石田東さんに師事後、NYに行かれていますが、その頃はまだフィルムですね。

100%フィルムでした。僕の知っている中では、紀里谷さんとP.M.KENさんがデジタルカメラを使われていた記憶があります。おふたりは相当早かったですね。

ニューヨークでアシスタントをしていた頃、その時付いていたフォトグラファーが、ずっとフィルムだったのですが、2008年に急にデジタル化したんです。

それで僕も、2009年に日本に帰ってきたと同時に、35のデジタルカメラを買いました。当時はまだフィルムで仕事をしていたんですけど、まあ「1台くらい持っていた方がいいかな」と思って。

デジタルカメラ使用歴は6年くらいなのですね。

そうですね。最近はだいぶ慣れましたが、当初は、アシスタントやスタジオスタッフによく質問していました。


正田真弘さん。

中判デジタルを使い始めたのはいつ頃からですか。

広告の仕事をし始めてからですね。帰国直後は何もしていなかったので、いや何もしていなかったわけではなく(笑)、森本(千絵)さんのところ、goen°によく行ってましたね。

最初は雑誌の撮影をしていました。ただ電通の正親(篤)さんと仕事をするようになって、広告の仕事が急に増えました。

もともとフィルム時代から馴染みのあるマミヤRZに、デジタルバックをつけて撮ってました。でもフォーカスが全然合わない(笑)。

デジタルバックは、何を使っていたのですか。

フェーズワンのP30+ですね。オペレーションも慣れている人を呼んで、自分は撮影に集中する感じでした。

デジタルフローに慣れたスタッフをつけることで、撮影自体は、違和感は感じないですか。

そうですね。でもここ1〜2年は、デジタル撮影のフローに本当にストレスがなくなりました。それまでは、撮影途中で止まったり、その原因がわからないとか、多少冷や汗をかくこともありましたけど、今は全然ないですね。

全然トラブルがないのと、周りがデジタルのワークフローに対して対応力が付いているから、下手したらADがCapture Oneを操作して写真セレクトするみたいな(笑)。

というのも、今は「納期が短くなってきている」ので、撮影現場でセレクトすることがかなり増えているんです。

現場セレクトの場合、僕は撮影直後に選びたくないタイプなので、ADが全体をブラウジングして、ザァーと選んじゃいますね。 僕はそれを見守るくらいで...。


大塚製薬「ポカリスエット」
企画制作=電通 EDC=古川裕也 CD=磯島拓矢 AD=正親篤・松永美春 C=磯島拓矢・筒井晴子 D=小鯛太郎・岸木麻理子 Pr=蜂谷尚由・大賀遊・澤村充章(電通クリエーティブX) 池田了・古川久美子(amana)

フィルム時代のフロー(撮影、テスト現像、ベタ焼き、セレクト、本番プリント)には、もう少し余裕がありましたね。

それだと、現実問題として納期にはまらないですね。当日セレクトの場合、「粗選びしてほしい」って言われたらやりますけど、ほとんど最後の最後で二者択一するくらい。

セレクトしない理由はなんですか。

撮影前の事前準備含めて、撮影(現場)にすごく集中するから。そこで燃え尽きてしまっているのかも。撮ったものに対して客観的に見たいので、セレクトはせめて撮ったところと違う環境で見たいです。

ADに「お任せします」って言ったら、「えっ、お任せですか?」って、驚かれることもあります(笑)。


日本スポーツ振興センター「BIG」
企画制作=電通+ワークアップたき CD=田中元 AD=関戸貴美子 D=後藤和也 CP=高木盛子 PP=山田隆子

現在のメイン機種はなんですか。

今は、フェーズワンの645DF+か、ハッセルのボディですね。それを撮影内容によって変えています。デジタルバックも、内容によってP65+か、高感度が使えるCMOSのIQ250を使うこともあります。できるだけ相性のいい組み合わせで、現場でトラブルが起こらないようには気をつけてます。

まずAFでフォーカスを合わせて、あとはファインダーを見ながら経験値で操作しています。解像度が高い分ピントがシビアなので、気をつけているんだけど、撮影中にアシスタントから「正田さん、フォーカスお願いしまっす!」って言われたら、なぜかムッとするんですよね。自分が悪いんですけど(笑)。

フェーズワン以外の中判デジタルは使われますか。

他社メーカーもロケで使っていました。ただ広告の場合は、テザー撮影でADやクライアントにモニターで見せるのが普通になっていますから、フェーズワンとCapture Oneのスピード感はいいですね。今なら速写性を求める場合は、CMOSセンサーのIQ250を使っちゃいます。

ボディの645DF+とハッセルの切り替えは、何で判断されるのですか。

堅くシャープな写真が欲しい時、レンズシャッターを使いたい時は、645DF+を使いますね。ポカリスエットの時はレンズシャッターで撮ってますね。


フェーズワン645DF+(ボディ)

広告の仕事が増えたので、35デジタルを使う機会が減りましたね。P65+だと、6000万画素あるので、画質はもちろん画素数的にも安心です。特に最近はデジタルサイネージが増えてきていますよね。僕は、できれば最終的に選んだ「良い表情の1カットで、全部統一したい派」なんですよ。

「もうちょっと、右は(背景が)ありますか?」って聞かれると、「フルフレームだとこのくらい余裕があるので、大丈夫ですよ」的な対応をしていたわけですが、それが今度、縦長のデジタルサイネージが出てきて、下に伸びてきちゃった(笑)。

風景だけだと、素材としてカメラを上下に振っておけばいいのだけど、人が入ってくると、そのバランスが崩れるので、最初の段階から距離感を(引き気味で)想定してないといけなくなる。

「被写体に寄りたいのに、引かないといけない」という矛盾があって、レンズ選択を含め、以前よりも難しくなってきていますね。

縦位置デジタルサイネージも、横を2段上下とか、広告会社の人もクライアントも、どう使っていけばいいのか、まだ試行錯誤の段階じゃないでしょうか。ただフェーズワンで撮る分には、スペック的には足りていますけど。

「縦位置デジタルサイネージ」の利用(表現)方法は、まだ固まってはいませんね。

そうなんです。ADの方も「ちゃんと考えないとね」と言われていて、まだ試行錯誤の段階かもしれません。

このためだけに縦位置で撮るのって、すごく苦手で(笑)。タレントさんたちも同じことを何度もカメラのサイズ違いだけでお願いされても嫌でしょうし...。同じ写真ではないわけで、レタッチ点数も増えてしまいます。横使い2段の場合が、商品カットと人物カットで、バランスがいいような気がしますね。


HJホールディングス「Hulu」
企画制作=博報堂+AOI Pro. AD:榎本卓朗

中判デジタルも複数のメーカーがありますが、他のカメラも使われますか。

他メーカーは使ったことがないですね。デジタルバックよりも、レンズでオールドレンズの味が欲しいなあと思って、準備していることもあります。バック自体は、必要な時にレンタルして使うので、ショップでメンテナンスが行き届いているものを、随時使う感じですね。

現行のIQ250は一回りセンサーサイズが小さいですが、このCMOSセンサーの高感度が使えるタイプで、中判フルサイズ規格が出たら、買ってもいいかな。それならロケもスタジオも両方使えますしね。

現状は仕事のパートナー機材としては、かなり安定している感じですね。

そうですね。先に話しましたが、今は撮影時間や納品時間がどんどん短くなってきているので、トラブルがないのが重要なんです。

ムービーとの連動撮影で、"グラフィックが10分"という時もありますからね。もちろんそれまでにセッティングしているわけですが、その10分をできる限り有効に使いたい。もし1分間機材が止まると、ものすごく辛いことになります(笑)。

昔は、途中でボディがトラブって、バイク便でカメラを持ってきてもらうこともありましたけど。2回くらい(笑)。

今後、中判のシステムとしてどういう機能を望みますか。

フェーズワンの場合は、転送速度も十分速いので、ストレスはないですね。むしろストロボのチャージが追いつかないです。

僕個人の要望は、高感度がISO800まで常用(仕事)で使えて、フルサイズセンサーであれば、レンズもそのままの感覚で使えるのでベストですね。

Capture Oneも、だいぶ痒いところに手が届いている気がします。トーンカーブのハイとローのポイントが動かせるのが、僕にとっては最高に嬉しいというか。これで劇的に使いやすくなりました。

Capture Oneで絵を作りこまれますか。

まず撮影現場はCapture Oneで、Photoshopはそんなに使わないですね。Capture Oneで調整して、ほぼほぼの仕上がりイメージを見せるまで、このソフトでこなします。
もう制作スタッフ、クライアント含め、関係者全員がモニターを凝視してますから(笑)。

クライアントに見せるためのモニターを用意するのは、グラフィックでもここ3年くらい常識になっていて、最近は「タレント事務所用にもう1台出せないのか」的な話になってきていて...。グラフィック撮影もほぼCMと同じようなセッティングを求められるようになってきていますね。


ソニー生命保険
企画制作=POPS+ADK+原宿サン・アド CD=田中淳一 AD=山本拓生・大橋謙譲 D=小林圭・小磯克仁・菊池佳奈 Pr=湛野麻衣子・上田将之

俳優からタレント、音楽系アーティスト、モデルまで被写体は多岐に渡りますが、撮影時に気をつけていることはありますか。

ライティング的には、スタンドインと本人は違うので、スタンドインで決めつつも、すぐに本人で最終調整できるようなライトのシステムにしています。

ベースを作っておいて、キーライトはより緻密に作るわけですが、例えば堀の深い俳優さんでシャドウがきつい場合は、キーとベースのバランスを変えて微調整できるような作りにしています。

例えばロケでも、薄曇りの場合はキーライトを足して作ることもあります。この時は、645DF+とIQ260ですね。感度はISO400で設定しています。

肌のレタッチは、どうされているのですか。

僕の場合は、フォートンの村山(輝代)さんにお願いすることが多いですね。合成は、福井(修)さんにお願いしています。広告の場合、レタッチは自分ではしないで、100%外部に振ってます。トーン見本や指示書は自分で作成しています。


大塚製薬「ポカリスエット」(スタッフは同上)

IQ250も使われていますが、仕事で使用した印象はどうですか。

ポカリスエットの仕事で使いました。撮影ではジャンプしてもらっているので、シャッタースピードをあげたくて、感度もあげて1/2000秒で切っています。

この時はカメラを2台使っています。1回の飛びで、少しでもカット数が欲しくて。
でも最初はどうしても、2台同時にシャッターを押しちゃうんですよ(笑)。そのうち慣れてきて、ずらせましたけど。


ポカリスエットの撮影でIQ250を使用。高速シャッターで被写体の動きを止めている。

外ロケでもテザー撮影が多いですか

そうですね。テザーのダブルモニターですね。ロケでも大きなモニターを囲って、見えるような状態にしています。

もう今はね、リアルタイムでみんなが見ているので、表情を引き出せていない時は、焦りますよ(笑)。


リクルート「タウンワーク」
企画制作=電通+横浜スーパーファクトリー+アドブレーン+日庄 CD=濱島達也 CD+CMプランナー=荒木伸二 CMプランナー=森本泰平 C=梅田悟司 AD=土屋貴弘 PP=高橋知子

松本さんも最初は表情を引きだしきれなかったのですが、撮りたい表情をしっかり伝えたら、色々やって頂いて良いものが撮れました。

今は35デジタルも中判も機材がある程度決まってきているので、機材面で差別化するのは難しいですね。

そこがポスプロのフローに移ってきている気がします。昔はポジやネガのプリント、フィルム、フォーマット等、選択肢が広かったですが、最近はそこが似ているんで、撮影での表現も似てきてしまうのかもしれない。

そういう意味では、広告フォトグラファーに求められているものは、クオリティと技量というのはベースにあるとしても、経験値からくる現場対応力や発想力だったり、被写体やスタッフとのコミュニケーション能力だったり、より総合的な能力が求められている気がします。

ムービーの撮影が増えているとか。

そうですね。普通にスケジュールを入れていけば、ムービーの方が先におさえられちゃうので、ほっとくとほとんどムービーの仕事になっちゃいます。
その分、グラフィックの仕事が来ると嬉しいので、スチルの仕事をお待ちしています(笑)。


サントリー「TORYS CLASSIC」
企画制作=電通+dof+サン・アド ECD=大島征夫 CD=高上晋・窪本心介 C=岩田純平・有元沙矢香 AD=田中UFO・中尾祐輝 D=三上智広

「ムービーとグラフィックの両方を撮ってほしい」、と言われるとちょっと厳しいので、どちらかに集中したいんですね。
このトリスの時は、両方僕が撮っているんですが、それぞれの撮影日がわけてあったので、受けられました。


キリンビール「淡麗グリーンラベル」
企画制作=電通+GAN MATSUMOTO+コモンデザイン室 CD=松本嶽 AD=窪田新 C=蛭田瑞穂・山本友和 D=浦中宏樹・小山雪 A=SUI Pr=高木盛子・山田隆子

スタジオで撮影する時に、自分は定常光とストロボを混ぜて使うのが好きなんです。だからシャッタースピードを落としちゃうんですね。そうすると、スタジオでも少し感度をあげて撮影したくなります。

スタジオで建て込みセットの場合、瞬間光(ストロボ)だけだと、嘘っぽく見えてしまうことがあるので、ベースを定常光で作ってキーをストロボ、またその逆というパターンは多いですね。

「Capture One」に望むことは「ありますか。

撮影現場では複数の人がセレクトすることがよくあります。その場合、Aさんのセレクトと、BさんCさんのセレクトが、それぞれ星の色分けできて、その交わった部分だけが、最終セレクトとして抽出されると、僕ら的にはすごくありがたいですね。

先日も、撮影後のセレクトだけで2~3時間かかったんです。それをそのままスタジオでやるのも非効率ですよね。そういった機能を盛り込んだ「Capture One Pro」ができると、少し値段が高くてもプロは買うんじゃないかな。

究極は、それがタブレットみたいな各端末で分けて、セレクトする各自が同時進行で選んで集計できれば、ものすごくセレクト時間が短縮されます。
ごく少数の意見かもしれませんが、期待してます!

広告の仕事を拝見している中で、表現の幅が広いと感じました。

どうなんでしょうね。仕事を振り返ってみて、色々な作風があるのも良いと思っています。

僕に求められているものが、ADによってそれぞれな気がします。専門店ほど特化していないけど、店構えとしてはわりと自分基準の自由な品揃えになっていますね。

でもそれが正田さんのカラーでもありますね。

ありがとうございます。基本的に自分は「ポートレートフォトグラファー」だと思っています。ポートレートで、NYで撮っていたランドスケープ的な写真。こういうエンバイルメンタルポートレイトを撮る人は日本には少なかった気がします。

振り返れば、NYで撮ってきていたものがベース、というものが自分の中にはあります。そこに関しては、今も何一つ変わっていないというか...。何をやっても、僕の中ではそこが根幹ですね。初心を忘れず、発展させていければと思っています。



正田さんがNY時代に撮影したポートレート(日中シンクロ)。




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