に名前を書いたあと「じゃあ君は今日から部長だから」と言われ、びっくりです! 3年の先輩は「僕らは受験があるので、あとはよろしく」と...。2年生がいないから、なんですね(笑)。

当時は何を撮られていたのですか。

とにかく写っていることが楽しかったので、何でも撮っていましたね。学校の友人、風景、電車やSLを撮りに行ったこともあります。カラーはお金がかかるので、モノクロのネガで撮って自分でプリントしていました。現像液も調合して作っていましたね。


取材当日は「EXCERIA PRO」CFカード32GBを使用。
カメラはCanon EOS 5D Mark IV、レンズは85mm f/1.2L。

大学で刺激になったことは何ですか。

まず、知らないことが多かったなと思います。大学で写真を学ぼうとしている人たちの集まりですから、要はフォトグラファーの卵だらけなわけです。当たり前ですが、写真もうまい。歴史や座学から学び、写真を撮ってはいたけれど「何もわかっていない」ということがわかりましたね(笑)。それを学ぶことによって、自分の表現したいもの、写真に対する考え方なども、変わってきました。まだ学生ゆえに吸収力はあったので、頑なにならずに何でも学んでいく姿勢でした。日芸で勉強できたことは大きかったですね。


大学3年の時に、大坂寛さんの写真に出合い、衝撃を受けました。写真は表現であり「自分の中にあるものをどう見せていくのか」ということを真剣に考えるきっかけになりました。
*大坂寛(写真家) http://hiroshiosaka.wixsite.com/photo

感覚的に撮っていたものから「自分を表現する手段」に変わったのですね。

そうですね。彼の写真がグサグサ心に刺さって、ある意味ターニングポイントでした。「写す」から「撮る」に変わったんですね。


Personal Work © Toshitsugu Shimada

博報堂フォトクリエイティブ(現:博報堂プロダクツ)に入られた理由はなんですか。

もともと学生時代に、ポーラ化粧品でフォトグラファーの浅井譲さんのアシスタントとしてアルバイトをしていたこともあり、ブツ撮りや広告写真にも興味を持ちはじめていました。当時から博報堂フォトクリエイティブは、広告写真では有名な会社だったので入社を希望しました。狭き門でしたが運よく入ることができました。

博報堂プロダクツは、広告の仕事が多いと思いますが入ってからはどうでしたか。

大学の写真学科へ入学した時の何十倍も刺激を受けました。現APA会長の白鳥さんをはじめ、桜井さん、江面さん、柏木さん、狩野さんなど、現役バリバリのフォトグラファーがたくさんいましたからね。そういう方々が大勢いる中で「自分はやっていけるのか」「どうやって生き残っていくのか」等々、期待よりも不安が先行しました(笑)。


本番撮影の夕方に、先輩たちがどのようなライティングを組んでいるのかを見て、次の日の11:00にはテスト現像が上がるので、現像の上がりをみて「こうなっているのか」という勉強の繰り返しです。仕事が終わってから夜中にかけては、自分でライトを作ってテストシュートを繰り返していました。


当時は、山本瑛一さんというブツ撮りの大家がいらしたのですが、きれいな光を作る方でその人に憧れてアシスタントにつかせて頂きました。ブツ撮りのライティングは、人物を撮るにしても非常に勉強になりました。

独立をするきっかけを教えてください。

これはですね。実は入社した時から辞めようと思っていました(苦笑)。フォトグラファーという職業は、最終的には一人でやっていくものだろうと。時期はいつになるかわからないけれど、それを目標に持たないとだめだと。「社員で満足したくない」という思いを持っていました。結果的には約12年在籍して独立しました。

広告写真は、最終的にメディアに出るものしか目にすることはないわけですが、広告写真の面白さや魅力はなんでしょうか。

僕が広告写真を好きなのは、色々な人が携わっているからなんです。広告はみんなで一つのものを作り上げる楽しさがあります。野球が好きだからかもしれません。文化祭で仲間とイベントを盛り上げるとか、チームで動くのが昔から好きでした。


広告写真は、自分の感性で表現するものと、他の人のパワーが合わさることでさらによいものを作っていくという面白さがあります。最近は完成形に近いラフデザインが出来ていることも増えましたが、手書きラフの時代は色々な意見が飛びかっていましたからね。



© Wedding collection magazine

島田さんが撮影する際に気をつけているポイントはありますか。

若い頃は、無理やりにでも自分のスタイルにはめ込もうとしていました。というのも経験上の引き出しが少なかったですから。「こうやって撮りたい」と思ったら、その方向に持っていきましたね。すごく疲れますが(笑)。


最近はなるべく自然体というか、被写体の魅力を引き出したいなと思っています。例えば日程が動かせないロケで自然光が必要な場合、曇天で光がなくても大光量の照明機材を使えば作れるわけです。でも絶対それが必要なケース以外は、「こんな風に変えた方がよいかも」という提案をすることが増えました。限られた時間と状況の中で最大限いいものを作る、という考え方になってきました。

そのためには経験値が必要ですね。

そうですね。それと様々なフォトグラファーの仕事、広告や雑誌などを見て、「こういう視点での捉え方はいいなあ」とか、他の方の作品や仕事から刺激を受けることは多いですね。最近はWebサイトで撮影現場のメイキングムービーを見せている企業が増えましたよね。そういうのを見るのは好きです。

デジタルカメラを仕事で使い始めたのはいつ頃からですか。

デジタル一眼レフカメラを使い始めたのは2003年頃です。当初はフィルムカメラのサブ機的な使い方でした。本格的に使い始めたのは2009年頃。その頃週刊誌の表紙を撮っていまして、すぐに上がりを求められたので使い始めました。タレント事務所の確認やレタッチする時間など、週刊誌の仕事は時間がないので、デジタルカメラのメリットを感じました。


Personal Work © Toshitsugu Shimada

2016年からEXCERIA Ambassadorとして活動されていますが、EXCERIA PROの使用感はいかがですか。

いいですね。トラブルもない。「何かありましたか」と聞かれても、何もないんです(笑)。だからすごくいい。画素数の大きなカメラでの連写も普通に使えて安定性が抜群です。本当に重宝しています。

島田さんのワークフローを教えてください。

今日の撮影は作品撮りで流れを大切にしたかったので、カードチェンジしないで同じカードで撮りました。スタジオ撮影の場合は、PCに繋いで撮ることも多いですが、ロケではメモリカードに記録します。場所を転々とする撮影では、その度にバックアップを撮りたいタイプなので、8~16GBあたりの容量のメモリカードを使って、まめに変えていくタイプです。


例えば砂浜での撮影とか、カードスロットを開けて交換するリスクがあるところでは、大きめの容量のメモリカードを使うとか、状況によりますね。

小まめにメモリカードを入れ替えるのは、フィルムチェンジ的ですね。

アナログなタイプなので(笑)、気持ちの切り替えにもなりますよ。

今日の撮影ではFlashAirも使われていました。

そうですね。デジタルカメラの液晶モニターは小さいので、条件の合うロケなら、FlashAirを使ってiPadに画像を飛ばして見られるようにしています。


大きな画面で見ないと、カメラの背面モニターではわからない部分もあるので便利です。もちろんクライアントやスタッフにも回して、ビジュアルのイメージを共有しています。

記録方式はどうされていますか。

スタジオでテザー撮影する場合は、RAWデータしか記録しません。ロケの場合は、CFカードにRAWを記録して、FlashAirにJPEGのSサイズで記録します。

JPEGは確認用ということですね。

そうです。バックアップ用というよりも、アタリ用に画像データを飛ばして見るためです。そういう意味ではRAWデータが命なので、リスクが高まります。小さい容量でこまめにバックアップする方が時間もかかりませんしね。


撮影の現場では、書き込み速度は速いにこした事はないですが、PCヘのバックアップ(読み出し速度)がストレスなく行われることが、意外に重要なんです。

先ほどの撮影でも、現場でPCにバックアップを取られていました。

今日は、32GBのCFカードを使っていました。半日の撮影では十分ですね。このインタビューの間に、アシスタントがPCにバックアップをとっています。

デジタル一眼レフカメラで4000〜5000万画素。デジタルバックタイプでは1億画素まで製品が出ています。

人物撮影が多いですが、報道のように激しく連写するタイプではないので、どのカメラでもEXCERIA PROを使う中で記録スピードに不満を感じたことはないですね。ノーストレスです(笑)。


Personal Work © Toshitsugu Shimada

今日の作品撮りのテーマを教えてください。

これから「色」をテーマにした作品を作ろうと考えています。今日は、その作品の中の「赤」をピックアップして撮りました。「赤」にも様々なイメージがありますが、妖艶さだとか情熱だとか、エロティシズムとか、一人の女の子のペルソナの「赤」の顔を抽出して見せたいなと思いました。


その赤のイメージの中に、不思議さ、違和感、登場感も意識しつつ、なるべく情報を排除した「不思議な空間」の中に赤の存在があれば、そこに目がいきますよね。それを考えつつ、表情で色香を出したいと考えていました。

何色くらいのシリーズになりそうですか。

今のところ考えているのは、赤、白、黒の3色です。

今日撮影したモデルは、福岡発のアイドルグループ「HR」の安田玲さんでした。アイドルの女の子の写真は、笑顔で元気ハツラツなイメージがあります。

安田さんはアイドルなのですが、年齢は現在20歳で、いつもとは別の「貌」を出せるかなと思ってモデルをお願いしました。
本人も「やったことがありません」と話していましたが、いつもと違う妖艶な表情や、180度違う方向性にトライすることもよいかなと思いました。

1枚の写真の中にストーリーを感じました。

ありがとうございます。僕はそれをいつも目指しています。今までの作品でも、1枚の写真で物語れるような写真を目指しています。
ファッションやモードフォトの世界には、素晴らしいフォトグラファーもたくさんいますし、自分はそこには敵わないので、自分なりの世界観を作ってそれを提案できるフォトグラファーを目指したいです。


Personal Work © Toshitsugu Shimada

島田さんにとって「EXCERIA」を一言で表すとどんな言葉になりますか。

昨年からEXCERIA PROを使っていて、まったく違和感がないというか、馴染んでいます。何もないことが一番よいわけで、ほんとに安定しているしトラブルもゼロです。「素晴らしい」に尽きますね。


何もトラブルがないことをアピールすることが一番難しいんです(笑)。簡単に聞こえてしまうかもしれませんが、広告の仕事は、大勢のスタッフが関わるので、ちょっとしたトラブルが大事になることもあります。そのちょっとした事故や不安材料を限りなくゼロに近づけていくことが必要で、僕がEXCERIA PROを選ぶ理由の一つです。


Personal Work © Toshitsugu Shimada

メモリカードに求めることはありますか。

デジタルカメラの画素数が大きくなり続ける限り、メモリカードの読み書きの速度もリンクして速くなればありがたいです。


FlashAirも今では十分転送スピードも速くなりましたが、都心でWifiがたくさん飛んでいる場所でも電波を掴まえる力がさらに強くなるとか、FlashAirでレーティング(簡易セレクト)ができると便利だなと思いました。


FlashAirの中の画像を撮影現場で確認できる。

この表示方法だと、フィルムのコンタクトシートに似ていますね。

そう。ベタ焼きに見えるんです。この画面でちょっとレーティングできれば、外でも粗選びできるので、便利ですね。アップデートも期待しています。

撮影小道具として、LEDライトを使われていました。

天候が曇天の予想だったので「ちょっとアクセントライトに使いたいな」と思って準備しました。あれは、特に撮影用機材ではなく、ホームセンターで買ったものです。


初めて使いましたが、ちょっとヌメっとした光でよかったですね。うまくいったと思います。今日は日中のロケだったので近づけないと効果が薄かったですが、暗い部屋やスタジオなら、あれだけで撮れると思います。


肌や髪へのアクセントライトとして市販のLEDライトを使用。

外でも光を少し加えることで変えられるのですね。

そうですね。今回のテーマにはエロティシズムもあったので、それも光を加えることで表現できたかなと思います。

これからやってみたいことはありますか。

仕事だとムービーも撮っていきたいですね。自分の持っているスチルのスタイルを、映像の世界で動かしたらどうなるのか、来年トライしてみたいです。

9月に、島田敏次写真展「たんたんと、」を開催されました。

この展覧会は日常を捉えたスナップです。ともすれば誰も目に留めないようなシーンばかりを集めました。実はあるようでないシーンに不思議な感覚を覚えて、気づいたらシャッターを切っていた、というのが溜まっていて、そこから選んでいます。


たんたんと日常は流れているのだけど、確実に世界は存在していて、僕たちは確実にそれと触れ合っているんだなと。そこに焦点をあてた写真展でした。


2017年9月に開催した写真展「たんたんと、」の案内状。

「インスタ映え」するような派手でかっこいい写真を皆さんアップするじゃないですか。でも写真って、かっこいい所だけじゃないと思うんです。誰も気にかけない所に焦点あててあげる人間がいてもよいかなと思います(笑)。1枚の写真に、ストーリーや時間の流れを感じてもらえたのではないかと思います。


写真展「たんたんと、」より。
※写真展で展示された作品をまとめた写真集「たんたんと、」Kindle版が発売中。

パーソナルワークとしては、先ほど話が出た「色」をテーマに撮られていかれるのですね。

そうですね。同じ人に3色の色をあて込んだものを撮り溜めていきます。

フォトグラファーを目指す方にアドバイスがあればお願いします。

一過性で食べていくことはできると思うんです。カメラもレタッチの技術も進化していますから。でもプロフェッショナルは、長く続けられる職業として、また生活の糧にもするわけで、ずっと努力をし続けなければいけません。


逆光で彩度を上げたドラマチックな表現だとか、トレンドの表面だけをなぞるのではなく、掘り下げて考えていかないと流行りの写真だとみな同じに見えてしまいます。


例えば広告写真家を目指すなら、広告自体の仕組み、過去の広告写真の勉強も必要ですよね。ライティングの技術も学ばないと思い通りに撮れません。入口は何でもいいし、きっかけはSNSでいいのですが「あの人がやっているから自分もやってみよう」だけではなく、「あの人は何を考えてこうやったのか」という事を深く考えて動かないと、消費されていく気がします。

ストーリー性を感じる写真を撮るにはどのようにすればよいのでしょうか。

僕の場合は、まず被写体の方となるべくお話をして、自分の考えていることを理解してもらおうと思います。「できなくてもいいから」と伝えてそれほどハードルはあげません。


なるべく同じ目標をイメージしてもらうことが大事ですね。モデルもそこに向かおうとしてくれるエネルギーが出てきます。かわいい子をそのまま撮ると、かわいい写真ができるわけですが(笑)、自分の表現となると、そこに何かをプラスして感じさせるエッセンスを加える努力をしています。





東芝「EXCERIA PRO」シリーズ
高速連写・4K動画撮影対応のプロ仕様メモリカード



SDメモリカード:製品情報
http://www.toshiba-personalstorage.net/product/sd/sdxuc/index_j.htm
CompactFlash®メモリカード:製品情報
http://www.toshiba-personalstorage.net/product/cf/cfax/index_j.htm